第263回 平成30年12月23日
兼題: 山眠る おでん



  利孟  
 落書きの金のスプレークリスマス  
 蝋梅の一輪一樹を薫らせて  
 初霜や軍鶏は脚上げ身じろがず  
 山眠る湯釜の蒼を抱き残し  
 おつもりとおでんの汁をひと啜り  

  ミヨ  
○観音堂消さでをかれし寒灯し  
○登り口鎖で閉ざし山眠る  
・すがれ虫志功描きし板戸の絵  
・二次会や路地の奥なるおでんの灯  
 大津絵や木彫の鬼の冬ざるる  

  聖子  
○牛小屋の牛のあくびや山眠る  
○雨風に崩れし岩場山眠る  
・夕飯は昨夜のおでんと決めて帰路  
・おでん屋に入るや眼鏡のすぐくもる  
 山裾の落ち葉褥のごと積もる  

  信子  
○山眠る風の行く手のけもの道  
・おでん屋に隣り合はせの意気合うて  
・踏み台の高さ程良く十二月  
・柿日和長寿地蔵のおちよぼ口  
・神の鈴鳴らす太縄今朝の冬  

  美恵子  
○葉と塩で封じし樽や山眠る  
・おでん種掬う店主のえびす顔  
・隙も無く収まる農具山眠る  
・山眠る喪服の我に星の降る  
・お待たせと温き土産のおでんかな  

  木瓜  
○山眠るケルトの民の子守歌  
・おでん食ふ大根三番目と決めて  
・なにはともあれ句を詠みて年暮るる  
・おでん鍋大女将の割烹着  
 涸滝のゼロか無限か裏表  

  比呂  
○寒雷や砂洲に俯せ捨て小舟  
・鉄の環を打つ白装束鍛治祭  
・おでん鍋波戸に重なる波ごろし  
 この星の我も生物雪女  
 牛生る湯気の敷藁霜の声  

  巴塵  
・煮こんにやく皿におかれて山眠る  
・おたりやのおでん分け合ふ爺と婆々  
・のれん揺れおでんの湯気のあふれくる  
・行者場の墨絵ぼかしに山眠る  
 提灯におでんの三つ字一字づつ  

  良人  
・蒼天や前日光の山眠る  
・奥会津只見川を挟み山眠る  
・懐に名刹を抱き山眠る  
 駆け込んだコンビニにおでんの湯気籠もる  
 大根の入れ歯に優しおでんかな  

  昭雄
・懐に祀らる神や山眠る
・男等に旧き縁やおでん鍋
・山眠る文字消えかかる軍馬の碑
 目礼に返す一礼落ち葉焚き
 放牛の四角に伏して山眠る

  雅枝
・スタッドレスタイヤ駆け抜け眠る山
・去年君と登りし山の眠りをり
・煮るほどに味深みゆくおでんかな
 父偲び味噌田楽に灘の酒
 常盤木の裾模様渋く山眠る

  青樹
・屋台引く昭和の声やおでん売る
・爆弾も加薬も出してのおでん売り
 富士山も眠りにつくや薄化粧
 山眠る雪崩惨事の那須の山
 

  英郷
・山眠る一人峠を越えゆけば
・山眠るシリウス低く耀きて
 階下から香るは煮込むおでんかな
 木枯らしの麓でそよぐ竹林
 清々し御田で温もる友受賞

  泉
・足腰を鍛へて卆寿冬薔薇
・ゆるやかな雲の寝姿冬の空
 山眠る里の地蔵は胸抱いて
 三軒の藁屋根造りおでん鍋
 銀杏の梢に沈む蔵の街