動物のページ

クヌートの養父の訃報 /
Knuts Vater ist tot 2

1963年ベルリン生まれ

登場人物・動物

トーマス・ドルフライン
(クヌートの育ての親)

クヌート (元小熊)

考えた時期:2008年9月

クヌートの親父さんが急死。クヌートはすっかり成人サイズに成長していますが、まだ生まれて2年にもなりません。母親に放り出され、養父に死なれ、本当に運の悪い白熊君です。400万人のベルリン人はクヌートが大好きなのですが・・・。

急死に驚きだらだらと書いてしまいましたが、ちょっと整理しておきました。続報はこちら。

★ トーマス・ドルフライン氏の急死

トーマス・ドルフライン氏は死亡時44歳。25年来当時の西ベルリン中央駅に当たる動物園駅の真横にある動物園でずっと飼育係として働いていました。成人した息子が2人いて、死の直前までは小学生ぐらいの子供のいるガールフレンドと3人暮らし。クヌートが赤ん坊の時は動物園内のアパートに寝泊りしていました。

正確な死亡日時は分かりませんが、9月22日の新聞に報道が出ています。当初から自殺、他殺の形跡はゼロと警察発表があり、念のため行った解剖で心臓が血栓で止まったと確認されています。

新聞によるとその直前に訪ねた友人の家で心臓のあたりを押さえ痛そうにしていたとの話、医者に行ったとの話があるそうです。また、長年病気を抱えていたとのこと。太っていたわけでもなく、スポーツマンタイプの体型なので、ちょっと驚きました。その他に癌を患っていたという報道も出ています(事実のようです)。あれこれ報道されていますが、死亡時の直接の原因が心臓だったことはほぼ間違いないようです。

高校卒業ぐらいの年齢から動物園勤務を始め、1987年からは熊や狼など噛み付きそうな動物の世話を担当しています。

★ 地味な人の重い運命

クヌートの出来事で自分も世界的なスターになってしまったドルフライン氏ですが、そういう騒ぎが好きな人ではなく、山のように届けられる結婚の申し込みの手紙には戸惑った様子。あまり社交的な印象を与える人ではなく、ドイツ人としては珍しくクリスマスや大晦日も動物園に篭ってクヌートと過ごしていたそうです。ギターを弾いてやったり、病気の時は寝ずの番をしたり。

しかしながら熊は人間の子供よりずっと成長が早く、1年も経つと子供でありながら体だけは成人、いえ、成熊。動物園はドルフライン氏に万一の事があっては行けないと考えたようで、クヌートとじゃれるショーは終了。その後発病(癌?)したらしく、4月に4週間休暇を取っています。園長命令でクヌートに直接近づいては行けないことになっていたようですが、フェンスの向こう側から見ることはあり、ほとんど毎日クヌートに会いに来ていたドルフライン氏。

ドルフライン氏の死後報道はほとんど氏の話で埋め尽くされていますが、クヌート自身は昨日訪ねて来なかったドルフライン氏、今日も来ないドルフライン氏を記憶しているのでしょうか。野生ですと世話をしてくれた人の事はきれいさっぱり忘れてしまうそうです。もしクヌートがドルフライン氏を恋しがったら、ベルリン版忠犬ハチ公です。

★ 黒い白クマ

上に黒いボックスをつけたのは訃報だからでもありますが、実は今日のクヌートは毛皮が薄くなり真っ黒。太った犬のように見えます。白くて厚い毛皮は雪の国に住む時に自分を守るため。今年のベルリンは猛暑期間はそれほど長くありませんし、9月に入ってからは日本の晩秋のような寒さですが、北極よりは暖かく、氷点下でない所であの白熊の毛皮では厚過ぎます(暑過ぎます)。

レディー・ダイが亡くなった時英国人はケンジントンに花束を持って押し寄せましたが、ベルリンでは人々が花を持って動物園の入り口に来ています。ヒステリーは起こしておらず、皆静かに悲しんでいます。私も「あれは演出だ」と分かり切っていても、やはりクヌートと戯れるドルフライン氏を見て微笑まずにはいられなかった1人。双子の弟に死なれ、母親に見捨てられ、養父に先立たれ。せっかくいい父親にめぐり合いハッピーエンドかと思った矢先の訃報でした。

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