第254回 平成30年3月25日
兼題 冴え返る 木の芽
香を散らす仏師の鑿や冴え返る
木の芽山高菜でくるむ握り飯
春隣り鍋を揺らして自在鉤
駐在所裏に干し物麦青む
襲ね着て裾乱れ無き女雛かな
青樹
☆芽柳や少女のお下げ髪揺れて
・ 闇の夜の犬の遠吠え冴え返る
冴返る今朝は小耳が痛いほど
タラの芽を摘むに思案の昨日今日
春の雪話題の多い五輪祭
昭雄
☆杉山に斧の木霊や冴返る
木の芽和え祖母の口伝の味噌の味
山椒の芽パンと一打母卆寿
露天湯にほのかな硫気木々芽吹く
冴返る正論吐きし漢の背
☆灯の入らぬ仮設住宅冴え返へる
木の芽吹く面立ち似たる六地蔵
三日月は刀身のごと冴え返へる
瓦礫紗利祈の丘に木の芽ふく
ママ友と子らを見つめる木の芽かな
巴人
・ 冴え返る野辺の送りの白袴
・ あたり鉢孫の押さへて木の芽味噌
・ 冴返る喪服の背なのたたみ皺
・ 菩提寺の朱き山門木の芽張る
なき笑ふ御社つつむ名の木の芽
比呂
・ 冴え返る警邏の腰の鍵鳴らし
・ 一切経納めし蔵や春の闇
厄介な話は反らし木の芽和へ
手つかずの積ん読古ぶ春の蠅
うかうかと水際選び野焼きの火
・ 木の芽風浴びて歩める牧の牛
・ 防風林の芽吹きの中の生家かな
裏山の芽木の総立ちにほひ立つ
大吉のみくじ引き当つ木の芽風
冴え返るヒートテックを手放せず
敬子
・ 旧姓で互ひを呼んで鮟鱇鍋
・ 校庭の大きな時計木の芽立つ
連翹や祖父の詩吟の懐かしく
冴え返る青々染まる遠き嶺
コンサート出でて黄梅の花影に
ミヨ
・ 木造船捨て置きの浜冴返る
・ 薬膳の小鉢に盛られ木の芽和
闇深く蛙合戦続く淵
鶴嘴や大谷石窟冴返る
御殿平茫々たりや鐘おぼろ
・ 膝並べ点前習ふ子桃の花
本閉ぢて見遣る窓辺や木の芽雨
寒戻る向ひ家に点く一人の灯
道普請ホワイトデーの街明り
冴返る額になんど思案の掌
美恵子
・ 冴返へる三和土掃かるる長屋門
風溜まる一高の門冴返へる
木の芽晴朝も早よから畦通ひ
子の歌を練り込み作る蕨餅
卒業や袴の裾の軽やかに
良人
梅咲くや近く遠くに鳥の声
山の端のひかり輝き冴返る
山寺の陰る石段冴返る
人目引く宵の明星冴返る
堤吹く颪の行方冴返る
欠伸して影流す猫遅日かな
冴え返る日光街道杉並木
雑木の芽皆一斉にさやぐ時
花冷えや友の入院長廊下
獏なりや少年の夢春の雲