第223回 平成27年8月23日
兼題 夜長 生御霊

    利孟
 翡翠の魚打つ羽を逆立てて
 遠花火消えた花火の音に咲く
 二重三重回れば膨れ踊りの輪
 夜長かなグラスの氷角失せて
 酸素バッグ引いてゆるゆる生御魂

    ミヨ
☆摺り癖に傾く古墨夜長かな
△古傷を撫でて語らず生身霊
・汚れたるケトルを磨き涼新た
・語部の語れぬ戦禍つくつくし
 水鶏笛低く切れ飛ぶ沼の暮

    比呂
△名を知らぬ玄孫を抱いて生御魂
・田の端の一族の墓月見草
・知恵の輪の不意に解ける夜長かな
・日本国憲法全条蝉時雨
・一刻は魚になりたき極暑かな

    敬子
△黄ばみたる歌の栞や秋桜
・薩摩芋元気ですかと畑の友
・語り部の皺のかんばせ夜長かな
 生身霊手擦れ家伝の頁繰る
 朝顔や平成の庭ときめかす

    良人
△川風に街の灯光る夜長かな
・絶え間なく灯ゆらぐ夜長かな
 人絶えて夜長のはじめ子の広場
 長き夜の灯明ゆれる辻の寺
 公園の無人の椅子に夜長かな

    木瓜
△向日葵や特攻兵の終ひの笑み
 長き夜還暦越えて道半ば
 夜長かな富ほどほどに安んじて
 生身霊古稀軽く越え満ち溢る
 生身霊孫曾孫等と空気吸ひ

    昭夫
・夜長の灯花屋二階の英語塾
・夜長かな一人娘といふ地酒
・シャガールの空を夜長の炎が焦がす
 生身霊暦に記す二重丸
 生御魂虚子恋ひて酌む地酒かな

    巴人
・へしこ焼き交はす盃生御魂
・夕星やすずろに消ゆる苧殼の火
 大垣や長夜の明ける旅の空
 雪洞や三人娘集ふ生御魂
 渚の湯小舟行き交ふ長夜かな

    信子
・パン焼ける香や郭公の声の中
・長老に就きし住職生御魂
 老いたるに若きに八月十五日
 左手に右手に夜長の生命線
 網戸うちそとに暮らしの夕灯

    健
・灯籠に法の灯生御霊
・本棚や灯火親しむ候となり
 川面の灯流れ流れて生御霊
 床の声転寝さますよながかな
 静かなる祭壇の灯や生御魂

    鴻
 秋澄めり広場に天体望遠鏡
 渋柿や皮を剥かれて吊るされて
 登山道我を迎へし花りんだう
 我家を取り巻く草木夜長かな
 ねだられて孫の宿題夜長妻

    輝子
 訪ね来し友もあらばや長き夜
 手を合はせ先祖を語る生御霊
 綴れなる遠き記憶の夜長かな
 しみじみと懐かし曲の夜長かな
 長き夜は小窓の風も愁ひかな