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インファナル・アフェア 無間序曲 /
無間道 II /
Infernal Affairs II /
Mo gan doh II /
Wu jian dao 2

劉偉強、麥兆輝 /
Wai Keung Lau, Siu Fai Mak /
Andrew Lau, Alan Mak

2003 HK 119 Min. 劇映画

出演者

陳冠希 Edison Chen
(劉健明 Lau Kin Ming - 警察学校に入学したやくざ)

余文樂 Shawn Yue
(陳永仁 Chen Wing Yan - やくざに潜入した警官)

黄秋生 Anthony Wong Chau-Sang
(Wong - やくざに警官を潜入させた組織犯罪課の警部)

胡軍 Jun Hu
(Luk - ウォンの友人兼上司(警部から警視に昇進)、自分も警官を潜入させている)

呉鎮宇 Francis Ng
(Ngai Wing-Hau - ガイ一家の次男、元々はかたぎ)

連凱 Andrew Lin
(ハウの兄弟)

曾志偉 Eric Tsang
(Sam - ガイ(父)の子分)

劉嘉玲 Carina Lau
(Mary - サムの女、ウォンの協力者)

杜汢澤 Chapman To
(Keung - ヤンの車を盗もうとしたチンピラ)

張耀揚 Roy Cheung

廖啓智 Kai Chi Liu

黄岳泰 Arthur Wong

見た時期:2005年3月

要注意: ネタばれあり!

このページと次のページはもうこの作品を見た方にお薦めします。見ていない方が読むと、犯罪事件の経過が先に分かってしまいます。特に箱の中に詳しく書いてありますのでご注意を。

監督は6人いるわけではありません。同じ人が3通りの名乗り方をするので、たくさん名前が並んでしまいました。本当は2人です。

いや、もう香港の底力に驚いたの何のって。井上さんから前情報は入っていて、ベルリン映画祭にも3本まとめて来たので、ぜひ見ようと思っていた作品。しかもファンタにも2本来たので、これはもう絶対見ると思っていたら、意外なところでこけてしまい、見逃した作品です。人の好意というのはありがたいもので、それを見られるように手配してくれた友人に感謝。で、作品を見てやはり感激。

中にはインファナル・アフェア 無間序曲 (2)は長過ぎる、だらだらしている、インパクトが無いなどという批判もあるらしいのですが、私のような血の巡りの悪い人間にはこのぐらいきっちり説明してもらわないと話が飛躍しているように思えてついて行けないのです。ですから、この作品、全然退屈することなく、心行くまで楽しめました。そして主要な登場人物に慣れ、警官、やくざと商売に違いこそあれ気合を入れて仕事をしている、それを演じている俳優に説得力がある、これをアメリカでリメイクしようなんて大それた事は考えない方がいい・・・とため息をついているところです。

ブラッド・ピット、ジェニファー・アニストン元(まだ?)夫妻が買ったのはインファナル・アフェア 無間道 (1)だけなのでしょうか、それとも3本丸抱えしているのでしょうか。確かにこんな作品を見てしまうと、買いたくなるでしょうが、歴史的背景、宗教的な土壌の違いをどうやって克服するのか考えてしまいます。選んだ監督がスコシージというのはまあ仕方ないでしょう。現在のところハリウッドでこういう長い、人が複雑に絡んだストーリーをまがりなりにも1つ(あるいは3つ)の作品にまとめ上げられる人と言えばやはりスコシージの名前が私の頭にも浮かんで来ます。

ブラッド・ピットは処刑人に出そこなったのだそうで、ボストンとかアイルランド系の話に興味があるのかも知れません。その仕切り直しにインファナル・アフェアを選んだとすれば、本人にとってはベストな選択。出演するのかはまだ知りませんが、プロデュースには積極的に参加しそう。しかし香港とかなり事情が違い、ただのやくざ年代記にしてしまうのだったら私なら失望します。その辺が気になります。

さて、3作のうち2作見たのですが、なぜ続編のインファナル・アフェア 無間序曲 (2)を先に出すのか。もう見た方はご存知でしょうが、話が過去に遡ってしまうのです。で、血の巡りの悪い私としては、先に起きた事件を先に書かないと頭が混乱してしまうのです。で、慣例を破りインファナル・アフェア 無間序曲(その2)から始めさせていただきます。

1991年まで やくざのガイ一家が香港の町を征している。子分5人がガイ・クウァン(父)のシマを手分けして押さえている。クウァンは上納金を取っていた。ガイの家族構成はクウァン(父)夫妻、娘1人、息子2人。次男ハクはかたぎ。
1991年 子分の1人サムはまだ新人。あまり大きく巾を利かせていない。サムの妻マリーはサムを出世させたく、サムに内緒で舎弟のラウにクウァン暗殺指令を出す。ラウは実行。ラウはマリーにぞっこんなので言うことを聞く。ラウの家族は香港の中国復帰を前に、海外移住している。
サムと警察のウォンは顔見知り。ウォンはサムと対立せず、持ちつ持たれつでやって行くべく話をしているところ。サムとウォンが会うとなぜかサムは食事を取る。私は食べ物にはすぐつられるが、サムはその程度では買収できない。
父クウァンを殺されたガイ一家は再編成。次男ハクが後を継ぐ。サム以外の子分はハクを甘く見て、上納金支払いを拒む。ハクは脅しのネタを駆使して、暴力でなく電話で話をつけてしまう。
出入りがあるかも知れないとの警察の危惧は空振り。
サムは状況を見据え、出る釘は打たれるから出ないと決心。マリーのもくろみは外れる。

ハクを演じている人が一般のやくざのイメージとは全然違い知的。家の本棚には本が山ほど詰まっていて、姿は日本で名を成したニュース・キャスターに似た風貌。以前はかたぎだったという役の上の履歴を上手に体現しています。こういう毛色の変わったボスを出したところがインファナル・アフェア 無間序曲 (2)を特におもしろくした理由かも知れません。「マフィアも子供を大学に」という話は映画で見たことがありますが、その本人が大ボスになるという話はあまり知りません。私はてっきり刑法や商法の知識をつけ違法すれすれの低空飛行をやるために相談役的な機能を果たすのだと思っていました。

1992年 サムはマリーが考えたのとは違うアイディアを実行。舎弟のラウを警察学校に正式に入学させ、内部情報を得ようと考える。ラウは言われた通り入学。同級生にサムの舎弟数人と、この計画とは関係の無いヤンがいる。
  ヤンは1度町でチンピラのケンと揉めて、ケンを警察に引き渡す。
ヤンはハクの異母兄弟。 それが警察にばれて首になる。しかし潜入警官として使えると刑事ウォンに見込まれ、表向きは警察学校を首になったことにして、やくざの世界に潜入。
ヤンの事情、素性を知っているのはウォンと友人兼上司のルーク。

やくざとしては個性的な経歴のハクに対抗するのはサム。この人無しにインファナル・アフェア(その1とその2)は語れません。インテリ風で本当に学のあるハクに対し、一見たたき上げで、学はなさそう、単純そうに見えるサムが実は全然そうではないのです。

サムには足が地についた、本能的な知性があるのです。いつもニコニコ陽気ですが、アホではない。しっかり先を見て、押さえるべき時には前に出ず、長期計画を立てます。それでいて命を張るべき時には惜しまず張ります。愛情深く自分の女を大切にします。それで特に男前でもないサムをマリーは命をかけて守ろうとします。イケメンで若いラウでもマリーにふられてしまいます。

このサムは脚本もよくできていますが、演じている俳優に負う所も大きいです。情に篤く、下町のおっさんという風貌でいながら、たぐい稀なビジネス・マネージメントと危機管理をこなす、官憲との対立もほどほどにして大きな摩擦を起さない、そして観客からは愛される人物を演じるのには、俳優自身に才能が無いと難しいでしょう。脇役の中では1番光っていました。

ここで登場するケンはインファナル・アフェア 無間序曲 (2)ではヤンとの接点が紹介される場面で登場するだけですが、インファナル・アフェア 無間道 (1)では大きな印象を残します。

潜入警官というのは相手に身元がばれては業務に支障をきたします。皆に「あいつは潜入だ」と分かるようでは行けませんし、警察署に堂々と正面から入って行くわけには行かないでしょう。しかし警察の中でたったの2人、3人しか彼の身元を知らないというのも何だか組織管理の上で問題に思えます。その点はインファナル・アフェア 無間道 (1)でも取り上げています。香港警察は時期によって汚職が進んでいた時期、クリーンな時期があるという話ですが、無論内部で誰かが潜入の名前をつきとめて、それをやくざに流してしまったのでは困ります。その辺のジレンマがこの作品には良く出ています。

1995年 元々はヤンがケンを警察に通報したため嫌われて当然だったが、服役中に父親を亡くしたケンが悲しんでいるのを慰めたりしたので、その後ヤンとケンは仲直りする。
出所してみると恋人メイがヤンの子供を堕ろしていた。2人の仲はその後もうまく行かない。

メイのエピソードはインファナル・アフェア 無間道 (1)に引き継がれます。

  刑事のウォンとルークは相棒だったが、現在ではルークが昇進。ルークはウォンの作戦に懐疑的だが、ウォンはヤンを異母兄弟のハウに接近させる。
血筋を重んじてハウはヤンを受け入れる。
ラウは署内で1番下から徐々に上に上がって行く。サムのくれる情報が手柄につながる。
  ハウはシマを順調に支配。

本来の商売と並行して父親殺しの犯人を私立探偵に洗わせている。探偵はホテルにカメラを仕掛け、連絡をしている最中の刑事ウォンとサムの妻マリーの会見を撮影。それがボスのハウの手に渡る。

ハウは自分が警察に事情聴取のために連れて行かれ取調べを受けている同時刻、手下に5人の子分を粛清させる。5人の手下のうち4人、さらに、クウァン暗殺に直接手を貸した手下も消される。 ルークが潜入させていた警官もばれて消される。

サムはハウの指令でタイに出張していたが、出張先で狙われる。危ないとの連絡は入っている。

ハウは尋問中にルークとウォンに持っていたビデオを見せ、逮捕を免れるばかりか、2人を脅す立場になる。
  刑事ウォンはいわば直接クウァン殺しに関わっていたので、本来ハウに殺される運命にあった。しかしその日ルークがウォンの車を使い、車ごと爆死してしまう。ウォンは事の次第を上司に報告し、警察を辞めようとする。
直接関わったもう1人の人物マリーにもヒットマンが送られる。警察で事の次第を盗み聞きしていたラウはマリーの危険を知り、危ういところを助け、かくまう。
ラウの初恋は実らず、マリーはひたすらサムを気遣う。タイへ行ってサムの消息を確かめようとする。裏切られたような気になったラウはマリーのことをハウに密告する。
マリーは空港、ラウの目の前でハウの手下に轢き殺される。
1997年 香港返還直前。ハウは政党に入り合法的な社会進出を図る。
警察は辞めると言うウォンを引き止める。悪への憎しみがやや行き過ぎたという扱いになる。ウォンはこの件にケリをつけた後で退職する決心。
それでウォンは政治家のパーティーに乗り込み、席上でハウを逮捕する。

ウォンの作戦は、タイで一命を取り止め隠れているサムを検事側の証人に立て、ハウを失脚させようというもの。

実父クウァンを直属の上司ウォンに殺された形になったヤンは暫くむくれていたが、悪に対する憎悪という点ではウォンを理解し、これまで集めた資料を提供。

ウォンには証人+証拠書類というダブルのボーナスが転がり込む。

サムはホテルのスイートに警官の護衛つきで匿われている。その警官の1人がラウ。にんまりするサム。

サムにはウォンとは別な考えがあり、ラウに命じて仕事を手伝わせホテルを抜け出す。

サムはハウに会いに出向く。

その後をやや遅れてウォンが追う。

サムはここで根性を入れ、気合でハウと対決。

父親を殺されたハウとしてはサムの妻に続いてサムも絶対に片付けたい。サムの知らない所でマリーが勝手にウォンと計画したということをハウが知ったとしても大した影響は無いだろうが、ハウはそこまで詳しくは知らない。

サムは妻から自分がやったと後で聞いて知っているから、下手ないいわけをしても無駄と分かっている。自分の愛する女を殺されたサムとしては、もう失うものは無いとばかりにハウと相討ちでもいいからやっつける覚悟。

ウォンは同僚ルークを殺された恨みをハウ逮捕、裁判という形で晴らしたい。

三つ巴。

サムを脅すためにタイに手を回したハウは新しい愛人と生まれたばかりの赤ん坊を押さえたつもりだった。

一枚上手のサムはハワイに移住しているハウの家族全員をタイ人の知り合いに押えさせていた。この男は1度サムを殺そうとしたが、その後和解して協力している。

この対決ハウの負け。死ぬ覚悟のサムは無傷で生き延びる。

ハウを殺したくなかったウォンは悔しがる。

死んで行くハウはヤンが実はスパイだったことを最後に知り、誰に言う機会も無く無念の死。

ハウの無念さは数秒の演技で十分出ています。この対決で誰も死なず、ハウが逮捕されていたとしても物語はいずれ血を見るでしょう。生き残ればハウは自分の父親を殺した刑事、子分夫婦にコケにされて黙って刑務所に行くはずはありません。サムだけがここでハウに殺されたとしても今度はヤンの書類がぞろぞろ出て来るので、自分の異母弟にコケにされれば書類が渡った先のウォンも恨みを買います。どの選択肢を取っても必ず血を見るようにできています。この時点で1番丸く収まるのが映画にあったようなハウの退場。

私には弾はウォンが撃ったように見えましたが、知り合いはウォンのはずは無い、ラウのはずだと言います。理屈から言うとハウを殺さず、裁判に持ち込みたいウォンが撃つはずは無いのですが、シーンを見るとウォンの弾が当たったように思えます。いずれにしろ、ハウの額のど真ん中に命中しているので、前に立っていた誰かの弾が当たっています。しかし警部の持っているピストルは結構大型で、あんなピストルからこんな小さな弾が出るんだろうかなど、細部についてはやや疑問が出ました。しかしストーリーの迫力は満点。そんな小さな事はどうでも良くなります。

これで世代交代が起き、香港は中国の手に、ハウのシマはサムの手に。ヤンはサムの舎弟に。ウォンの次のターゲットはサムに変わります。

演技力で競うとなるとサムに金メダル、ハウに銀メダル、ウォンに銅メダルという順序。役の難しさとも並行した順序です。若手は演技力という意味では弱いですが、ラウ+レオンからチェン+ユーという芸能界の世代交代(交代というよりも拡張)を狙ったのだとすれば、その役は果たしていると思います。若手を育てたいというのが目的の1つだとすれば2人の助走を大いに助けたことになると思います。この映画忘れようと思っても忘れられないでしょうから。

ところでアンディー・ラウ/アンドリュー・ラウという人たちは名前の漢字を良く見ると偉いラウさん、強いラウさん、徳のあるラウさん、華やかなラウさんという風になっているんですね。これまでただアンディー/アンドリューだと思っていたので気づきませんでした。もっとも英語名を選ぶに当たって監督は的外れでない名前(強い、男らしい)になっています。

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