査察官がやってくる ㉘
現地視察の一行が向かっているという報告があり、対応を一任された。
査察の手順がマニュアル化されており、それに従って準備すればいいのだけれど、
各チーフがそれぞれの持ち場を担当しているが、一つ一つの動きが見えてこない。
不安になり、視察前に所内をひと巡りしながら、進捗状況の報告を受けている。
現場としては、視察の目玉としたいプロジェクトがあるわけで、
わたしが説明することになっていると担当者からその場で聞かされた。
新規に導入した機材の活用状況を具体的に示すことが求められる。
導入当初から、これといった研究に活用されていない状況が見えており、
どうやって誤魔化すのか、既存のデータでデモ作動させてやり過ごすことにするのか、
即断できないでいると、視察の一行の車が2台、敷地内に到着した。
玄関先で出迎えると、査察官は、入所当時にひとつ先輩のYさんであった。
所内での問題行動を指摘され、左遷ともいうべき「出向」の処分をされたYさん。
どうして、主席査察官なのかと不思議に思いながらも、なんとなく安堵している。
所内の案内をしながら、求めに応じてにこやかに説明する「わたし」。
ふと、自分の部署のメンバーに視察のことを説明していなかったことに気づいた。
査察の対象になっているのか、そうでないのかを思い出そうとしている。
どちらにしても、自分の担当部署は案内できそうにないと判断し、
目玉である「新規導入の機材」の活用状況の説明に移るが、突如として早口になる。
主席査察官から、「聞き取れない。何を言っている」と言われたとたん、目が覚めた。
※査察官にYさんを選んだのは何故なのか?
過去に失敗をしている。隠さなければならない汚点があるのかもしれない。
※焦ると早口になるくせがわたしにある。活舌も悪くなる。わかりやすい反応だ。
※現実的な問題として、日常的な作業においてさぼっている意識がある。
一生懸命にやらなくても、間に合えばよいというなれ合いの雰囲気に甘えているのかも?
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