第275回 令和元年12月15日
兼題: 年用意 燗酒
夜神楽の手送りに受けコップ酒
大根焚き皿の温さを素手が愛で
沖待ちの汽笛のまぢり除夜の鐘
猫板に御手塩の肴燗の酒
藁束を納屋から運び年用意
比呂
☆燗酒や眠り上手の酔ひ上手
・島の灯のか細く揺るる夜の雪
・一年の計の有耶無耶十二月
・姥捨てるごと積む廃車小米雪
・こだはりの太き注連選る年の市
信子
☆女子会の二人で燗の「美少年」
・熱燗や裾にみだれの宿衣
・煤払ひ手元の止まる古手紙
・春支度音符のやうに物置いて
三週分頂くくすり年用意
△地の物を山ほど漬けて年用意
△熱燗に女の愚痴の怪気炎
・母のセーター厚きカタログ繰りて選る
・故郷は今宵も雪よ燗熱く
百年の卓を洗ひて年用意
良人
△燗酒のぬくさほどほど一人酒
・年用意衣装を替へて六地蔵
・熱燗や場末の客のあふる店
・裏窓のカーテンを替へ年用意
・茶箪笥の茶器を入れ換へ年用意
ミヨ
△ドライフラワー逆さに吊られ冬うらら
・青竹の燗とくとくと木曽の宿
産土や未だ冬至のはかりごと
箸袋に書く祝言や年用意
星降りてぺちやくちや和む氷柱かな
△救急医夜勤の明けて燗の酒
・餅搗きや大根おろし餡黄粉
・新幹線保線作業車冬の星
澄みし空手は凍えつつ年用意
常に無く早めにはじめ煤払ひ
雅枝
・チゲ鍋や碗のマッコリ年忘れ
・この道を迷ふことなく冬夕焼け
・冬はじめバスの座席を譲られて
・長き夜やジンを湯で割りジャズ流し
・「ここ切る」と医師の説明師走尽
昭雄
・熱燗に男の愚痴を混ぜ啜る
・年用意巫女の草履の朱の鼻緒
牧の木々かさりこそりと年用意
親爺似の兄と今宵も燗熱く
宝くじジャンボを求め年用意
・生牡蠣と君の一言飲み込んで
しんみりと「子規の画」に入る漱石忌
手のゆかぬところを掃除年用意
なにやある妻の熱燗煮沸前
熱燗をあおり一言はき出して