第264回 平成31年1月27日
兼題: 淑気 着膨れ

   利孟
 風を呼び風に戯れ雪女郎
 着膨るや七つ入れ子のマトリョーシカ
 盛り塩のいささか崩る淑気かな
 龍底に潜む伝へや冬の水
 小半の残る酒瓶春近し

   雅枝
☆ひとつずつ町の灯の消え除夜の鐘
☆ねんねこや赤子負ふ背に乳匂ふ
・朱を放ち昇る日輪淑気満つ
・勤行の声朗々と淑気かな
・着膨れやヒートテックといひながら

   ミヨ
☆着ぶくれて使ふ孫の手軒日和
☆渓の戸や夜ごとに育ち大柱林
・味噌仕込み桶にゆだねて寒の入
・正月や磨きあげたる太柱
 朝な日に吊られ鬼面の淑気かな

   木瓜
☆云ひたきを云へず煮詰まる牡丹鍋
☆戦から逃げて隠れて着ぶくれて
 湯たんぽの布の切れ目の逆鱗に
 日向ぼこ生死の狭間縹渺と
 淑気満つ平成を発つ富士の山

   昭雄
☆振つて買ふ夢の軽さや種袋
・着膨るやなにやら眉に白いもの
・長寿番付十両となり着膨るる
・四百年の杉の並木や淑気満つ
 梁に釘隠しある淑気かな

   巴塵
☆玉砂利に少し風ある淑気かな
・繭ごもる森の館の淑気かな
・着ぶくれてゐてもおすまし通学路
 淑気満つ浦安といふ巫女の舞
 着ぶくれて雌鶏になる庭掃除

   比呂
・金星の恋ふごと月に寄り寒し
・泊船の長き汽笛や去年今年
・山鳴りや瓢瓢踉踉雪をんな
・賑やかに着ぶくれ集ひ女人講
 淑気満つ母の背流す朝の風呂

   良人
・着ぶくれてバイクにまたがる老宮司
・着ぶくれて立ち番続けガードマン
・二の鳥居までの参道淑気満つ
・参道の石の階淑気満つ
 神官の笛の音流る淑気かな

   美恵子
・灰をとり幣置く竃淑気満つ
・芝犬におかめのお面淑気かな
・売れるたび打たる拍子木だるま市
・摺り足に来る白足袋の淑気かな
 陽昇りて松の葉凛と淑気満つ

   英郷
・着ぶくれの人波磴を揺れ上ぼる
・蒼空の神橋に満つ淑気かな
・雪まろげ転がるほどに着ぶくれて
・気がついてみれば重ねて着ぶくれぬ
 しんしんと漂ふ淑気晴れ姿

   敬子
・着ぶくれて母の笑顔の児に戻る
・石仏に陽の温もりの小春かな
・百年の石の教会淑気かな
 花八ツ手垣根に親し里の歌
 二十人輪となり坐して茸鍋

   信子
・冬鴉一声黒に徹しけり
・着ぶくれていざ近間へと買ひ出しに
・着ぶくれて気負ひもなくて日の暮れり
 青空を背ナに本殿淑気かな
 天心に白い仏塔淑気かな