第237回 平成28年10月16日
兼題: 星月夜 今年米


  利孟
 鉾杉の明るむ穂先稲光
 搗き終へて湿り仄かに今年米
 縫ひ止しの針を残して星月夜
 吹けば飛ぶほどの樽の香温め酒
 富士新雪野鳥の漁る大干潟

  昭雄
☆星月夜日毎夜干しの練習着
・奥白根山触れんばかりの星月夜
・新米を軒まで積んで眠る村
・今年米二合を母の音で研ぐ
・星月夜映して揺れる潦

  ミヨ
☆大寺の袖の荒壁すがれ虫
・一握り土鍋で炊いて今年米
・星月夜段々畑の裾の村
 竹林や顔冷ゆるまで立ち尽くす
 古筆の癖を癖とし返り花

  比呂
・星月夜船の名を持つ海の宿
・鳥帰る机に錆びた肥後守
・美し国の産土神に今年米
 腰叩く棚田刈る人皆叩く
 目瞑りて聞く香の声秋海棠

  良人
・新米の袋積み上げ道の駅
・田の神に上げ新米のにぎり飯
・新米や越後の宿の朝の膳
 星月夜男体山覆ふ闇を消す
 越後より歳々届く今年米

  輝子
・ままごとの跡に橡の実夕昏れる
・今年米一升背負ひ踏ん張る児
・手術後の眠れぬ吐息星月夜
 新米の焦げを掬ひて注す醤油
 今年米病身なれど粥にせず

  信子
・後の月あしたへ続く畑仕事
・折鶴の千の嘴初しぐれ
 「ケータイ」の絵文字の笑顔十三夜
 志貴島の大島小島星月夜
 新米も玉子も地産朝ごはん

  聖子
・新米を積むトラックの坂越えて
・猫が番して新米の積み上がる
 スーパーの試食新米の塩むすび
 新米の精米の度の香り立つ
 新米や母の手縫ひの布袋

  青樹
・星月夜漁船出を待つ船泊まり
 新米の粥に梅干し腹休め
 織姫の下りて来さうな星月夜
 新米を炊く香流れる厨かな
 パパ帰る足音を待つ星月夜

  木瓜
・三代が伝へし釜や今年米
 人生は今がはじまり青蜜柑
 梨かじる透明の感突き抜けり
 なんとなく敬礼したき秋の空
 星月夜無限に命脈動す

  一構
 星月夜太鼓響きて稽古果つ
 写真機をうしろに置きて温め酒
 病む妻に土鍋で炊きし今年米
 ぼんやりとショパンを聞きし星月夜
 秋の朝紙に包んだ足の爪

  敬子
 オカリナの音流れくる紅葉忌
 敬老日白寿のペアーの舞ふワルツ
 新米や山坂多き旅の宿
 宣誓の声よく響き運動会
 すつきりと細きジーパン秋始め

  健
 新米のしゃりで握りて黒鮪
 新米や瑞穂の国の漢なり
 星月夜宇宙の旅に誘ひけり
 新米が故郷から届き絆かな
 星月夜震災の街包みけり