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1972 San Diego/California, USA
考えた時期:2008年2月
2005 USA 130 Min. 劇映画
出演者
Ken Howard
(Michael Feller - ローズとマギーの父親)
Candice Azzara
(Sydelle Feller - マイケルの2度目の妻)
Toni Collette
(Rose - 弁護士)
Cameron Diaz
(Maggie - フリーター)
Shirley MacLaine
(Ella Hirsch - ローズとマギーの祖母)
Richard Burgi
(Jim Danvers - ローズの恋人、弁護士)
Mark Feuerstein
(Simon Stein - ローズの婚約者)
Norman Lloyd
(元教授)
Alan Blumenfeld
(サイモンの父親)
Marcia Jean Kurtz
(サイモンの母親)
見た時期:2008年2月
コメディーには向いています。仕事もどんどん入っています。しかしシリアス・ドラマにも向いているので凄いなあと思います。
ミーハーの顔をしているので目立ちませんが、根性もあるし才能にも恵まれている人です。よく考えてみるとこれといったスキャンダルや失態はありません。1度問題写真が出回るとかで報道されたことがありましたが、新人時代に契約を取るために乗らなければ行けない話の類だったようで、似たような話は後に大スターになった女優でもよく聞きます。全体に素行が悪いとか、無茶苦茶な私生活という話は耳に入っていません。
メディアだけを見ていると演技で定評のメリル・ストリープとも違い、超有名人の奥方だったニコール・キッドマンとも違い、下積みが長かったナオミ・ワッツとも違い、長年優等生パブリシティーを続けていたメグ・ライアンとも違い、現在も優等生のリース・ウィザースプーンとも違うタイプで、これと言って凄いエピソードのある人ではありません。
外見だけを見ているとモデルが本職だっただけあって細身の体は今でもファッション・モデルで行けそうですし、お化粧と衣装も自分に合った選択をしており、現在でも現役のモデルで行けそうです。踊りも上手で、セクシーな姿が登場する作品もあります。姿が売りの女優ですので、スターという見せることが重要な職種にぴったりかも知れません。
彼女について研究したことがなかったので、元々女優を目指して手始めにモデルを始めたのか、あるいはモデルだったのをスカウトされて映画界に転がり込んでしまったのかは分かりません。映画界というのはモデル出身の女性に冷たい世界です。
マルチ・タレントと言われる人、あるいは俳優としてマルチに厳しい訓練を受けた役者は演技の他に歌も踊りもできます。ディアスはどうやらそういうタイプの人ではなかったようで、歌を歌わせるとグィニス・パートロフの正反対の位置にいる人です。パートロフは本当なら歌手になるべき才能の持ち主で、たまたま女優にもなってしまった人なのかも知れないのですが、ディアスは歌手には絶対になっては行けない人のようです。パートロフは演技もそこそこ行けるので、あとは踊りがどうかなと思っているところですが、ディアスは踊りと演技が良くて歌はダメ。才能は意外と公平に配分されているようです。
私はディアスが好きで機会があれば作品に目を通しています。ディアスが出るから見るということもあります。最近はアニメの声もやっているようなのですが、ドイツでは吹き替えです。しかし彼女は英国の俳優にあるような、声だけの力で凄い演技を見せるタイプではないので、ここをパスしてもさほど大きな損失ではないでしょう。
・ イン・ハー・シューズ
・ シュレック2
・ チャーリーズ・エンジェル フルスロットル
・ マイノリティ・リポート
・ バニラ・スカイ
・ シュレック
・ チャーリーズ・エンジェル
・ マルコヴィッチの穴
・ ベリー・バッド・ウェディング
・ メリーに首ったけ
・ 普通じゃない
・ ベスト・フレンズ・ウェディング
・ 真夏の出来事
・ フィーリング・ミネソタ
・ 彼女は最高
・ マスク
とまあ色々見ているのですが、1人の俳優の作品を半分以上網羅というのは私の場合珍しいです。まだ見ていないけれど買ってあるのがギャング・オブ・ニューヨーク。長いのでまだ手をつけていませんが、スコシージなのでいずれ見ようと思っています。
ご覧のようにさまざまな作品が混ざっています。中にはチャーリーズ・エンジェルのように姿を見せる以外に何も目的無しというおちゃらか作品もあり、役の解釈では大御所を相手にまったく引けを取らない作品もあります。不思議なことに彼女は演技派女優として数えられたことがありませんが、実は隠れた演技派と言ってもいい人です。
見せる方でもアメリカ人としては郡を抜いた趣味の良さで、私が推薦したい2作は 真夏の出来事と普通じゃないです。周囲の景色とよくマッチしている、選んだ服装のセンスがシャープなど、視覚的に楽しめる作品です。
最初から脚本を選ぶことができたのでしょうか、あるいは彼女を良く理解するマネージャーがついていたのでしょうか。役の選び方に趣味が感じられます。女優はボランティアの仕事ではありませんから金儲けはしなければなりません。そのために大スターとの共演も多々。しかしその中で上手に個性が生きる作品を選んでいます。
そして彼女の良さが特に良く出るのがコメディー。犯罪コメディーの真夏の出来事では共演者にも恵まれ、2人の男性カイテル、ゼーンとのコンビネーションが絶妙でした。同じく犯罪コメディーの普通じゃないではドイツ人が《傾いでいる》と表現するクレージーさを持った金持ち娘を演じ、貧乏青年マグレガーを翻弄。マグレガーも演技がしっかりした人で、作品は独特の雰囲気を出すのに成功しています。脇に渋い人も出ていました。まだデビュー3年目、8作目というディアスが堂々と存在感を出していました。
うわあっと驚くのが翌年の小粒の作品ベリー・バッド・ウェディング。これはちょっと前にファンタで見た Stag の大パクリなのですが、そこでめいっぱいの悪役を演じています。 インパクトの強いブラック・ジョークで、ファンタのファンにはとても楽しめますが、スターがこんな役をやって大丈夫だろうかとマジで彼女のイメージ戦略の心配をしました。どうやら問題無かった様子。私は無論贔屓している女優におもしろい役をやってもらいたいですが、当時はまだ《スターはこういう事はしない》式の不文律がまかり通っていて、その中での彼女の勇気に拍手を送ったものです。この反対側にいたのがニコール・キッドマン。キッドマンには離婚後多くの役がオファーされましたが、相変わらず優等生的な仕事ばかり受けています。
その次のマルコヴィッチの穴はベリー・バッド・ウェディングの直後で、彼女の作品選びに更に磨きがかかったなあと関心しました。彼女の傾いた作品の中でも群を抜いています。こちらも共演者に恵まれ、バランスのいいクレージーな作品に仕上がっています。これは犯罪コメディーではなく、ただのコメディーなのですが、シュールな世界での話なので、上映中は夢の世界です。
シュレック・シリーズはご存知のように風刺コメディーのアニメ。彼女はお姫様役です。この作品の共演者は超豪華ですが、全員声優。このメンバーで実写映画を作ったら凄いだろうなあと思います。元は主演2人にそっくりなアニメだったそうですが、あまり似ていて気味が悪いので現在の姿に変更になったという話を耳にしたことがあります。
チャーリーズ・エンジェルはどこに分類したらいいのか分からない妙な作品ですが、コメディーには違いありません。有名女優3人の共演なのでそのバランスを考え、あまり1人だけ目立たないようにしています。チャーリーズ・エンジェル フルスロットルでは悪役のデミ・ムーアも参加。彼女の出番も映えるような演出になっています。
とまあ、ディアスはコメディー・タッチの作品に上手に生かされているような印象を受け、彼女自身も喜んでやっているような印象です。特に本人乗り乗りでやっているなあと思えたのがファレリー兄弟の下ネタ満載作品メリーに首ったけ。共演はあのベン・スティラーです。他の共演者にも恵まれています。デビュー4年目、10作目。こうやって見ていると、彼女はスターの名声は追いかけずに作品を選んでいたのかも知れないと思えて来ます。
では彼女はコメディアンか、と聞かれると「違う」というのが一般的な答えでしょう。シリアスな作品にも出ています。犯罪が絡むことが多いです。バニラ・スカイでは嫉妬に激怒する女の役。マイノリティ・リポートには顔は出していますが、チョイ役なので、パス。そしてイン・ハー・シューズは完全なシリアス・ドラマです。
★ 靴を集める姉と自堕落な妹
姉を演じるのが演技派で定評のあるトニ・コレット。6作見ましたが主としてシリアスな役を演じています。ブスと見なされる役も多いのですが、良く見ると全然ブスではありません。目鼻立ちははっきりしていて、眉毛などが薄いので、メイクによってはっとするような美人になることも可能です。役柄からああいう地味なメイクにしているので、醜いアヒルの子の醜い時代を演じることができるのです。イン・ハー・シューズでは短いですが、素敵な髪型とメイクのシーンもあります。彼女が美人に見える1つの理由はきれいに手入れされ、栄養失調ではないだろうと思える髪の質だと思います。顔面でない部分にも気を使い、本当はかなりきれいな人です。イン・ハー・シューズでははっとするような美人の妹の反対の役なので、地味。頭が切れる独身の弁護士という役です。
逆に自堕落な美人の妹を演じるのがキャメロン・ディアス。意外なことに彼女の顔を良く見るとそれほどの美人ではありません。彼女もメイクを含めたファッションに気を配っているので、その気になれば凄い美人にも見えます。この役では美人役なのでそれらしくしています。本人は恐らく食べ物に苦労しているのではと思います。時々肌が荒れ切った写真を見たことがあります。にきびのような物が出てしまうのです。恐らくは食品にアレルギーでも起こしているのではと思います。髪もコレットより手入れが難しいのか、あるいは染めているのか、健康美人というタイプではありません。しかしそれでも全体の印象はやはり美人。
妹マギーの取り柄は姿形のみという役で、体を売りにする理由が徐々に分かって来ます。ドイツにもレガステニカーなどと呼ばれる人がいて、正書法(欧文の単語の綴りを正しく書くこと)が苦手です。この他に書かれた言語に対していくつかの症状、反応を示す人がいて、いくつかの呼び方があります。一応障害と考えられています。キャメロン・ディアスの演じている妹もそれで、計算も苦手です。
私もドイツで何人か知っているのですが、よりによってその人たちの頭はかなり良く、1人は計算の問題は抱えておらず、数学を専攻していました。なぜか日本では聞いたことがなく、単に研究が進んでいなかったのか、あるいはアルファベットを並べる言語にだけ起きるのかは分かりません。それで私はまだ障害という見方に賛成していません。この人たちの場合一般の人ができる事ができないので、社会では低く評価されてしまいますが、人間はたいてい不足分を補う能力があるので、もしかしたら図や絵を見る力があるかも知れませんし、文字で覚えられない部分を音で覚えるかも知れません。西洋人ではあるけれど漢字を使う言語を使ったら全く問題がないかも知れないのです。まだまだ研究してみると何が飛び出すか分かりません。いずれにしろこの症状は知性とは無関係で、各方面で名を成した早々たるメンバーが実はこの問題を抱えているということが欧米では知られています。
しかしマージは実は頭は悪くないのだということを自分では知らず、自分は体で勝負するしかないんだと思い込んでいます。まだ若いので男性の誘いにはほいほい乗ってしまいます。時には危ない目にも遭います。字がきちんと読めないので仕事が長く続かず、フリーターのようなことで食いつないでいます。フリーターでもトラブルが起きることがあり、何度も仕事を変えています。そして非常時には人様のお金を失敬することも。というわけで優等生弁護士の姉と正反対の人生を歩んでいました。
★ よかれが良くなかった
お父さんは再婚。新しい奥さんが強い人で、自分の娘の出る幕はほとんどありません。お母さんは2人の娘がまだ小学校ぐらいの時に自殺。妹には交通事故とだけ知らせてありましたが、その事故は自殺が原因で起きています。自殺の理由は間もなく精神病院に収容されそうだったから。
それまで彼女は自分の母親、と言うことはマギーとローズの祖母、に薬漬けにされていました。そうでないと突飛な事をするからです。心配し過ぎた祖母は娘を薬でコントロールした方がいいと考え、結婚もしない方がいいと考えていました。それにも一理あるのですが、判断が難しいテーマです。なぜなら彼女は自分の2人の娘をとても愛しており、ある程度は家庭生活もやって行けたからです。しかし時々変わった行動もありました。 夫になった人は家庭生活反対の祖母と自分の妻の間にはさまれ、妻を取りました。そのため妻の自殺で2人の関係はこじれにこじれ、その後一切関係を断わってしまったのです。そのためローズとマギーは自分に祖母がいることを知りませんでした。
★ 切れてしまった日
ある日普段は冷静なローズが自分の恋人とベッドにいた妹に切れてしまいます。滅多に男性とロマンティックな関わりのなかったローズに取っては特にひどい出来事です。妹思いでありながら教育者風の接し方になってしまうローズを疎ましく思うマギー。見ていて納得できる関係です。結局無一文で路頭に迷ったマギーは偶然発見した手紙を頼りに、死んだはずのおばあさんを訪ねます。
★ 死んだはずだよおばあさん
祖母のエラは娘の死後何度も孫に手紙を出していたのですが、義母の家で止められ本人の手に渡っていませんでした。マギーはそれを発見し、住所を頼りにアメリカを一路南へ。フロリダ州へやって来ます。エラは金持ちのための養老院のような所に住んでいます。他の住民に比べかなり元気で自立した人です。
思いがけない孫の訪問に大喜びのエラですが、それと共に当時の問題も浮かび上がって来ますし、現在のマギーの様子もあまり感心しません。そこでエラはマギーに老人の世話をする仕事を与えます。いつも緊張状態のローズと違い、エラ相手でマギーは少しずつ自分の抱えている問題に目を向けるようになります。地味な看護人の制服でも嫌でなくなり、徐々に仕事を覚えて行きます。若いピチピチした子が入ったというので養老院の方も大喜び。
人間関係では経験の多いエラはマギーの胡散臭さをかぎつけていますが、自由に泳がせています。かつて娘に対してした事が全て正しいわけではなかったと感じているエラは、マギーの面倒を見ることで埋め合わせを試みます。
★ ローズの方は逆に
同僚と寝るとういうのはあまり利口な方法ではありませんが、ローズはどうも長い間ストレスの多い仕事をしていて、自信を失う時期に入っていたようです。その同僚との痴話喧嘩になってしまい、取り敢えずは法律事務所を長期間病欠。しかし同僚の間では噂になっていました。ところが仕事関係で知り合ったサイモンが彼女に惚れ込んでしまいストーカーかと言うほど追って来ます。
これまで高給を取り頭ばかりを使う仕事をしていたローズは、犬の散歩請負という全く今までと逆の仕事を始め、結構楽しい気分に浸っていました。町を行く普通の人と言葉を交す楽しみを知ったのです。(私からもお薦めです。うれしい気分になります。)
彼女が今そんな事をしていることまでかぎつけたサイモンは猛烈なアタックで婚約に持ち込みます。ところが親戚との付き合いが始まったとたんに破綻してしまいます。
ここでこんなひどい事をする人がいるのか、映画や小説だけの世界だろうと思えるような、信じられないような方法でローズはいじめを受けます。実はいるのです、こんな事をする人が。長く生きているとそういう事を身近に見ることもあります。彼女は人生にノックダウンされたような気分になります。それで彼女も一路南へ。祖母を訪ねたところで当然ながら妹ともばったり。
まずは喧嘩になります。しかしすでに心を安定させることに成功したマギー。ローズも祖母を訪ねる前からそれまでの路線を離れつつありました。というわけで両極端だった2人はそれぞれ変わり始め、最後はもちろんハッピーエンド。
★ 見て損はない
原作は女性。私は読んでいませんが、演出は木目が細かいです。ディアスが姉妹喧嘩をしたけれど、マックレーンがうまく収めたというだけのストーリーですが、よく考えると、問題を抱えた娘に結婚を許すかどうかというのは深刻なテーマです。親が勝手に決めていいのか、難しく思えてもチャンスはあるかも知れない、など自殺した母親がちょうど結婚する時期だけで1本の映画が作れるぐらいです。その辺を重く、湿っぽくせず、いつも脱線気味のマギーという役をディアスが上手く演じています。
やはり私はディアスならコメディーを見たいので、この作品はいささかヘビーな印象を持ちましたが、改めて彼女の演技力に感心したという意味ではよかったです。
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