第274回 令和元年11月24日
兼題: 時雨 冬将軍
厚さ焼き加減うるさく薬喰ひ
時雨るや古りし煉瓦の美術館
晴朗の海の高浪冬将軍
頬被りごつき指たてかむ手鼻
小春かな背を屈めて緋の衣
比呂
☆希典の二間の旧居冬木立
△閂を掛け閉ざす山初しぐれ
・冬桜太子生まれし藁屋とも
産土の竜虎泳ぐや秋出水
磯菊の群れ咲く崖に波しぶき
敬子
△無人駅の無人売店冬初め
・時雨るや坂の険しき奥の院
・山裾の旧家大樹の柚子光る
・栗五つ拾ひて試歩の足軽く
気に入りの紅茶を入れて鵙日和
△冬に入る尼寺へ行くロープウェイ
・しぐるるや杉の秀尖る鯖街道
・闇残る朝勤行の堂冷ゆる
・目耳口塞ぐ三猿初しぐれ
奉行所の跡の礎石や冬将軍
良人
△那須岳を覆ふ黒雲冬将軍
・小夜時雨改札の列遅々として
・路地裏をうろつく猫に時雨くる
しぐるるや野路端にたつ地蔵尊
校庭に小さな叫び初時雨
信子
△曳く犬に時に曳かれて草紅葉
・波の間に豪雨の記憶冬の川
・一碗の飯に立つ湯気初しぐれ
峡川の音にふるへて薄紅葉
雨後の日の彩る木々や冬隣
△腕組みを解き飛車送り冬将軍
・錆のふくブリキのおもちや初時雨
・小夜しぐれ閉店前のレジ二人
初時雨旅の手帖を開き居り
冬の暮回答期限のメール打つ
木瓜
△髭たてて睨む暗闇冬将軍
・麗子像赤きちやんちやんこを羽織り
・しぐるるや生きる気概の老いてなほ
いとまなし十一月のやり残し
街角の人影に揺る冬紅葉
雅枝
△初しぐれ露地から露地を辿り猫
・夕紅葉抗ひてさす朱のルージュ
冬紅葉山は年増の裾模様
着古せし手編セーター身の一部
冬将軍風呂の温度を二度上げて
・旅好きの終の旅立ち冬将軍
・神の旅人には読めぬバーコード
杜氏見あげる庭先の残り柚子
冬将軍来たれと村は釘を打ち
初時雨はじめ落ち葉に音が来る
英郷
・晴れわたる男体山に冬将軍
・百舌鳥高音些か年の脚運び
あかね雲袖なし羽織るほど寒し
月白く三温四寒に柿たわわ
時雨どき首里城テレビに燃え盛る