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2008 Schweden 114 Min. 劇映画
出演者
Kåre Hedebrant
(Oskar - 少年)
Lina Leandersson
(Eli - 吸血鬼)
Per Ragnar
(Håkan - エリの食料調達係)
Henrik Dahl (Erik)
Karin Bergquist (Yvonne)
Peter Carlberg (Lacke)
Ika Nord (Virginia)
見た時期:2008年8月
主催者ご推薦のちょっと毛色の変わった吸血鬼物をご紹介します。製作国はスウェーデン。スウェーデンはたまにファンタにテレビ・ドラマ的な犯罪物の作品を送って来ますが、吸血鬼は珍しいです。
舞台は全く普通のスウェーデンの都市。主人公たちは普通の公団住宅のような所に住んでいます。オスカー少年は12歳。近所に住むエリに恋をします。エリは年齢不祥ですがオスカーに合いそうな年頃に見えます。父親と2人暮し。健康上の理由で日中太陽に曝されることはご法度らしく、夜の方が活動的です。
だからと言ってすぐエリが吸血鬼と決めることはできません。私もちょっとした事故の後、日中の行動は今まで通りにはなりませんし、今年ファンタに来たスペインの Eskalofrio には日光アレルギーの少年が登場します。ドイツの元首相の夫人も晩年日光アレルギーに悩まされたという話を耳にした事があります。私は吸血鬼ではありませんし、首相夫人もバンパイヤだったとは聞いていません。
しかしエリにはその他にも吸血鬼らしい特徴があり、例えば人に招かれないと部屋に入れません。オスカー少年と付き合って行くうちにやはりエリは吸血鬼だとばれて来ます。年齢はどうやら200歳ぐらいらしく、父親だと思われていた人はエリの食料(血液)調達係だったのです。
そこまでばれてしまってもエリはオスカーには食いつきません。ああ、これぞ純愛。
原作は John Ajvide Lindqvist の小説で、スウェーデンでは良く売れたそうです。脚本にも関わっています。そのためか語り口に統一が取れています。
エリが吸血鬼だとオスカーが気づいたのはすっかり恋をしてから。オスカーは両親が離婚し、学校では苛めに遭っているため、エリだけと理解し合えるのです。エリも父親と2人暮しとオスカーは信じていました。
エリの父親に見えるハーコンは夜な夜なエリの食料調達のために町へ出て行きます。人を殺して血をカニスターに入れて戻るのですが、時々失敗をして上手く行かないこともあります。町には次第に死体の山が。連続殺人事件として警察も動き始めます。2人はまた引っ越さなければ行けなくなるかも知れません。
ってな具合にエリの日常生活、オスカーとの友情、恋、2人の新たな人生などが実に静かに描かれます。静けさがこの作品の個性です。舞台は労働者階級の人が多く住むアパートのある街角。ホラー映画としてはちょっと珍しい設定です。ブロックバスターやえぐいホラーなどをたくさん見てしまった後で Låt den rätte komma in を見ると少しほっとします。
12歳のオスカーと12歳に見える200歳の少女エリの運命はいかに。オスカーがエリの面倒を見るという形で終わるので、オスカーは殺人鬼になるわけです。そして1箇所に長く留まると次々殺人事件が起きることになりますから、ちょくちょく引っ越さなければなりません。どう見てもハッピーエンドとは言えませんが、そんなことは気にもかけず、2人は手に手を取って家出。
この結末に全く違和感を感じないような作りになっていて、観客は勝手に納得して家に帰ります。まてよ、オスカーの人生はとんでもない事になっているんじゃないか・・・と誰も考えません。
1箇所だけ派手なシーンがあります。吸血鬼に食われてしまったことを悟った女性が病院に収容されるのですが、自分がどういう事になったのかを理解しており、決心もついています。医師や看護人がまだ状況を理解しないうちに、頼んで病室のカーテンを開けてもらいます。そこから差し込む日光で彼女は大火事を起こし、焼け死んでしまいます。
これも良く考えてみると不思議な話です。ブラム・ストーカーの原作を読んだことがあるのですが、吸血鬼に食われて自分も吸血性を帯びてしまった人は夜行性になります。血を求めて自分も町をさまよったりします。食われっぱなしの人は静かに自宅で強い吸血鬼がやって来るのを待ち、最後の1滴まで血を吸い取られて死んで行きます。自分の方から日光に当たって自殺という話は見たことがありません。
この吸血話は実に静かに進行しますが、ちゃんと見ていないと、ころっと騙されます。
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