映画のページ
2001 USA 136 Min. 劇映画
出演者
Russel Crow (Dr. John Forbes Nash Jr.- ノーベル賞受賞の数学者)
Jennifer Connelly (Alicia Lopez Harrison de Larde Nash - 元ナッシュの学生、後彼の妻)
Ed Harris(William Parcher - 幻想に出て来るCIA)
Paul Bettany (Charles Herman - 幻想に出て来る学友、ルームメート)
Josh Lucas (Martin Hansen - 実在する学友)
Christopher Plummer (Dr. Rosen - ナッシュの精神分析医)
見た時期:2002年9月
実話を脚色した話だそうです。悪い作品ではありませんが、なぜアカデミー賞であれほどたくさんノミネートされ、大騒ぎになったのかは理解できませんでした。ラッセル・クロウの作品をあまりたくさん見ていないためかも知れません。L.A.コンフィデンシャルを見ました。あれも全体のバランスが良くおもしろい話でしたが、オスカーというほどすばらしい演技はありませんでした。ビューティフル・マインドもバランスは良くて、136分という長い時間を上手に持たせていました。
ナッシュを理解するのに大いに役立っていますが、この人を理解するためにハリウッドのキャスト、スタッフを総動員して映画を作るほどの必要性があったかという疑問にぶつかります。
アメリカのエリート大学の数学部に学生が何人か入学して来ます。その1人がナッシュ。こういう大学にありがちなエリート意識、競争心、キャンパス生活がざっと紹介されます。ナッシュは最初から社交性の無い変わり者として紹介されますが、チェスのチャンピオンや数学者には時々こういうタイプがいます。全員が変わり者なのではなく、ごく1部。その1人がナッシュです。
彼は通常の授業には滅多に顔を出さず、しきりに図書館や自分の部屋で何かの理論を考え出しています。それを持って教授の所へ出かけて行きますが、授業に来ないということで文句を言われます。いろいろ人との付き合いでは困難を感じながらとにかく卒業もし、教職につきます。
元々精神的に何か障害を抱えていたのか、この頃から発病したのかははっきり分かりませんが、映画の中では仕事を始めた時期から徐々に幻想と現実の区別がつかなくなり、それが日常生活に影を落として行くという風に描かれています。片方では彼に理解を示す魅力的な女性が現われ、モーションをかけて来ます。他方自分は CIA に頼まれて何か重要な役目を果たしているのだと考えるようになります。それが国家の機密に関わる事で、止めたくても抜き差しならなくなって行くという風に信じ始めます。
専門的な知識が無いので詳しい事は分かりませんが、内気な青年が有名大学という新しい環境で生活を始めたり、「普通の」「魅力的な」女性が彼の生活に飛び込んで来たりという環境の大きな変化が彼に何か影響を与えたのかも知れません。とにかく結婚した妻も「変人という段階を越えている」と気付き、調べ始めます。そしてナッシュが信じている事が現実から逸脱している事に気付き、医者の助けを借ります。
ここから後は奥さんの苦労の連続で、ナッシュの生活はこの女性に支えられてのみ成立しているという良妻賢母物のストーリーになります。ミステリー・クラブの人間として、見ていて残念だと思ったのは、監督の演出があと一息。うまく行けばミステリー風のおもしろい仕上がりになっただろうというところです。試みは途中までうまく行っているのです。観客には最初エド・ハリス演じる CIA がどういう存在か上手に隠してあり、あっと驚く寸前まで行きます。奥さんが彼の研究室や、物置で彼のやっている秘密の仕事を発見するシーンも驚愕の・・・となる寸前まで行っています。ところがあと1つインパクトに欠けます。あっと驚く為五郎には至らないのです。セブンで刑事がジョン・ドウのアパートに乗り込んだシーンでは驚愕効果が100%成功しています。ああいう風に行かないものでしょうか。焦点が感動の良妻賢母物とミステリーに分裂してしまったためかも知れません。
有名な俳優を呼んで来て作った割にぱっとしないという印象も拭えませんでした。それなのに次から次からオスカーにノミネートされて驚きました。出演した俳優やスタッフをたたえるためのオスカーでなく、ナッシュに花を持たせるためのノミネートだったのかも知れません。
そして映画だけを見ていると、そのナッシュは1度か2度おもしろい理論を発表しただけで、他は学生時代は授業をサボり、教職についてからは授業をすっぽかし、発狂してからは仕事をしておらず、老人になってからノーベル賞を与えられ、その間いったい何をしていたんだろうという単純な疑問も浮んで来ます。
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