第266回 平成31年3月24日
花筵底の汚れて新の足袋
春の泥祖父の編みたる藁草履
萱屋根の棟の高さに花辛夷
畦道を行きその奥の老桜
苗札の失せものの芽に戸惑へり
ミヨ
☆開拓の痩せた赤土茎立菜
△読み書きに縁無き日々や孔子祭
△老桜の根のがらんだどうの刻む時
△測量の伸べる巻尺春の泥
△雑貨屋も並んだ木桶燕来る
信子
☆春の泥つけ腕白の一張羅
・賽銭の転げ落つ音百千鳥
・春の宵ドッグフードを一握り
・胸に抱く犬の甘噛み夕桜
・海光を散らす岩波木の芽晴
△新堤防に花を咲かせて若桜
・咲き満ちて丘埋め尽くす瀧桜
・三椏の花谷あい染めあげて
・春泥を踏みたる先の無人駅
・やうやくに散歩ができて初桜
昭雄
△春泥を来て下野に戊辰の碑
・滝桜大河流るる音あらば
・金次郎像の薪に桜蘂
・立句かくあれと見上ぐる桜守
夕闇の畦塗り叩く春の泥
雅枝
△淡き恋桜の土手のかくれんぼ
・デコポンを乗せトラックの春の泥
・満開の桜を照らし空の青
・春泥に吾が来し方の靴の跡
大学の門に人寄り桜かな
△遠足の子の背にはねて春の泥
・おのろけの弁当自慢花見茣蓙
・歯科院の窓辺の桜散りそめて
朝まだき小暗き土間や春の泥
県庁の社会見学つくしんぼ
巴塵
△お帰りの園児の尻の春の泥
・春泥の汚す白足袋暮参かな
・あらたふと水照りまとふ山桜
犬あそぶ桜下釣人波しずか
枯百合の匂ひかすかに春の泥
英郷
△春浅く背まるめ聴く夜半の雨
・小夜嵐孝子桜の散りぬるか
春泥を避けてズボンの裾の泥
身をかはし逃げトラックの春の泥
ひと風に枯れ杉葉落ち初音かな
・畑打つや虫の子をまた埋めやりて
・木瓜咲くや紅に真白にとりどりに
・夜桜や電球暗き街路灯
・春泥や赤いソウルのハイヒール
ドア叩く「待つてゐたわ」とサイネリア
比呂
・年越して生きて蓬けり葱坊主
・千年の花の重さに枝垂れけり
・足舐めてゐる赤ん坊小六月
嬰の体重量る針揺れ初桜
日本に眠りしキーン春の泥
俊一
・春泥や踏み石をとび登校す
・初桜寝ても覚めても五七五
・あと三日桜前線北上中
散る桜かくもありたし我もまた
散る桜いさぎよきかな散る美学
・巡拝の四國霊場若葉風
・身につまさる介護の話チューリップ
渓谷の宿にいやさる夕桜
天空へ少女の祈り早春歌
心身のおだやか卆寿紅桜