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2008 J 12 Min. アニメーション
台詞無し
見た時期:2009年2月
オスカーに5回ノミネートされ、受賞4回。うち短編ノミネート4回、受賞3回。5作のうち4作がウォレス&グロミット関係。受賞、ノミネート作全部見ましたが、できがあまり良くなかったのは長編1本のみ。受賞が決まったのがつみきのいえです。
私はアニメは大好きではないのですが、良い作品は大好きになってしまいます。良い作品にぶち当たるためには見ないとダメ。ですから機会があると見ます。井上さんも良質のアニメを知っている方で、何とあの星新一のショートショートがアニメになっていることを知らせてもらったりしました。ファンタでも短編特集を見るのは、中に良質のアニメが入っているからです。
★ なぜフランスなのか
受賞が先に決まったのがつみきのいえ。おくりびとが後に続きました。ところがなぜかタイトルがフランス語で、以前の自転車レースのアニメを思い出させるスタイルです。お金を出したのも日本1国のようなので、なぜフランス語が絡むのかが分かりませんでした。フランスで何か賞を取っているらしいのですが。
描かれている内容からは《日本だ》というフレーバーは全く伝わって来ませんでした。違和感を抱くほど日本風な所の無い作品です。ですから参加国がフランスだと言われても、作者がフランス人だと言われても信じてしまえます。どういう形でフランスが関与しているのか、何かしらのサポートがあったのかなどについては全く情報が入っていません。ちょっとした謎です。
★ 地球温暖化か
僅か12分の中に描かれているのは孤独に暮らす老人、周囲が水没している町、過去の家庭の思い出などで盛りだくさんです。地味で静かな描写で、大人向きの作品です。
冒頭は1人で古いアパートに暮らす老人の日常。壁には写真がかけられていて、いろいろ思い出のある人なのだなあと察しられます。外を見るとどの家も水没していて、てっぺんだけ残っています。家の中にも水が迫って来ていて、床の扉を開けると下は水。ある日ひょんなことでいつも使っていたパイプを落としてしまい、潜水服を着て取りに行きます。下の部屋、さらに下の部屋と降りて行くうちに、まだ水がここまでの高さになっていない頃、若い頃のことを思い出して行きます。
水がなぜこんな高さになってしまったのかは説明されません。しかし家の外で老人はレンガを積み重ねており、思い出のシーンでも同じ事をやっていました。水が増えるに連れ上の階に上って行ったことが分かります。思い当たるのは当然ながら地球温暖化。若い頃は家族があり、妻がおり、時が経つに連れ別れがあり、死別もあり、今日に至ったという物語です。
★ 地球は温暖化しているのか
私は学者でない上、地球の隅々まで旅して回るというわけには行かないので、地球が温暖化しているのか寒冷化しているのかは判断できません。冬なのに雪の無い年もあれば、今年のように結構頻繁に雪になる年があり、本を読んでも温暖化が進んでいるという話もあれば、地球は行ったり来たりを繰り返して来たのだから慌てることではないという論調があり、どちらが正しいのか判断ができません。言っているのはどちらも専門家であるはずの科学者。
また、温暖化すればこれまで凍土だった地域も畑にできるから却って良いのだという人もいれば、氷が解けて水が増えれば、陸が減るという話もあります。私が自分でどちらが正しいかを確認できる見込みは無さそうです。素人の私でも思いつくのは、木を伐採したらすぐ次を植えればいいじゃないかとか、二酸化炭素が増えて困るんだろうか(二酸化炭素を吸った植物は酸素を出すんじゃないか)などという点。まずいと思えるのは森の木々を伐採して禿山、禿地にしてしまうこと。アマゾン地域で巨大な規模で木が伐採されていて、アフター・ケアがされていない様子を報じたドキュメンタリーを見たことがあります。温暖なアマゾン地域なら特にややこしいケアをせずとも種をまくだけで何かしらの助けになるのではと素人は考えてしまいます。禿山、禿地にしてしまうと次に待っているのは砂漠化。昼はカンカン照りで灼熱、夜は氷点下という世界が待っています。
南米で新しい畑の作り方を紹介した報告を見たこともあります。普通の畑ですと一種類の作物を広い地で育て、収穫するのですが、新しい方法では畑と言われた場所は森のようで、そこいら中に様々な種類の違う果物が生っていました。籠を持って畑の主が森に出かけて行ってマンゴーの収穫時にはマンゴーを、バナナの収穫時にはバナナをとっていました。畑の土に取っては一種類の物をバーっと育てるより、より自然に似せた森形式の方がいいのだそうです。
木を伐採した後畑にする場所もあるようなのですが、その時にこの方法にすれば新しい森を作れ、そこの植物は酸素をたくさん吐き出すので、色々な面でメリットがあるのではなどとため息をついていました。一部では実現していますが、どの程度の人たちが後に続くのか心配しながら見ています。
欧州でも国によってかなり差があり、ドイツに住んでいると地球は緑で森がたくさんあるという印象を受けます。ベルリンは4百万都市ですが、町を歩いていると時々中心地で大きな森に出くわします。ビルやアパートばかりの地区でも通りには必ず数メートルおきに木が立っています。嵐が来て折れてしまうと速やかに市の係員が来て新しい木を植えて行きます。それほどお金と人を使って緑を保つ努力をしています。EUにはそこまで手が回らなかったのか、それほど森に執着が無かったのか、入国するとかさかさに乾いた雰囲気の国もあります。ドイツは緑化に関しては先進国で、《他が何を言おうが森を守る》という決意が見られ、一般人でも緑の様子に詳しい人がいます。税金がそこに使われることを好ましいと思っている人も多いようです。
もし二酸化炭素が温暖化に関連しているのだとすれば、私は森を守るのに賛成します。温暖化と関係が無くても森が私たちが寝ている間にたくさん酸素を放出するのなら賛成。私がドイツに来て1番正しいと確信したのは、散歩。大昔森を歩こうというポピュラー音楽が世界中に流行りましたが、子供の時から散歩を勧める身内に囲まれていた私は、ドイツ人の方針に違和感が無く、すぐ乗ってしまいました。
温暖化の話は風が吹けば桶屋が儲かる式に見え、今一つ素人には関連が分かりにくいのですが、もし本当に二酸化炭素が増えることが温暖化に関連し、極地の氷が溶け、水位が上がり、この老人がフランスでレンガを積み重ねて上へ上へと避難しなければ行けないのなら、森を増やしたいです。
本音を言うと温暖化と無関係でも森は増やしたいです。
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