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2002 USA 94 Min. 劇映画
出演者
Adam Sandler
(Barry Egan)
Emily Watson
(Lena Leonard - エリザベスの同僚)
Luis Guzman
(Lance - バリーの会社の人)
Philip Seymour Hoffman
(Dean Trumbell - ユタ州でマットレスを売っている男)
Hazel Mailloux
(Rhonda - イーガン家のジープテットの1人)
Mary Lynn Rajskub
(Elizabeth - 恐怖の姉、イーガン家のジープテットの1人)
Lisa Spector
(Susan - ーガン家のジープテットの1人)
Julie Hermelin
(Kathleen - イーガン家のジープテットの1人)
Karen Hermelin
(Anna - イーガン家のジープテットの1人)
Nicole Gelbard
(Nicole - イーガン家のジープテットの1人)
Mia Weinberg
(Gilda - イーガン家のジープテットの1人)
David Stevens
(David - イーガン家のジープテットと結婚した男)
Jimmy Stevens
(Jim - イーガン家のジープテットと結婚した男)
Nathan Stevens
(Nate - イーガン家のジープテットと結婚した男)
Mike D. Stevens
(Mike D. - イーガン家のジープテットと結婚した男)
Larry Ring
(Steve - イーガン家のジープテットと結婚した男)
Kerry Gelbard
(Richard - イーガン家のジープテットと結婚した男)
Robert Smigel
(Walter - イーガン家のジープテットと結婚した男、歯科医)
Rico Bueno
(Rico - ランスの従業員)
Salvador Curiel
(Sal - ランスの従業員)
Jorge Barahona
(Jorge - ランスの従業員)
Ernesto Quintero
(Ernesto - ランスの従業員)
見た時期:2002年12月
ユニークな作品です。
アダム・サンドラーが主演する作品は典型的なハリウッド・コメディー・スタイルのものを3つほど見ていますが、パンチ・ドランク・ラブ はその3つとは全然違い、またもっと名の知れたベン・スティラーのようなコメディアンの出そうな作品とも全然違います。インディペンデント風の作りですが、その中でもかなりスタイルに気を使ったユニークな作品に出来上がっています。
サンドラーの役は今まで知られていたスタイルとはがらがらがらっと違います。共演のエミリー・ワトソンも、これまでのエキセントリックな役とは違い、ラブ・ストーリーのお姫様です。彼女はレッド・ドラゴンでも既に今までの役とちょっとスタイルが変わって来ていますが、更に別な役を演じています。新しい役をやりたいのに周囲との話がうまくつかず苦労しているジム・キャリー、メグ・ライアンに比べ、何も言わずさっとこういう役に入って行ったサンドラーの幸運を祝福します。
ストーリが展開するのはたったの1日ではなく、何日にも渡るのですが、主人公はその間ほとんど服装を変えません。サンドラーはずっと青の背広で通します。ワトソンは主に真紅のドレス。その色と、背景の色の調和に非常に気を使ってあり、画面はモダンな絵画的な美しさを出しています。ここに高い点数をあげたいです。
体裁は一応サンドラーが出るという事もあって、コメディーなのですが、実はシュールなラブ・ストーリーと言った方がいいです。
のっけから印象深いシーンが出て来ます。後でカリフォルニアと分かるのですが、どこかのつまらなそうな普通の町。サンドラーは大きな部屋に机を1つ置いて、誰かと電話で商売の話をしています。物凄く大きな部屋なのですが、周囲には何も置いてなくてがらんとしています。一生懸命話をしているのですが、話の内容はちょっと相手と噛み合っていないような感じ。
電話を終えて部屋の外へ出ます。そこで観客にはここがガレージ風の建物で、彼はそれを事務所に使っているのだということが分かります。あたりは静まり返っています。通りに出てもほとんど交通はなく、早朝なのかという印象。ひんやりした感じです。そこへ突然運搬車が来て、いきなりドアを開け、なぜか古いオルガンをドンと道に放り出して行きます。説明も、受領書サインも何もなく、車はさっと消えます。サンドラーはさっぱり状況が理解できません。観客も。
暫くしてブロンドの女性がガレージに入って来ます。隣のガレージの前で困り切っています。開いていると思って来たら、まだ開店していません。それでサンドラーに車の鍵を渡し、隣のガレージが開いたら車を渡して欲しいと頼んで出て行きます。
ここまでの展開でもう観客に好奇心を起こさせるのに充分。サンドラーは特にどじをやるわけでもなく、笑うわけでもなく、むしろ無表情で状況を見守っています。しかしまあこれでワトソンの演じるレナとサンドラー演じるバリーは知り合ったわけです。
次に登場するのが我がルイス・グスマン。ついこの間ウェルカム・トゥ・コリンウッドで触れたばかりですが、また登場。与太者の役が多い人ですが、今回はなかなかかっこいい服を着たシーンもあります。監督とはブギーナイツなどで顔見知りだったのでしょう。
さてそろそろ早朝という時間でもなくなり、会社の業務が賑やかになって来ます。すると仕事中のサンドラーの所に次から次から女性から電話がかかって来ます。同僚が「妹から電話だ」と言いますが、名前は色々。本当に妹かなあ・・・と思っていると、7人姉妹。
これが迫力の姉妹。サンドラーは7人姉妹の長男。最初の男の子なので長男。上から何番目に生まれようが関係ありません。すっかり毒を抜かれ、牙を抜かれ、爪を丸められ、尻に敷かれています。しかも唯一の独身者らしいです。7人には皆連れ合いがいるので、家族パーティーをやるとそれだけで1ダースを越えます。これはもう迫力どころの話ではありません。この役をやっている人たちのかなりの数が本当の兄弟姉妹らしく、同じ苗字が並んでいます。女性軍はいろいろな名前が出て来るにも関わらず、顔が非常に良く似ています。結婚して姓を変えた本当の姉妹かも知れません。映画出演経験の少ない人がほとんど。積極的な妹に迫力で迫られるサンドラーのシーンはシュールとしか言いようがありません。
ここまで話してもまだ話の本筋は出て来ていません。この後サンドラーは巻き込まれ型の災難に遭遇。とんでもない目に遭い始めます。そこからはばらさないことにしますが、先の予想のつかない作品です。
ストーリーの途中でサンドラーがプディングをたくさん買って懸賞に当たろうとするエピソードがありますが、これは実話をモデルにしているようです。カリフォルニアに本当に 3000 ドルつぎ込んで 12 150 個プディングを買ったデビッド・フィリップスという人がいます。このお金で1 250 000 マイル分の航空券を得たそうです。マイルをキロに直す時は 1.6 倍して下さい。
後記: 実は私もちょっと前、グリース・プディングを買って、会社からプレゼントをもらいました。55¢のプディングを20個だか30個だか買って、ラベルを送るとすてきなプレゼントと書いてあったので、つい乗せられて。しかしプレゼントは本当にすてきでした。送った先は乳製品、ヨーグルトやプディングなどを専門にしている会社。もらったのはデミタス・カップ。エスプレッソを飲むのにぴったり。そのカップが壊れないようにと箱には干草がいっぱい入っていました。牧場の匂いがするのです。なかなかしゃれた事をやります。
監督もユニークです。この人は作品数が少なく、最初に手がけているのが The Dirk Diggler Story。このタイトルを聞いておやっと思う人は映画ファン。そうです。あのポルノのオスカー連続受賞のさる人物を描いたブギーナイツのディルク・ディグラーのことです。その他に有名な作品としてはマグノリアがあります。
インディペンデンスの映画だと考えるとそれほど不思議ではないのでしょうが、アダム・サンドラーの映画だと考えると珍しく、本当のアパートやガレージを使っているようなシーンが多いです。あのコメディーの大スター、サンドラーが、こういう普通の公団住宅みたいな建物の廊下を歩いていたり、その辺の大通りに立っていたりというのも普段と違って不思議な雰囲気です。典型的なサンドラーを好きな人にはちょっと合わないかも知れませんが、彼がレパートリーを増やすという視点から見ると、彼らしくない面が色々あってすばらしいイメージチェンジです。
日本人がこの映画を見るとおやっと思うシーンがいくつか。サンドラーがお金を引き出すのはどういうわけか三和銀行の機械。乗る飛行機で乗客の世話をしている女性は日本人に見えます。出かけて行った先では日本のお祭りの行進の最中。日本人がこの映画に出資したのだとすれば、なかなか美学の才能のある監督に目をつけたことになります。特殊効果などはゼロのこじんまりとした作品ですが、ユニークさでは群を抜いています。
参考作品: Mr. Deeds
続報: パンチ・ドランク・ラブ その後
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