第225回 平成27年10月18日
兼題: 鹿 野分
酔ひ兆す額に鱗の鮭漁師
鹿鳴くや一夜一山行き来して
大野分古城天守の震へゐて
不知火や浜に舟上げ默の漁夫
製粉の日付手書きに新蕎麦粉
昭夫
☆野分晴切手の子規の野球帽
△又三郎追ひかけてゐる野分かな
・暁に鹿の啼く声億白根
・鹿の声木地師の村の眠りゐて
朝霧の統べゐる祖父の遺愛の田
比呂
△鍵型の肝煎屋敷秋桜
△角切られ雄鹿妻呼ぶ声もなし
・雨情旧居の小さき筆塚野紺菊
城への道訊いてくなん処初紅葉
初野分英世に灯す絵蝋燭
△鹿鳴くや鉄塔つなぐ作業道
△天狗面奉るお社菊の酒
小鳥来てあくまで遊べ慈母観音
秋日和地べたに描くピカソぶり
野分後とみに奏づる大谷川
木瓜
△落陽に包まれ熟す木守柿
・色変へぬ松前だけを見て育つ
若き鹿人間社会にジャンプする
乱るるに清かなるらん野分後
木瓜咲くや一日一句を記すべく
信子
△古都巡る旅路や真夜の鹿の声
野分晴れバスの列なすターミナル
小走りの背ナはすかひに夕野分
火酒傾ぐ秋夜一人のカウンター
中継のマイクが拾ふ野分音
・押し入れに用無き玩具十三夜
・野分雲カメラに納め切らぬかな
・野分晴遠田の煙棚引いて
・色づいた山に牡鹿の声微か
風音をじつと聞き入る夫婦鹿
良人
・猶ほ残る山の装ひ野分あと
・古峰山や野分遮る大鳥居
・バスを待つ列を横切り尾瀬の鹿
葦原に長蛇の一線野分かな
木霊する鹿の声聞く湯治宿
敬子
・野分来る五体揺すぶる坂の上
・鹿追へば山路を迷ふ日暮どき
同窓の若きアルバム十三夜
秋深し移り行く世の趣味の会
紅葉時カメラ犇めく竜頭滝
・野分かな蝋燭ともす家の窓
・鹿刺しの夕餉の膳に山の宿
過ぎ去りし晴れ間ののぞく野分かな
災害や住めば都の野分かな
鹿を追ひ山を見忘れ悔やむなり
輝子
・厳島人より偉そな鹿ばかり
・休田の畦に光りの尾花かな
湖に我が身を写し恋の鹿
風荒び月の光を研ぎ澄ます
雲走る野面の息吹野分後
巴人
・庭霽れて下駄の重さや鹿鳴花
をちこちに投ぐる瀑弾野分かな
大祭や拝殿に聞く鹿の歌
老い鹿の声曳く夜半の裏通り
ギャーと鳴くおどろおどろし渡来鹿