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2005 USA 140 Min. 劇映画
出演者
Christian Bale
(Bruce Wayne - 青年実業家)
Gus Lewis
(Bruce Wayne、子供時代)
Linus Roache
(Thomas Wayne - ブルースの父親)
Sara Stewart
(Martha Wayne - ブルースの母親)
Michael Caine
(Alfred Pennyworth - ウェイン家の執事)
Morgan Freeman
(Lucius Fox - ウェインの会社の技術担当者)
Katie Holmes
(Rachel Dawes - ブルースの幼馴染)
Emma Lockhart
(Rachel Dawes、子供時代)
Sarah Wateridge
(Dawes - レイチェルの母親)
Gary Oldman
(Jim Gordon - 警部補)
Ilyssa Fradin
(Barbara Gordon - ジムの妻)
Liam Neeson (Henri Ducard - 武道の師匠)
Cillian Murphy
(Jonathan Crane - 悪漢医師、別名スケアクロウ)
Tom Wilkinson
(Carmine Falcone - 町のボス)
Rutger Hauer
(Earle - ブルースの父親の死後会社を管理している重役)
渡辺謙
(Ra's Al Ghul - 闇組織影の同盟の頭目)
見た時期:2008年10月
大分前に書き始めた原稿です。暫く時間が取れず置いたままになっていました。
★ またしても漫画の映画化
漫画の映画化の中ではかなりシリアスに作られていて、大人の鑑賞に耐えるというより、元から大人向きと言えます。
バットマンもDCコミックの代表作の1つで、初登場は1939年。かなり伝統ある物語です。当時はまだDCコミックというのは無くて、探偵漫画(Detective Comic)という雑誌でした。当時のライバルはスーパーマン。バットマンは複数の人の合作で、製作の主要な人物としてボブ・ケーンの名前が挙げられます。
元々は紙に刷った漫画なのですが、映画化、アニメ化などが行われており、40年代、それも1つは戦前に作られています。戦後は私も見たアダム・ウェストのテレビ・シリーズなどがあります。テレビのアニメ・シリーズは何度か作られています。
劇場映画として定期的に作られるようになったのは1989年のティム・バートンからです。偶然か意図したのか、2作作ると監督が変わり、現在3人目、6本目が完成しています。私が最初に見たのは1997年のバットマン&ロビン、次が1989年のバットマン。ペンギンに記憶があるのでもしかしたらバットマン・リターンズも見ているのかも知れませんが、内容ははっきり覚えていません。見ていないかも知れません。
★ 悪役に気合が入っているシリーズ
今月に入って見たのが最新のダークナイト。ダークナイトの出来の良さにぶっ飛んで慌ててDVDを借りて見たのが2005年のバットマン ビギンズ。順番はめちゃくちゃになってしまいました。
主演も監督と一緒に交代すれば分かり易くていいのですが、シューマッハーの時にはヴァル・キルマーとジョージ・クルーニーという、今考えてもなぜ選ばれたのか分からないようなスターが起用されています。クリストファー・ノーランになってから初めて出演者がそれなりに役柄にフィットするキャスティングになっています。
悪役が主演と同じぐらいに重要な作品なので、チラッとそちらに目をやると、ジャック・ニコルソンのジョーカー、ダニー・デ・ビートのペンギンとクリストファー・ウォーケンのマックス・シュレック、トミー・リー・ジョーンズのトゥーフェイスとジム・キャリーのリドラー、 アーノルド・シュヴァルツェンエッガーのフリーズ、ライアム・ニーソンのヘンリ・デュカード、ヒース・レジャーのジョーカー。どちらかと言うと、悪役の方が気合が入っていたのかなとすら思えます。
★ 突然舞い込んだ幸運
懸賞に当たったので見に行ったのが最新作。チャンスがあれば見たいと思っていましたが、ファンタでかなりの数の映画を見た後なので自分の方から積極的に映画館へ行って切符を買って見るというところまで食指が動きませんでした。いつか大バットマン・ウィークを決めて、近所のDVD屋さんから大量に借りて見ようとは思っていました。そうなると、最新のダークナイトがDVDとして発売されるまで待つことになり、あと数ヶ月は先の話になるだろうと思っていたところへ舞い込んだ幸運です。
驚いたの何のって。皆さんにはピンと来ないかも知れませんが、私はすぐ翌週の映画の日に格安の切符を買ってもう1度見ようとすら思ったほどです。1年に3桁の作品を見る上、映画館で見ることも多いので、同じ作品を2度見ている暇などはないのですが、そんな中でもう1度見たいと思わせるほど説得力のある作品でした。
で、すぐ借りて来たのがバットマン ビギンズ。こちらもとても良くて、劇場で見なかったことを悔やんでいます。普通に考えればバットマン ビギンズを先に見て、その後ダークナイトを見ると話が上手く繋がりますが、逆でもそれほど困りませんでした。ダークナイトのような展開になるには裏にこういういきさつがあったんだ・・・という解釈でも見ていられます。
というわけで見る順番が逆になってしまいましたが、ご紹介する時は普通の順番で行きます。
★ 全体の枠
一連のスーパーヒーロー物で、勧善懲悪のヒーローが活躍して回る話ですが、その辺の単純な物語とは違い、主人公の葛藤に重点を置いています。
重要なのはウェイン一家。科学者の父親は大企業の持ち主。息子のブルースは、両親、幼馴染のレイチェル、忠実な使用人などに囲まれて幸せに暮らしていました。お城のような大邸宅に住んでいたブルースはある日幼馴染のレイチェルと遊んでいた時に井戸に転落。そこで大量の蝙蝠に遭遇しショックを受けます。この思い出がきっかけで蝙蝠に恐怖を抱くようになります。
ある日両親と一緒に行った劇場で、演目に蝙蝠が登場したため終わりまで見ずに帰宅。ところが劇場を出た直後暴漢に襲われ両親がブルースの目の前で射殺されてしまいます。
まだ小学校ぐらいの年齢で両親の全財産を相続。思慮深い執事の世話を受け成人。しかし両親のことが吹っ切れず、両親を殺した男の裁判にピストルを持って出向き復讐をする予定でした。ところが誰かに先を越されてしまいます。
その後放浪の旅に。色々彷徨った挙句にたどり着いたのがチベットとそっくりのヒマラヤの山奥。そこで出会ったアジア人のグル、ヨーロッパ人の師匠。武道の訓練を受け、精神的な鍛錬を経、それなりに考えるところもあって帰郷。
故郷は不正がまかり通る腐敗した町に変貌していました。そのど真ん中に位置するウェインの会社。彼はその会社の持ち主。以前は父親が経営し、町のためにもつくしていました。父の死後ブルースは子供だったこともあり、他の人に会社経営を預けていました。戻ってはみたもののいきなり経験も無くトップに行くのは止め、取り敢えず科学部門へ。実はその裏には個人的な方針がありました。
元は重役の1人だったルシウス・フォックスはブルースの父親の死後窓際族。開発部門にいますが、作った製品は実用化されずお蔵入りが続いていました。そこへふらりと現われたブルースは役に立ちそうな物を提供されます。あれこれ試してみます。これで蝙蝠装束完成。
その後夜な夜な外出し、悪を退治して回る習慣が始まるのですが、秘密を知っているのは執事。何かありそうだと悟っているのがフォックス。そして町で孤立しながら悪と戦っている刑事ゴードンにバットマンは時々有力な情報や悪党をプレゼント。もう1人信用できそうなのが幼馴染のレイチェル。検事になっています。
★ といった枠で話が始まる
バットマン ビギンズの前半は悪党退治ではなく、ウェインの成長記。そこで登場するのが怪しげなグルとブルースを訓練するヘンリ・デュカード。彼にはしたたか哲学も叩き込まれます。しかしどこか自分の考えるところと違うなあと思うブルース。前半のオトシマエはチベットの寺院のような建物の火災と、死にかけるデュカードを助けるブルース。
★ ロビン
・・・は出て来ない。
★ 町の騒ぎ
父親ウェインの死後町にはマフィアがはびこり、ボスのファルコーネは闇の事業に必要な役人、警察等などを買収するなり脅すなりして、権力をすっかり手中に。ちょうど今はスケアクロウと呼ばれる怪人でもある医者のクレインがファルコーネとドラッグの取引中。
それにとどまらず、ファルコーネがチンピラに見えるような大悪党が登場。かつては師匠だったデュカードとそのグル。ファルコーネのように町を支配したいのではなく、町を混乱に陥れ破壊してしまおうという魂胆です。迎えうつはバットマン、執事、フォックス、レイチェル、ゴードン程度。少ないですねえ。狙われたのは町の水道。武器は幻覚を起こし精神が錯乱する薬品。こんな物を市民にばら撒かれたのでは収拾がつかなくなって・・・という恐怖。
勧善懲悪シリーズなので当然ながら正義が勝つという形でオトシマエがつくのですが、なかなか現実的な話が多く、大人の鑑賞に十分耐えます。
★ 順序が逆でも楽しめる
良く考えると結構単純な話なのですが、脚本が良く、十分にややこしそうに見え、ハラハラするような出来です。上にも書いたように先に最新のダークナイトの方を見てしまいました。しかし問題は無く、さすがにメメントの監督だなと感心しました。
★ 悪役と善玉の入れ替え
珍しいことにゲーリー・オールドマンが善人の警官を演じています。種も仕掛けも無く、ちゃんと最後まで善人です。
これまた珍しいことにこれまで悪役を見たことが無かったライアム・ニーソンが深みのある悪役を演じています。髪型を変えただけでなく、視線も身のこなしもすっかり違い、これまでのヒューマンといった雰囲気は全部消しています。この入れ替えは映画ファンに取ってはとても楽しいです。2人とも喜んで演じているらしく、役にフィットしています。
後記: 何とニーソンの夫人がスキーの練習中に頭を打って死亡。初心者コースでトレイナーからはヘルメットをかぶるように言われたそうです。たまたまかぶらなかったそうで、転倒。その時は大丈夫と思ったそうですが、ホテルに帰ってから頭痛が激しく、それでも人に言われてやっと入院。間もなく死亡。
「(自転車に乗る時)ヘルメットは必ずかぶれ」とドイツ元首相の夫人で、その後死亡したハンネローレも常日頃言っていました。スキーやスケートのトレーニングの時も特に初心者はヘルメットがある方がいいです。聞くところによると、同じ強度でぶつかってもヘルメットをかぶっているとかなり打撃が弱くなり、死亡するところなら重症、重症のところなら軽症になるそうです。
それに比べるとちょっと間が抜けていたのが渡辺謙。ハリウッドに招かれたチャウ・ユン・ファと似て、ただ姿を見せているだけ。世界から国際俳優としての評価を受けていると聞いていましたが、その手の作品で渡辺謙を見たのはこれ1つ。「あれだったらチャウ・ユン・ファでもユル・ブリンナーでもベン・キングスレイでも変わらないんじゃない」と言いたくなってしまいました。
★ アイアンマンと似ている
どことなくアイアンマンと似ている部分があります。ロバート・ダウニー・ジュニアは元々は無反省の武器製造コンツェルンの社長。本人も発明をやります。ひょんな事から立場が逆になり、武器商人と敵対することになります。その後アイアンマンという仮の姿で町に現われ悪人をやっつけて回るというのが大まかなストーリーです。
バットマンは元々善人なのですがウェイン家は超大企業。町の中では全ての権力を手中に収められるぐらいの規模です。ただ両親の代では慈善の重要さを認識して町に尽くしていました。ですからブルースは良家のお坊ちゃまで育っています。その彼が成人して悪と戦い始めるのですが、アイアンマンもバットマンも中身は生身の人間。スポーツ万能でも怪我はします。
もう1つ共通しているのは2人とも大企業の後継ぎで、本来会社は彼の物でもあるのですが、経営を任せている者がアイアンマンやバットマンの意向と違う行動を取る点。それを取り返す部分もストーリーに入っています。
違うのは性格描写。アイアンマンには自分が今までやって来た事を反省し・・・の件があり、これでいいんだと思っていた男がそれなりに苦悩し、結論に達するのですが、バットマンは元から根暗なイメージで作られています。ダウニー・ジュニアの本職がコメディーで、秘書のパートロフがこれまた意外にもコメディーのセンスがあるため、全体がコメディーになっています。それに比べバットマンはシリアスな面が強調されています。
根暗そうな俳優ベイルはウェインに良く合っています。キルマー、キートンも力のある俳優で、ちょっと暗いイメージを引きずる・・・というのには向いています。キートンにはダウニー・ジュニアに負けないぐらいのコメディーのセンスもあります。クルーニーはちょっと外れているような感じでした。ですから監督を変えず、ベイルで2作撮ったのは良かったと思います。今後3作目も作るのかなと考えてしまいます。ノーラン、ベイルのコンビでバットマンというのは上手く行ったと思え、3作目も脚本がうまく書けていたらマンネリにならずに済むのではと思っているところです。
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