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USA 2014 139 Min. 劇映画
出演者
Chadwick Boseman
(James Brown)
Jamarion Scott
(James Brown、子供時代)
Jordan Scott
(James Brown、子供時代)
Lennie James
(Joe Brown - ジェームズの父親)
Viola Davis
(Susie Brown - ブラウンの母親)
Sheldon Frett
(母親の連れの兵士)
Jacinte Blankenship
(Velma Brown - 最初の妻)
Jill Scott
(DeeDee Brown - ブラウンの妻)
Alvin Edney II
(Teddy Brown - ジェームズとヴェルマの息子)
Nelsan Ellis
(Bobby Byrd - ゴスペル歌手、フェーマス・フレームズのトップ・シンガー、ブラウンの友達)
Aunjanue Ellis
(Vicki Anderson - ボビーの妻、元ブラウンのバンドのシンガー)
Taura Cherne
(Sarah Byrd - ボビーの妹)
Phyllis Montana LeBlanc
(ボビーの母親)
Julius Tennon
(ボビーの祖父)
Aakomon Jones
(Bobby Bennett - ソウル、R&B歌手、フェーマス・フレームズのメンバー)
Aloe Blacc
(Nafloyd Scott - フェーマス・フレームズのメンバー)
Codie Wiggins
(Baby Lloyd Stallworth - ブラウンの運転手、歌手、ダンサー、フェーマス・フレームズのメンバー)
Fred Melamed
(Syd Nathan - キング・レコードの社長)
Dan Aykroyd
(Ben Bart - エージェント)
Josh Hopkins
(Ralph Bass - R&B 音楽プロデューサー、タレント・スカウト、ブラウンの発見者)
Craig Robinson
(Maceo Parker - サクソフォニスト、バンドのリーダー)
Tariq Trotter
(Pee Wee Ellis - サクソフォニスト、バンドのメンバー)
Justin Hall
(Bootsy Collins - ベーシスト、バンドのメンバー)
Rob Demery
(Clyde Stubblefield - ドラマー、バンドのメンバー)
Keith Robinson
(Baby Roy - バンドのメンバー)
Brandon Smith
(Little Richard - 50年代から有名になったゴスペル、ロック歌手、牧師)
Tika Sumpter
(Yvonne Fair - ブラウンとステージに上がった歌手)
Nick Eversman
(Mick Jagger - ローリングストーンズの歌手)
Ralph Tresvant
(Sam Cooke - ゴスペル、R&B歌手、どこに出演したか不明、1964年に死亡)
Aaron Jay Rome
(Frankie Avalon - 50年代のティーンのアイドル歌手、俳優)
Octavia Spencer
(Honey - 娼家の経営者)
J.D. Evermore
(セミナーのプレゼンテーター)
Carol Lee (Mavis - )
Cleta Elaine Ellington (Shirley Buell - )
Ahna O'Reilly (ジャーナリスト)
Jim Gleason
(保険のセールスマン)
Corey Sorenson (パイロット)
James DuMont
(Dooley - 伍長)
Stacey Scowley
(Penelope White)
Liz Mikel
(Gertrude Sanders)
Atkins Estimond
(Big Junior - ハニーの売春宿に住む少年)
Clyde Jones
(Daddy Grace)
Denzel Reed
(Big Kid)
Mario J. Radford
(ブラウンの運転手)
Joe T. Blankenship
(Alan Leeds)
Randy Smith
John Benjamin Hickey (Richard)
Allison Janney (Kathy)
Jamell Richardson
(Jimmy Nolen)
Jason Davis
(White - 市長)
David Carzell (Catfish)
Dominic Thigpen (Chicken)
Billy Slaughter
(プールの掃除人)
Kary Brown (Jimmy Rice)
Chris Moore
(Dennis Wilson)
Charles R. Rooney
(Lyndon B. Johnson - 大統領)
Christopher Rucinski
(Tim Drummond)
見た時期:2014年10月
この作品がドイツで公開されることは事前に知っていて、待っていました。公開第1週の映画の日を狙って、多分今でもドイツで1、2を争ういい映画館に出かけて行きました。ファンタの会場です。映画館では事故直後のファンタで世話になった従業員と顔を合わせ挨拶。
上映会場は地下の奥の方の小さいホール。横10人ほど、縦6列ぐらいで、1番後ろの真ん中に陣取りました。最近はやりの大型モニターをもっと大きくして、部屋を暗くして見るのと変わらないと言えそうですが、やはり映画館で見ると違います。
私はコンサート・ホールにいるような感じを期待して行きました。劇映画なのでコンサートとは違いますが、それでもややそれに近づいた感じはしました。
見に来たのは合計10人。皆好きな場所に座れました。私の目の前にはドイツ語を話す白人の男性と黒人の女性のカップル。もしかして女性は歌手なんだろうかなどと思ったりしました。実は以前音楽の映画を見に行ったら、真後ろにベルリンでは有名な白人の女性ソウル歌手が座っていて、言葉を交わしたことがありました。この時も映画館はガラガラ。
若いカップルは1組。残りは私と同い年ぐらいのカップルや40歳代ぐらいのカップル。という事はブラウンを同時代に知っていた人たち。
★ 接点
監督は白人で俳優としての出演作が監督としての作品の倍以上ある人。白人のテイラーがなぜと思いますが、接点は出身地である米国南部という土地柄かと思います。現在も仕事では大都市に出て行きますが、普段住む時は故郷を好んでいる様子。過去に作った作品、出演した作品で米国の白人、黒人という存在に取り組んでいます。
Get on Up の制作に加わっている人の中で1番有名なのはミック・ジャガー。自身が音楽関係者だと言うだけではなく、デビューした頃からずっとアメリカ南部の音楽を参考にして自分の音楽スタイルを作って来たという事情があります。私はビートルズ全盛時代むしろローリング・ストーンズの方が良かったのですが、元々R & B、ソウル、ファンク、ブルース方面の音楽が自分の性に合うことと関係があるのかも知れません。
Get on Up にも出て来ますが、ブラウンの専制政治に頭に来たバンドのメンバーがいくつかの要求をブラウンに突き付けたら、自分を音楽に導いてくれたボビーを除いて全員がその場で首。その後のバンドの行方は映画に出て来ませんが、実は戻る戻らないのやり取りの後、ジャガーと共演しています。
ダン・アクロイドも白人。彼は何を隠そう、あのブルース・ブラザーズに全面的に関わっており、私の好きな音楽のジャンルにどっぷり浸かった人。歌は相棒のベルーシーの方が格段にうまいですが、この世界をよく理解した人で、ブルース・ブラザーズと続編制作の時に生きているジェームズ・ブラウン本人と接点があります。
ジェームズ・ブラウンは黒人と思われていますが、半分だけ正しく、残りの半分は東洋系、具体的にはインディアン。贔屓目で言うと、日本人と大昔親戚かも知れません。私たちもあんなすごいリズム感、歌唱力を身に着けることができるのかなあ・・・と期待したくなってしまいます。
所謂黒人と言われている人の多くはどこかしらで白人を始め他の人種の血を引いており、また、米国ではインド系の人とアフリカ系の人の区別をするでもなしで、きちんとした区別をしている様子はありません。「随分だらしのない見方だ、相手の先祖をもうちょっと尊重しろよ」と言いたくなってしまいます。 例えば16分の1ぐらいアフリカの血を引いている人でも職場を追われたり、娘がそういう男性と結婚するという事で親が大臣のような職を辞したりと、非白人、非黒人の人間から見ると奇妙な事が行われていました。黒人側は他にどんな血が混ざっていても仲間扱いしているわけで、どちらが寛容なんだろうと聞くまでもありません。結果として雑な区別をして、自分と同じタイプ以外を排除してしまう組と、うるさい事言わずに同胞扱いする組に分かれてしまったようです。
ジェームズ・ブラウンを始めとした私のアイドルたちは皆そういう厳しい時代を生き抜いた人たち。黒人歌手としてスターダムに乗ってもレコード会社の経営の裏側に白人の経営方針があったなどという形で、長い間自分たちのやりたい経営ができたわけでなく、前に進むのは簡単ではなかったようです。実際R & B系の音楽が白人に受けるようになっても、当初は歌っている人たちに公民権すらなかったわけで、ようやくもらえた公民権も実は人権派が人権問題としてとらえたのではなく、黒人の生活水準を上げることで市場拡大を狙っていたという種明かしもあります。
60年代から現在までをざっと見渡すと確かに各界に黒人が進出する道は開かれたので、良くなってはいますが、シンボル的にオバマ氏が大統領になっても特別それで飛躍的に黒人の生活状況が良くなったわけではありません。妙な事に白人も貧困層に落ちて行くという負の方向の平等が起きており、また、何人(なにじん)でも金融業界で大儲けをたくらめば成功できるというわけで、60年代の一般人が考えていた平等とは違う動きになっています。
ブラウンと日本の接点がもう1つ。井上さんに教えてもらって知っているのですが、井筒和幸がゲロッパという映画を撮っています。本物のブラウンにカメオ出演はしてもらえなかったのが残念ですが、収監前のやくざがブラウンのファンだという発想が愉快です。ブラウンは10回以上来日しているので、「君の先祖はもしかしたら日本から徒歩でアメリカに渡ったインディアンかもしれない」と言って出演交渉をしたら承諾を得られたのではと思ったりします(無理筋か - 笑)。
★ シーンの構成
1993年から、1988年に飛び、有名な発砲、警察とのチェイス事件が紹介されます。この事件でブラウンは刑務所行き。今度は60年代に飛び、バンドごとベトナムへ兵士の慰問に出かけ、ベトナム上空を飛んでいる時に飛行機が攻撃され、片方のエンジンが火を噴く中着陸。
・・・てな具合に年代が何度も前後するため、観客はついて行けてもちょっとイライラします。
少年時代から時系列順にするか、有名になってからの部分だけでももう少しかっちりした時系列順にして、そこから時々過去を思い出す形式にした方が良かったと思います。あるいは1番最近の所から始めて、きっちり逆時系列順にして、貧しい子供時代に行きつくような形式でもおもしろくなったかもしれません。どうも監督の意図がストレートに伝わって来ない構成でした。
★ 俳優
私はブラウンとバンドは音楽を演奏する人たちとしかとらえていなかったので、どういう人柄で、どういう付き合い方をしていたかは全然知りませんでした。ですので俳優がエピソードを演じると、なるほどそうだったのかと受け入れるだけで、実話と比べたりするほど知識がありませんでした。
耳の方は割と肥えていたのですが、スクリーンから聞こえて来る声やサウンドは本物のブラウンたちをコピペしたのかなと思いました。俳優が台詞を言うシーンはドイツ語に訳されていたので、アメリカ人の俳優がどういう声で話していたのかを知ることはできません。曲のシーンは私の知るブラウンそのもの。両者を比べることができれば俳優が自分で歌ったのか、ブラウンの声に合わせて口パクをやったのかが分かったと思いますが。
主演のチャドウィク・ボーズマン(ボーズマンって、ドイツ語だと《悪い男》という意味になってしまいます)は本物のブラウンよりスマートで、ダンスも洗練されています。ブラウンがあれほど人気を保っていられた理由の1つは彼の持つ泥臭さ、ダサさだったように思うので、ちょっときれいにし過ぎた感じがします。
メイクの関係だと思いますが時々ボーズマンはマイケル・ジャクソンのティーンの頃と似ていました。ジャクソンは秘密にしていませんが、若い頃必死でブラウンの踊りやステージの運び方をコピーしたそうです。ジャクソンは非常に洗練されていましたが、ブラウンはダサさを消そうとせず我が道を行きました。私もそれで良かったと思う次第。
長年連れ添ったバンドのメンバーを演じている人たちが俳優業の他に本当に楽器を演奏できるのかは分かりません。それなりにバンドのミュージッシャンとして通るようには見えました。メンバーに気の毒なのはブラウンのバンドですとそれだけでは足りないという点。
ファンク・バンドはリズムの切れが何千分の一という正確さでぴったり合わないと、二流。ぴったり合わせるにはかなりの運動能力が要求されます。画面を見ているとそのあたりの最後の詰めが甘い感じでした。
女性軍も当時よりやや洗練された感じですが、踊りのシーンなどで魅力を振りまいています。演技力で勝負した女優も入っており、頑張っています。
ブラウンのお父ちゃんの役を演じているのはレニー・ジェームズという英国人!顔を見るとどう見てもアフリカ系イギリス人。中央アメリカのトリニダード・トバコから英国に移民して来た両親を持っています。ところがブラウンのお父ちゃんはインディアン。キャスティングの時にその点は考慮されなかったのでしょうか。サウス・カロライナには20を超える種族のインディアンが住んでいたので、ブラウンがその血筋の人であってもおかしくないわけです。
★ 意外な気候
ブラウンはサウス・カロライナ生まれ、ジョージアで亡くなりましたが、子供の時のシーンでおやっと思ったのが植物。田舎の一軒家に両親と3人で住んでいて、母親が愛想をつかして出て行ってしまいます。その頃住んでいた家が、1部屋しかない木造の小屋で、何よりも驚いたのは窓ガラスが無い事。
南部は暖かいから冬でも大丈夫なんだと自分に言い聞かせようと思ったのですが、付近の植物を見ていると、ここはドレスデンか、チェコかと言った感じ。ドレスデンやチェコでは窓ガラス無しで暮らすと凍え死にます。
君たちは一体どこでロケをしたんだと思い、帰ってから調べて見たら監督の故郷のミシシッピー州で撮っています。サウス・カロライナ州は大西洋に面した1番右、左隣がジョージア州、1つ飛んでその左がミシシッピー州。横に一並び。ですのでこのあたりの気候は似たような物。となるとサウス・カロライナにも撮影した場所と同じような気候の土地があるんだという推論になりました。
この辺の州は土地の大部分が長くて暑い夏、あまり寒くない冬という事になっていますが、内陸や高台に行くと、10度を切る土地もあります。年によってはドイツ並みに寒くなることもあるらしく、そうなるとああいう植物が生える場所があるのかなあと納得。
サウス・カロライナには1000メートルを超える山がありました。 ジョージア州の話は出ませんが、ジョージアにも1000メートルを超える山もあるそうです。知らなかった!
となると、ブラウン一家は窓ガラスの無い小屋でさぞかしつらい冬を送っていたのだなあと思います。
★ 実話の怖さ
ブラウンは2006年のクリスマス・イブに肺炎にかかっていることが発見され、緊急入院しますが、クリスマスの日に心不全で死亡。この時の医師がコンラッド・マーレー。
2年半後、2009年の6月25日にブラウンを師と仰いでいたマイケル・ジャクソンが死去。この時の主治医がコンラッド・マーレー。ソウル、ファンク、ポップス業界のトップの2人の死の近くにいた人物。ちょっと背筋が・・・。
★ 映画の出来
私はかなり期待して出かけて行ったので、物足りなさが残りました。ガチガチのブラウン・ファンが見たらどう感じるのでしょうか。私はガチガチとまではいきませんが、彼の歌唱力に対する評価は高く、あのピッカピカに輝く、鋭い切れの美声に匹敵する歌手をまだ見たことがありません。リズムの切れがすばらしいだけでなく、バラードを歌うと明るい声なのに切なさが良く出ていて、これぞ歌唱力という感じです。ですからその声を聴きたくて出かけて行くとそれなりの満足感を得られます。
では映画としてどうかと問われると、ランクが落ちます。やはり行ったり来たりの構成が災いしています。伝記なのでできるだけ多くのエピソードを盛り込まなければ行けなかったのでしょうが、私には音楽伝記物としては Ray/レイの方がよさそうに思えました。
少年時代にすでに刑務所に入った事のあるブラウンには多くの武勇伝があり、実家で父親が母親に暴力をふるう中育ち、その後は娼家で育っているので、自分も家庭内暴力を始めます。親兄弟が楽しく暮らす家庭というものは自分では持ったことが無かったのでしょう。知らないので、そういう家庭を目指すこともできなかった様子。
実生活では子供をかわいがった形跡があり、1973年の息子の事故死には非常に衝撃を受けていたようです。私は息子の死、ブラウンの騒ぎと刑務所入り、出所に関しては当時の本物の報道に触れており、ここにはブラウンの本心が現われていたように思います。遺言でも一定の金額を除き全財産を恵まれない子供のために寄付しています。
映画ではブラウンの負の面はいくつかのエピソードに絞って扱い、差別が厳しかった時代の様子もほどほどに扱い、バンド内の人間関係もほどほどに扱っており、全体をうまくまとめたのだなという印象を受けます。本人のイメージを崩し過ぎないように丸く収めた感じ。べつに社会派の映画を目指したわけではないのでほどほど路線でかまいませんが、中道路線を目指し過ぎた感じがします。
実力があるので王者と呼ばれるのは当然ですが、トップに長くいるためにはそれに見合ったエゴが必要だったようで、身近な人間はかなりの寛容さを求められが様子が映画の中でも表現されています。ビジネス感覚もあり、業界を制覇するためにはラジオ局を押さえる必要があると気づいたり、頭は良かったようです。
王者特有の猜疑心の強さも表現されており、夫婦のように逆のキャラクターを持ったボビーが近くにいたことで彼自身も長持ちできたとも思える表現の仕方です。
やや物足りなかったのはダン・アクロイドの役割。彼が演じる敏腕マネージャーのバートはブラウンの行き過ぎを適当なところで止める役割も果たしていたようで、映画の中では彼の突然の死で、箍が外れてしまうような描き方になっています。
アクロイドのアイディアだったのか、監督のユーモアだったのか分かりませんが、ブラウンに大儲けをさせた後、現金を大量に銀行の金庫に輸送するシーンがあります。その時の運び屋さんの衣装がブルース・ブラザーズそっくり。それも2人ではなく、半ダースほど。この路線をもう少し掘り下げて、ユーモラスにしても良かったかなと思います。
ローリング・ストーンズが登場するシーンもあるのですが、ほんの数秒。ミックともう1人のメンバーはそっくり。
このようにここ、あそこをもう少し掘り下げればと思えるシーンや手法があるのですが、どれもちょっと触れてすぐ他のシーンに変わってしまいます。139分も取ったのだから、半分ぐらいをこれぞファンクと人をうならせるような音楽シーンにし、個人のエピソードはいくつかに的を絞った方が良かったように思います。
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