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導火線 /
Po jun /
Dao huo xian /
City Without Mercy /
Flash Point /
Fuse /
The Signal

葉偉信 / Wilson Yip Wai-Shun

2007 HK 88 Min. 劇映画

出演者

甄子丹/Donnie Yen Ji-Dan
(馬軍/Jun Ma - 暴力刑事)

羅蘭
(マーの母親)

古天樂/Louis Koo Tin-Lok
(華生/Wilson - 潜入捜査官、マー刑事の同僚)

鄭則士/Kent Cheng Juk-Si
(Wong - 刑事)

呂良偉/Ray Lui Leung-Wai
(渣哥/Archer Sin - 悪党3兄弟)

鄒兆龍/Collin Chou
(哥/Tony - 悪党3兄弟)

釋宇行
(虎哥 - 悪党3兄弟)

Ping Ha
(トニーの母親)

谷垣健治
(トニーの舎弟)

范冰冰/Fan Bing Bing (Julie)

洪天明/Timmy Hung
(Yang Zai)

見た時期:2007年12月

冬のファンタ参加作品

ストーリーの説明なし

私の頭がカバなのか、ばらすようなストーリーが見えませんでした。

キャスト、スタッフを見ると明らかにこれは SPL の続編。同じ人たちが集まって新しい映画を作ることは良くありますが、導火線では主人公の苗字がまたマー。暴力刑事というキャラクターも SPL を踏襲しています。普通に考えると同一人物ではないはず。SPL でマー刑事は絶命しているはずだからです。しかし全く同じ顔、同じ名前、同じ暴力刑事。もし SPL でマー刑事が死んでいなかったら、フィルム・ノワールの SPL が暗さを失うので、あれはあのままオトシマエがついたものと考えましょう。となると導火線はプリクウェルなのでしょうか。舞台は返還直前の香港としてあります。直前にアンディー・ラウの作品を見ていささか疲れていたので、むきになって字幕を読まず、今になると悔やまれます。

香港には自分がスターだという自覚のあるスターがいますが、ドニー・イェンもそういう1人。でしゃばりで、いつも自分が中心にいる、ナルシストなどという言い方もできるでしょう。しかし別な見方をすると、自分を中心に大勢の人が集まって仕事をする、それで金を稼ぐ、それで家族を養ったり、次の仕事を調達したりする、自分がスターらしく中心ででしゃばっていないと映画館に客が来ず、皆の生活が破綻すると自覚があるのかも知れません。

香港映画関係のサイトを見ると時期にもよりますが、恐ろしい数の映画を作っています。タイトルがずらずら並びます。同じ俳優を何度も使います。日本だとマスコミや批評家から「マンネリだ」と言われ、俳優は「新しい役作り」の葛藤もあるのではと思います。それがインドや香港を見るとあまりあれこれ言わず、役が来たらさっさと演じているのではという印象を受けます。当然同じような役も多く、刑事かギャングの役でしか見たことが無いなどという人もいます。香港から世界にはばたいたジャッキー・チャンもほとんどアクション・コメディーのみ。香港でブルース・リーとは違うジャンルのアクションを成功させ、そのまま世界にはばたきましたが、名の知れた作品はほとんどがコメディーでアクロバット的なアクションが見せ場。

ってな感じで、ドニー・イェンも私が見た作品ではアクションが中心になっています。井上さんに比べ圧倒的に見る本数が少ないので、当然見逃した作品もあると思われ、私が持つ彼のイメージが違っているのかも知れませんが。

たくさんのタイトルのあるこの作品。最初はどんな話か分からず、見るのは止めようかとも思いました。何しろ8本全部を見ると40本以上見られる夏のファンタの料金の3分の1ぐらいかかるのです。夏のファンタは全部見ると1本が通常料金の半額程度になります。ところが漢字のタイトルが導火線と分かって食指が動き、見ることにしました。その代わりに外したのが井上さんに酷評されていた日本の作品。

いざ見てみると、導火線という魅力的なタイトルとはほとんど関係が無く、あてが外れましたが、作品は1度ぐらい目を通しておいても損はないのではと思いました。とにかくアクションが無茶苦茶です。「あんなこと現実にあるわけないよ」と思いつつも、荒唐無稽な振付には驚かされます。宿敵が最大限にらみ合って、いがみ合って死闘を繰り広げるのですが、「舞台裏でよほどの信頼関係が無いとあんな芸当はできないだろうなあ」と思いました。

物語は単純。サイコパスかと思えるぐらい狂暴なマー刑事が、絶対に仕事をあきらめない、しつこいギャングを追い掛け回し、最後は大格闘。それだけ。こんな刑事なので警察の上司、同僚も迷惑顔。完全に浮いた男を演じるのですが、イェンは役に合っています。

醍醐味は、特殊効果使いっぱなしのだらしないハリウッド映画と違い、かなりの部分、もしかしたらほとんど全部格闘シーンなどを俳優にやらせている点です。完全に年だと分かるチェンだけでなく、イェンもそろそろ年のはずですが、がんばっています。そして絶対に振りつけ師がいて、念入りに練習してからやっているんだと頭では分かっていても、善玉と悪玉は本気で喧嘩しているように見えます。巴投げか何かでバタンと倒されると、本当は痛いんじゃないかなどと思います。

最近英国で特殊な繊維が発明されたとか言われていて、強い衝撃が来るとその部分の繊維だけが石のように硬くなり、ハンマーやシャベルで殴られてもその人は痛くも痒くもないのだそうです。有名なテレビ会社が出したニュースなので本当の話だとは思いますが(まだ試作段階なので一般には売られていない)、そういうのがあったら私ならドニー・イェンにプレゼントしたくなってしまいます。あれを着てやったら多分怪我も少ないだろうと思うのですが、現在はボブスレーやスキー選手を使って実験をしているようです。まだ売っていない。

ちょっと前に見たかちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲートも筋はしょーもなく単純で見せ場はアクションだけ。イェンはチャンほどコメディーがかってはいませんが、どこまでマジか分からないような筋の作品に出会うことが多く、深く哲学的な事は考えずに見ることにしています。1番最初に見た作品は結構ハードボイルドで暗い作品だったため、その後見た作品とうまくつながらないのですが。

結局悪党と人の迷惑にならない人里離れた所で大立ち回り。この作品の見所はここだけなのですが、その分アクション、スタントをお好みの方にはいいかも知れません。ストーリーよりスポーツです。アクションが凄いのにストーリーもちゃんとできていたのが SPL、アクションだけが凄くてストーリーは無かったのが導火線。ドニー・イェンに主演をやらせなかったのが SPL、ドニー・イェンに主役をやらせたのが導火線。アクション・スターにアクションをやらせるより、アンサンブルで他の俳優と並べる方が魅力が出るというのは皮肉です。

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