映画のページ

デイ・アフター・トゥモロー /
The Day After Tomorrow

Roland Emmerich

2004 USA 124 Min. 劇映画

出演者

Dennis Quaid
(Jack Hall - 古代から現代までの気象を研究する気象学教授)

Jake Gyllenhaal
(Sam Hall - ジャックの息子、天才少年)

Sela Ward
(Lucy Hall - ジャックの妻、医師)

Dash Mihok
(Jason Evans - ジャックの同僚、サム救出隊)

Jay O. Sanders
(Frank Harris - ジャックの同僚、サム救出隊)

Tamlyn Tomita
(Janet Tokada - ジャックの同僚)

Emmy Rossum
(Laura Chapman - サムの友達、天才グループの1人)

Arjay Smith
(Brian Parks - サムの友達、天才グループの1人)

Austin Nichols
(J.D. - 天才グループの1人、サムとはライバルのグループ、大金持ち)

Pierre Lenoir
(JDのドアマン)

Don Kirk
(Victor - JDの運転手)

Perry King
(Blake - 大統領)

Glenn Plummer
(Luther - ホームレス)

Sasha Roiz (Parker)

Ian Holm
(Terry Rapson)

Kenneth Welsh
(Becker - 副大統領)

Nestor Serrano (Gomez)

Vitali Makarov
(Yuri - ロシア人の宇宙飛行士)

Russell Yuen
(Hideki - 日本人の宇宙飛行士)

本職がレポーターかも知れない人々

John Sanford Moore
(レポーター)

Mark Thompson
(ニュースキャスター)

Wendy L. Walsh
(ニュースキャスター)

W. Lauren Sanchez
(ニュースキャスター)

Rob Fukuzaki
(ニュースキャスター)

Lori Graham
(レポーター)

Rosey Edeh
(レポーター - ニューヨーク担当)

Leyna Nguyen
(ニュースキャスター)

Suzanne Michaels
(レポーター)

Robert Holguin
(レポーター)

その他の数え切れないほどの出演者は割愛

見た時期:2004年5月

パクリの連続、それでもとても愉快に作られていて、至る所に笑いが飛び出します。何よりもまず冒頭がおもしろいです。何と、アイス・エイジでおなじみのスクラットのパクリで始まるのです。その他バーティカル・リミット(あるいは最近モスクワで実際に起きたプールの事故)、猿の惑星ザ・コアなどを思い出させるシーンが続出。もっと映画を見た人は他の作品に思い当たるかも知れません。気楽にパクリまくっているので、こちらも笑いながら見ていました。

公式の初日の券に当たったので、早速扁桃腺の腫れを忘れるために映画館へ。公開初日の券、ベルリン映画祭にも参加するこの映画館によく当たりましたが、初日なのにガラガラということもあります。この日は珍しく満員。他の映画に比べ期待度が高いようです。監督がドイツ人だからかも知れませんが、エマリッヒという人はドイツ人だから受けるというボーナスを退けても、力のこもった作品が多いので、観客動員数は高い方です。私が1番好きなのはスターゲイト。特撮が魅力的な上、ジェームズ・スペイダーの貰った役が良かったです。

その後エマリッヒはハリウッドから大きな仕事を貰い、大成功はしていますが、徐々に大味にになり、丹念な職人肌の仕事から遠のいているような印象を受けています。彼の出身はシュヴァーベンで、この地の人はきっちりしていて勤勉に働くことで有名です。

異論はいくらでもあるでしょうが、私は楽しく見ました。ドイツ人にもおおむね気に入られていました。映画館全体で和気藹々と笑っては行けないシーンでも笑ってしまいました。所々、ドイツ人を意識したジョークも入っています。筋は恐ろしくご都合主義、「無いだろう、これは・・・」というシーンの続出。その上教育映画。ドイツ人が人を教育しようと思って映画を作ると、つまらない物になるというのが定説なのですが、見事その期待を裏切り、笑いながら教育を受けるという結果に。しかし、今さらドイツ人にこんな教育をしなくてもいいと思うのです。現在連立で政権を取っている党は緑の党と言い、その影響もあって大分前からドイツでは環境保護というテーマは学校でも取り上げられ、保守的な野党でさえ票を得るためだけでなく、マジで環境問題を心配しているという国ですからねえ。

言わばこれまで眉間に皺を寄せて会議場で話し合っていたテーマをエンターテイメントで総括して見せてくれたという感じで、皆でこれまで学習した事を確認し合っていたような具合。ドイツの社会では当分この思想が主流を占めそうですので、この映画が嫌われるということは無いでしょう。特撮がお粗末だとか言う向きもあるでしょうが、要はこの映画で何を言おうとしているかでして、そのメッセージは充分届きます。

私もドイツに長く住んでおり、この政治的な発展をある程度身をもって体験しているので、こういうお説教映画でも反対しません。なにしろ、家を出るとすぐ目の前の通りに木がはえており、町の中心に行くと芝生の上を歩ける、スーパーやデーパートに布の袋を自分で持って行って、店が配る袋を拒否する人が多いなどと、緑の党の党員でなくとも、運動に消極的な人間でも、感謝こそすれ、非難はできないような状況になっているのです。時には馬鹿げた提案も出され、呆れるきれることもありますが、全体の動きとしては、なるほどと思える努力が至る所に見られるのです。

日本もしかし捨てた物ではありません。排気ガス規制などは、世界最悪状態だったのを反省して世界一空気のきれいな大都市を目指し、かなりの成功を収めています。それに国民は方法論でこそあれこれもめますが、大筋環境は護るべきものという点で意見が一致しています。ですから日本人が日本でこの作品を見てもそれほどの驚愕、反感は起きないと予想しています。《危ないんだから、警告を出してるんだよ》という風に受け取られるのではないかと思います。

もう1つのテーマは親子関係。これは公私混同が過ぎる。プライベートな事で同僚が死に、軍のヘリが4機も飛んで来るというのはちょっと都合が良過ぎますが、監督は環境問題1つで勝負すると嫌われると危惧したのかも知れません。それにデニス・クエイドがなぜ何百キロもの距離を旅するかという口実が必要ですし。

これはドイツ人がカタストローフェンフィルムと呼ぶ、災害・パニック物です。ですから主演は天災や事故と言えるかも知れません。脇役に選ばれたのはギャラの安い俳優。メグ・ライアンの前亭、デニス・クエイドです。他に候補に上がっていたのがメル・ギブソンなのですが、彼ですと家庭をおろそかにして反省している父親という役にあまり上手に填まりません。ギブソンは超保守派カソリックで、子沢山。子供を大切にしている人ですからねえ。その上ギャラも高過ぎて主演の特撮のお金が不足します。クエイドはライアンと結婚する前はスターだったそうです。その後ライアンが超有名スターになってしまったので、ずっと、ライアンの亭主ということで有名になってしまいました。離婚しましたが、この作品同様1人息子がおり、離婚の際も1番息子の将来を気にしていましたから、役柄はぴったり。雰囲気は良く出ています。あまり自分が自分がというエゴの噂の無い人で、デイ・アフター・トゥモローでは主題の邪魔にならないようなほどほどの演技。映画界にはこういう風にストーリーにうまく填まる俳優も必要です。

では、あまり重くないあらすじ行きましょう。

古代から現代までの気象を系統的に研究する学者のジャックは、言わば気象の考古学者。おもしろい職業ですが、ドラマチックな分野ではないはずでした。しかし天気の具合を系統的に見るという職業柄、これまでこういう風に発展していたから、将来こういう風になる、という予想の分野にもやや足を突っ込んでしまいます。その結果地球温暖化に警告を発していましたが、資本主義政策優先の某国の政府は耳を貸しませんでした。家庭をおろそかにして南極で同僚と測量中、1人がうっかり凍りにひびを入れてしまったので、その後はアイス・エイジ 特別編のような顛末。危ういところで同僚は助かり、ジャックも無茶なジャンプをして、研究結果も確保。ジャックは研究熱心なあまり、やや極端に走ることもあるようです。

妻も優秀な医師で、その2人の間に生まれた息子は天才。しかし良くあるように学校の成績は振るいません。先生より頭の良い生徒は嫌われますし、天才は日常の世渡りはあまり上手ではありません。父親は世界中をまたにかけて飛びまわっているので、家は空ける事がほとんど。たった10日一緒に過ごせたと言って息子が大喜びするという体たらく。

しかし環境問題をおろそかにしていた政府と家庭問題をおろそかにしていたジャックが大いに反省させられる日が来ます。それが明後日。

ジャックたちが南極で体験したスクラット事件はほんの序の口。その後コンピューターの間違いかと思わせるような異常な測定結果、分析結果が次々に報告されて来ます。この資料を元にはじき出した結果は、世紀、年、月単位でなく、週単位で目の前に氷河期(!?)が迫っているというもの。氷点下百度などという途方も無い温度が目の前に迫っているのです。そんな馬鹿なと思いますが、私も学校で絵を見たことのある有名なマンモスが何と一瞬にして凍り付き、そのため発掘した時には胃袋の中身まで発見できたという話を聞くと背筋が寒くなります。地球が高性能の冷凍冷蔵庫になるという話です。

ちなみに日本で北海道以外の場所に住んでいると、氷点下10度と聞いただけで怯えてしまう方も出ると思いますが、この程度ですと人間は何とか生きて行けます。ドイツのように暖房完備の環境は無論贅沢ですが、建築方法を工夫し、厚い壁、二重窓、衣類、食事の工夫などで取り敢えず持ち堪えることができるのです。

二重窓は寒さ、暑さ、騒音の三重の目的に効果があります。厚い壁はよく考えないとしっぺ返しを食らうこともありますが、ある程度寒さや暑さに距離を置く効果があります。衣類は最近フリースという繊維ができたので、大いに助かりますが、着物、平安時代の衣類などもなかなか暖房効果があります。日本は夏が暑いため家を締め切り、中で火を焚くといった欧州式の生活は無理です。しかし冬は結構寒い。その時ああいう空間を体の周囲に引きずって歩くような衣類は中が結構暖かいのです。私もまだ覚えていますが、寒い国出身の祖母が東京で冬にろくに暖房もせずに平気な顔をして暮らしていました。聞いてみると、着物を着ているので中は暖かく、寒く感じるのはせいぜい手足だけだと言うのです。

食事も工夫が必要。現代では太り過ぎが話題になるので、今すぐ切りかえる必要はありませんが、ドイツの古い料理を見ていると、《見てくれはどうでもいいが、とにかくカロリーを取る》という意図が分かります。今から100年、200年前は生活が苦しく、仕事は厳しく、ファーストフードなどでは命が持たないという世界でした。ですから脂っこい料理、重めのパンなどが必要だったのです。しかし冷凍冷蔵庫のような速度でいきなり氷点下百度となると、そんな話も軽く吹っ飛んでしまい、生存するのはまず無理です。そのあたりを納得させてくれる映画です。

所々お説教的な面もあります。天才学者、英知、貴重な研究結果、書物、将来性のある子供たちも世界がこうなってしまっては何の役にも立たないという無力感。図書館で本を燃やすシーンをドイツ人が撮るのにはかなりの勇気が必要なのですが、それをパロディーにして、燃やさなければ命が危ないという設定にしてあります。それでも聖書を救おうとする男がいるのですが、その男がなんとアテイスト、神を信じない人だったのです。聖書や宗教を歴史の流れの中で見るタイプの人間から見ると、神を信じることをせず、人類がこういう作品を世に残したという事を尊重するこの人の考えは現実的。ドイツ人の何割ぐらいがこういう考え方について行くかは分かりません。このシーンは却って日本人の方がすんなり納得するかも知れません。

色々なテーマ、エピソードをてんこもりにできる作りですが、詰め込み過ぎず、あくまでも環境問題をおろそかにするとこうなっちゃうんだよという図を中心に話が進みます。京都で話し合われた事などによると、先進国が二酸化炭素を出しまくると世界の気温が上昇するということなっており、エマリッヒがのっけからデイ・アフター・トゥモローで雪を出して来たのには驚きました。

苦言もいくらか出ます。冒頭の千代田区のシーンは全然日本らしくありません。ブレードランナーのセコハンのようなシーンに仕上がっており、ドイツ語の吹き替えでは電話の声の女性1人だけがどうやら日本人のようで、他は発音が悪い。ですからインドのシーンをインド人が見たらやはり何か文句を言うかも知れません。幸いなことにこういうシーンは短く、後のストーリーを分かり易くするために、世界中でこんな事が起きているんだという意味で出てくるだけです。

某大国を揶揄するシーンもあります。後半まで副大統領を演じている人はイメージとしては実在する副大統領と似ています。時代を先取りしているかのような部分もあります。最後某大国の生き残った国民が助けてもらえるのはこれまで自国の裏庭と考えて見下していた国のおかげ。このシーンにはグッバイ、レーニン!のパロディーのような説明もあります。

ま、ポップコーンを買い込んで大型スクリーンの映画館に行き、リラックスして見るのがいいでしょう。監督は緑の党の考え方に賛成、パニック映画や大型の特撮映画大好きという人。私がちょっと気に入っているのは、どうやら考古学に好意的な目を向ける人らしいという点。ジェームズ・スペーダーの演じた役 もらしからぬ考古学者。クエイドが演じているのもただの気象学者でなく、歴史的に見る学者。そういう視点が好きです。

この後どこへいきますか?     次の記事へ     前の記事へ     目次     映画のリスト     映画一般の話題     映画以外の話題     暴走機関車映画の表紙     暴走機関車のホームページ