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2009 USA 96 Min. アニメ
(Coraline Jones - 小学生)
(Mel Jones 1 - コララインの本当の母親)
(Mel Jones 2 - コララインのパラレルワールドの母親)
(Charlie Jones 1 - コララインの本当の父親)
(Charlie Jones 2 - コララインのパラレルワールドの父親)
(黒猫)
(Wyborne Lovat 1 - 近所の少年、コララインの住む屋敷の持ち主の孫)
(Wyborne Lovat 2 - パラレルワールドの近所の少年)
(April Spink 1 - 同じ屋敷の住人、元サーカスのブランコ乗り、レビューのスター)
(April Spink 2 - パラレルワールドのエイプリル)
(Miriam Forcible 1 - 同じ屋敷の住人、元サーカスのブランコ乗り、レビューのスター)
(Miriam Forcible 2 - パラレルワールドのミリアム)
(Sergei Alexander Bobinsky 1 - 同じ屋敷のロシア人、元アクロバット)
(Sergei Alexander Bobinsky 2 - パラレルワールドのボビンスキー)
(幽霊少女)
(幽霊少年)
(背の高い幽霊少女)
見た時期:2009年12月
★ ゼーリック監督
ナイトメアー・ビフォア・クリスマスの監督が作ったアニメ長編です。アニメ制作は非常に手間のかかる仕事。ゼーリック監督は手を抜かない凝り性なので、作品数は少ないです。私はナイトメアー・ビフォア・クリスマス、三年後のジャイアント・ピーチとコララインとボタンの魔女 3Dしか見ていません。最初の作品は1981年、9分の短編。次はテレビ用の6分の短編。その次が堂々の長編アニメのナイトメアー・ビフォア・クリスマスです。ハロウィンとクリスマスを題材にしたユーモアたっぷりの作品で、いきなりゼーリックの名前が世界中に知れ渡りました。原案、制作はティム・バートン。なので、ナイトメアー・ビフォア・クリスマスにはバートンの趣味が大きく生かされているのかと思っていました。
次の作品ジャイアント・ピーチもバートンとのコンビで、しかも原作はパトリシア・ニールの前亭のロアルド・ダール。ただこの作品をかなり前に見たのであまりはっきりした記憶が無く、何となく「子供向けの明るいアニメだったなあ」という印象だけが残っています。もしかしたら個性があったのかも知れませんが、可愛い絵だけが記憶に残っています。
その次に見たのがコララインとボタンの魔女 3Dで、ナイトメアー・ビフォア・クリスマスとの共通点を多く発見しました。ジャイアント・ピーチの後にも長編と短編がありますが、見ていません。長編はいずれ見ようと思っています。
★ バートンとの共通点か
バートンと組んだ作品は長編2本。怪奇の色の濃いナイトメアー・ビフォア・クリスマスは、その後のバートンの作品と比べてもいかにもバートンらしい印象です。なので、私はあのスタイルはバートンから発しているのだと思っていました。
コララインとボタンの魔女 3Dにはバートンは関わっていません。全く別な作家の作品を題材にしています。しかし全体の雰囲気としてナイトメアー・ビフォア・クリスマスを思い出させる要素がたくさん入っています。ナイトメアー・ビフォア・クリスマスはバートンが物語や登場人物を作り出していますが、目に見える部分はゼーリックの力によるものが大きかったのではないかと考え直したところです。
コララインとボタンの魔女 3Dにはバートンの作品に見られるちょっとダークな、しかしえぐくないユーモアがあります。どちらかが真似をしたというより、たまたま趣味の似たクリエーターが知り合いになり、お互い理解し合ったのかも知れません。
ゼーリックというのはバートンと全く違う姿の人で、そのままの姿を見るといかにも退屈そうなおじさんです。ところが内側にあふれるユーモアを蓄えていて、どうしてもいたずらをせずにいられない性格のようです。2009年の映画なので、まだ劇場で見るチャンスもあるかも知れませんが、良ければDVDを借りてご覧になり、その後メイキング・オブを見ると楽しさが倍増します。
コララインとボタンの魔女 3Dの原作を書いた人物はバートンをちょっと太らせたようなもさっとしたお兄さんで、外見からはこんな色々考えた作品を書くようには見えません。半分居眠りをしながら通りを歩きそうなボーっとした外見の人物です。人は見かけに寄らないという典型的な例です。
★ これから3Dが流行りそうですが・・・
コララインとボタンの魔女は3Dだというので、DVD屋さんから赤とグリーンの眼鏡も貸してもらい見始めましたが、間もなく頭痛。なので2Dに切り替え、色眼鏡無しで見ました。2Dでも十分見ごたえがあります。見所満載なのでゆっくり時間を取り、手近な所に飲み物や食べ物を用意してじっくり見て下さい。
★ パラレルワールド
ドイツにはパラレルワールドのファンが多く、私も身近に本気でパラレルワールドとの間を行き来しているつもりの人を知っていました。その人のように本気でなくとも、パラレルワールドにあこがれたり実際にあればいいのにと考えている人を何人も知っています。
私は日本人なため、そういう話には馴染めず、時には喧々諤々の議論になってしまったりします。日本人は天皇が私たちのために心を痛めたり、成功を祈ってくれたりするので、パラレルワールド無しでやっていけるのかも知れません。天涯孤独の人や、身内が皆災害で死んでしまった人でも、誰かがその人を気にかけてくれていると感じると心が安まり、生きる力が得られるのでしょう。
私自身あることで15年ほど前天皇の果たしている役目に気づくことがありました。現金なものでそれ以来天皇と皇后は私の中では天皇陛下と皇后陛下です。千代田に足を向けて眠れないとかの類の話ではなく、「気にしてくれる人がいたんだ」と知り、気を取り直しただけのことです。その「だけのことです」の部分が大切で、いい国に生まれたなあと思ったものです。何か尋常でない事が起きた時、時間は昨日、今日、明日と続いて行くのに、《今日》の一点で止まってしまいます。その人をまた昨日、今日、明日という自然な流れに戻してくれる役目を果たしておられたことに気づいた次第です。
いくらか気持ちが晴れ、私はパラレルワールドを必要としませんでした。こちらにいて、パラレルワールド信奉者を見ていると、人生に絶望していて、それを絶望と気づかず、パラレルワールドに入ることで慰められている人が多いと感じました。一時避難として入るのならいいのかも知れませんが、こちらに戻って来られるかが問題です。
ドイツ人の最大の敵は孤独感なのですが、社会にはその対策があまり用意されていません。かつての家族の結びつきは新しい世界観の中でズタズタ。親子関係がうまく行っている家庭は滅多に見ません。高齢者のシングルも多く、30年前に渡欧した当初から1日中窓から外を見ている年金生活者や失業者を目にしました。
1人暮らしは突然災厄のようにやって来るのではなく、徐々に人とのつながりが減って行き、行き着いたのが1人暮らしという人が多いです。なので自分を憂鬱にしているのが孤独感なのだという風に考える人も少なく、自分が絶望しているのだと気づく人も少ないです。やりきれない気分でいながらそれがどこから来るのかが分かっていない人が多いです。そういう人に取ってはパラレルワールドは魅力的な避難所。私が見たのはドイツ、それもベルリンの一角だけなので、これが全部を説明しているとは思いませんが、一部分の説明にはなると思います。
★ コララインのパラレルワールド
コララインというのは主人公で小学生ぐらいの少女です。カロラインかと思ったらコララインでした。元気な女の子なのですが、最近田舎に引っ越して来たため、以前知っていた友達とは写真でつながっているだけです。両親は2人とも仕事があり、コララインの相手になってくれません。一人っ子のつらいところ。
近所にワイビー(ワイボーン)という男の子と黒猫がいて、どうにか知り合いになり、話をするようになりました。でも相性がいいとか気が合うというほどではありません。なにしろワイビーはおしゃべりで、うるさくてたまりません。(見終わってからのことですが、ワイビーがおしゃべりなのも孤独な少年が話し相手を見つけたからかなとかんぐってみました。)
引っ越し先の家は大きくて古い屋敷。コララインは家の中に不思議なドアがあるのを発見します。ドアの向こう側にはコララインの家と全く同じ部屋があり、両親も住んでいます。パラレルワールドです。そしてあちらの両親はとても優しく、いつもコララインを気遣ってくれます。家の周りには美しい花が咲き乱れ、そちら側のワイビーは無口です。コララインが来た世界と唯一違うのは両親もワイビーも目がボタンでできているという点。黒猫だけは普通の目をしています。
★ あちらとこちら
コララインは時々自分の世界に戻り、またあちらの世界に出かけて行きます。そうやって両方を比べます。あちらの優しいお母さんは「いっそのことずっとこちらにいたら」と勧めてくれます。コララインも半分その気になります。
あちらの世界の住人になるには1つだけ条件がありました。コララインもボタンの目になるということ。それを聞いてコララインはためらいます。何もかもが生き生きしていて、色とりどり、ご飯はおいしく、音楽も聞こえる世界ですが、何かが違う・・・納得できないのです。
★ 断わったら恐い
元気のいいコララインは納得できなかったのであちらの世界の住民になることを断わりました。するとあちらの世界の優しいお母さんが魔女に変身。化けの皮がはがれてしまいました。現実の世界からは本当の両親が失踪。まだ小学生のコララインに両親を救い元の世界に戻るという難しい役目が課されました。
大冒険の末、魔女に拉致監禁された両親を救い、幽霊にされてしまった子供3人を正しく昇天させ、口を利かなくなったワイビーも救い、魔女と大立ち回りの末片付けます。
★ 大人でないと分からない映画
原作の作家はコララインとボタンの魔女 3Dを自分の子供のために書いたそうです。小さな子供に理解させるのが難しい人生の大きな罠、トリックも満載されています。で、大人の鑑賞に堪えます。その上問題を並べるだけでなく、しっかり立ち向かうコララインの姿勢も示されています。ドイツには色々な問題を扱った本が売られていますが、なぜか解決法は書いてありません。それを考えるとコララインとボタンの魔女 3Dは最後まで徹底的に戦う少女、最後に人生の価値を見出す少女の姿が描かれているので貴重です。 完全に大人の鑑賞に耐える作品に仕上がっているだけでなく、解決法までついています。
超圧縮版コラライン: 一人ぼっちのように感じた少女があちらの世界に魅せられる⇒暫く楽しく暮らす⇒とどまるように勧められる⇒何か変だなと感じる⇒断わる⇒しつこく勧められる⇒断わる⇒相手が本性を現わす⇒徹底的に戦う⇒勝つ⇒それまで不満を感じていた自分の世界に価値を見出す・・・というストーリーです。小さい子供にどこまで理解されるかには大きな疑問が残ります。子供にDVDをプレゼントして、それを子供がその時と、10年、20年経ってから見るというのがいいかも知れません。
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