第233回 平成28年6月5日
兼題 夏至 萍
満水の天水桶や梅雨近し
夏至の夜も明けぬに新聞配達夫
やうやくの片手掴みに飲むラムネ
取調室の呟き水羊羹
萍を逃れて浮子の立ち上がる
輝子
★水瓶の浮き草囲み空と雲
夏至の夜の時を忘れてはしご酒
新緑の重なりし間の陽を受けて
日を避けて列車でうたた寝夏至の頃
比呂
△音立てる矢の正鵠に新樹光
△手探りに僧の剃髪根無草
・入梅や湖尻にオール無きボート
豆腐屋の水は休まず街薄暑
音楽隊の驢走り出す夏至の夜
別れけり紙魚に愛の字齧られて
・犬連れた歩行訓練半ズボン
・咲き初めるあじさゐ坂に僧の誦す
・二階まで伸びて花つけ夏椿
どくだみの花に触れ行く下校の子
若葉風達者で白寿迎へたし
良人
・黄菖蒲の根張り狭めて用水路
・北の駅の夏至の夜に樅そそり立つ
・夏至の陽の漏るること無き杉並木
雲合いの兆明るき夏至の雨
薄雲を射貫き陽の来る夏至の朝
昭雄
・ふくろふの眸のまばたきや夏至の闇
・絵馬渡す巫女の白き手夏至の宮
ここここと矮鶏の声湧く夏至の村
萍の埋めて土呂部の湖沼群
昼も夜も萍流す池塘かな
・夏至の空行く太陽のゆるゆると
・玄関の戸の軽やかに朝曇
炎天のホームラン打者バット立て
浮草や地を放たれて空仰ぐ
西日射す雑念揺らぐ散歩道
一構
・山小屋に積まれた薪夏至の夜
夏至の雨水に暗さの中禅寺湖
入梅や母に献じし古酒を酌む
萍や朝の池塘の波立てる
夏至の雨葉音さやかに更けにけり
健
浮き草や流れにまかせ世を渡る
短夜の眠りは浅くなりにけり
葉一枚揺れる浮草人となり
集ふ子の声弾みたる水遊び
たつぷりと活動できる夏至の昼