第236回 平成28年9月3日
兼題:柿 秋の夜
腹見せてブリキ金魚の浮いて来い
秋暑し店に煙の焼鳥屋
台風過スカイツリーに並び富士
夜半の秋切子グラスの硬き角
酒をやり湯に入れ柿の渋を抜く
比呂
★豆腐屋のふやけし指や秋澄めり
▲朝地震は地のため息秋の風
▲磨かれて次郎柿富有柿の尻たひら
・秋雨や笑ひ閻魔の目の光る
濡れ縁の端に焦げ鍋晩夏光
信子
▲寺巡りして探す句碑柿日和
・蚊に好かるなんのと母娘談義かな
・父逝きて父の育てし富有柿
後出しのじやん拳ごつこ法師蝉
秋の夜や一〇〇Kマラソン待つゴール
▲夕映えの空に照り浮く木守柿
・闇の奥よりの雨音夜の秋
夕暮れの街に風来る夜の秋
鈴生りの柿の中ゆく村の道
里中のそちこちに見る木守柿
昭雄
▲若き母の土間に藁打つ夜半の秋
・夜の秋孤独を刻む古時計
筑波山より男体山親し柿簾
柿簾裾に小さな旅鞄
柿の実を灯のごとく供へけり
ミヨ
・秋の夜やしばしめくりて旅雑誌
・樽柿の食べ頃談義の会津弁
・涼あらた天狗の朱印賜はりて
・藁葺きの煤けし駅舎柿熟るる
皓皓と銀漢渡るカルデラ湖
・絵手紙に大き目玉の赤とんぼ
リハビリの小径の野辺に月見草
気力こそ故老の命秋の夜
次郎柿授かり幼な微笑めり
尺八の流る窓辺に蝉が鳴く
一構
・一人寝の蕎麦殻枕秋の旅
柿簾老婆は柿を剥き続け
座布団を並べた客間秋の宵
秋の夜机に置きしエンジンキー
秋の夜や眼鏡落として土間暗し
聖子
・柿熟るや作新学院全国制覇して
糠小屋の木箱に入れて熟し柿
夜の秋勝手にうなる冷蔵庫
夜の秋正庁の間のシャンデリア
帰郷して静かな川の流れかな
・風の音目には見えねど秋漂ふ
山あひの家の軒下吊し柿
秋の夜の時を忘れる読書かな
天高く食欲のわく夕餉かな
熟柿たる人も同じや円熟味
木瓜
・白桃の吾子の産毛の肌ざはり
柿食ひぬ幼き頃のままの味
秋の夜のセレナーデ発つ庭の闇
豊かさや昼夜にわたる虫の声
切々と声刻み込む秋の蝉