映画のページ
ノミネートが発表された時期:2015年12月
受賞が発表された時期:2016年1月
今年も映画賞のシーズンに入りました。
今日はゴールデン・グローブの受賞者発表の日なのですが、カリフォルニアはまだその時間になっていません。なのでここではノミネートの発表だけになります。
なぜか初ノミネートで受賞する人が多いです。
作品賞・ドラマ
キャロルはレズビアン物。原作はパトリシア・ハイスミス。
レヴェナント 蘇えりし者は実話を元に書かれた小説の映画化。この作品の悪役がハーディー。
マッドマックス 怒りのデス・ロードは
30年ぶりの制作。ギブソンの役はハーディーが引き継ぐ。
ルーム の原作は脚本でノミネートされているエマ・ドナヒュー。登場するのは母子。母親自身が7年来監禁されていて、5年前に息子が生まれています。部屋には風呂を始め最低限の物はあり、子供は読み書きを母親から教わっているので、言葉は分かります。男の子はこの部屋だけに監禁されており、母親は子供が寝静まるとやって来る男にいいようにされています。
元ネタはオーストリーで起きた事件。こちらは映画よりたちが悪く、実父がまだ若かった娘を
四半世紀近く監禁し、できた子供8人。この娘は11歳から父親に虐待されたため逃げ出したものの、家出人として警察から自宅に戻されました。18歳まで何とか職業学校に通い、就職もできたのですが、その時期に父親から自宅の地下室に監禁されます。行方不明になった点については家出をして新興宗教に入ったように装されました。脱出を試みても失敗。24年後子供の1人が重病になったため父親はこの女性と病気の娘が病院に行くことを承諾。子供は入院、女性は一旦帰宅し、再び監禁状態に。しかし女性が病気になった娘のポケットに助けを求めるメモを入れていたため病院が怪しみます。行方不明となっているはずの女性がマスコミも絡んで探されます。そのため父親に口止めされた形で女性が現われますが、話が矛盾するため病院が警察に通報。監禁を解かれた子供たちは皆監禁と近親相姦に起因する病気を抱えていました。加えて出生届の出ていない子供たちはオーストリー国籍を有しないため、手続きが必要に。ドイツならそのまま国費で病気治療、生活保護、住宅供与、教育費無料、就職斡旋(ここまで税金の世話になる) → 経済的な自立(ここから税金、社会保険料を払う)となるはずですが、オーストリーはそうは行かないのか、かかる費用のために寄付を募ったそうです。母親は被害者扱いをされていますが、自分の家族に必要な量以上の食料を買っていたり、夫の長期休暇中に誰かが地下室の
住人の食料を調達しています。近親相姦は立証できるが、監禁と本人の意志に反した暴行については証明ができないという驚きの見解も出ますが、最終的には立件されて父親は終身刑。最初の15年は保釈、外出許可無し。
・・・という事件に比べると映画はかなりマイルドな印象。ただ、物理的に閉じ込められていた部屋から脱出できても、頭の中では監禁された状態が続くらしいというところまで描いているようなので、そこは期待しています。この種の被害に遭った人の事は同じ被害に遭っていないと理解できないでしょうが。
Spotlight は実話。ボストン発のカトリック教会のスキャンダル物。ウォーターゲート事件の時2人の記者が特種をモノにしましたが、こちらは5人のボストンの地方紙の記者が14年ほど前に発掘した特種の話。ウォーターゲートでも記者と政府の間に強い軋轢がありましたが、こちらの事件もなかなか大変な相手でした。最近好調のマイケル・キートンがその地方紙のデスク役で出演。ボストンは処刑人でもおなじみのカソリック信者の多い町。周囲をぐるりと見回してもカソリックばかりの中、数少ない部外者がきっかけを作ったそうです。
主演女優賞・ドラマ
Brooklyn は50年代のアメリカに来たアイルランド出身の移民の話。
リリーのすべては世界初の性別適合手術を受けた人物の伝記。
後記: グローブには初ノミネートでそのまま受賞する人が過去にも多かったです。
主演男優賞・ドラマ
外国人俳優はアメリカでは差別されます。元々アメリカ人のための賞なので、アメリカ人優先、次に英語圏の俳優優先、その後にようやくそれ以外の国の俳優が続きます。英語圏の中でも英国人はちょくちょく評価を受けるのですが、カナダ人は明らかに横っちょへ追いやられます。ドイツ人ももらえる役は悪役ばかりという時代が続きました。ファスベンダーは西ドイツ時代のハイデルベルク生まれ。国籍はドイツ、アイルランド、英国。ドイツは確か二重国籍を許していないはずですが。英国はもしかしたら以前の植民地や大英帝国所属の国の人に英国籍も与えているのかも知れません。 スティーブ・ジョブズはご存知スティーブ・ジョブズの3本目の伝記。56年の人生の3点を取り出し、30分ずつ描いているそうです。彼は有名になってからは東洋の文化に凝ったりして自分探しをしていました。会社経営者としてはひどい暴君。自由を求めた人が人の自由を制限しようとして断わられたり、おかしなエピソードが残っている人です。軍、大企業にコンピューターを独占させないように努力した人ではあったのですが。
後記: カプリオはグローブは3つ目ですが、オスカーは今年もだめかも知れません。なぜかオスカーにはスコシージもカプリオも嫌われているようで。
作品賞・ミュージカル&コメディー
マネー・ショート 華麗なる大逆転の出演者は豪華。リーマン・ショックを予見した4人の男が世間よりうまく立ち回り、負け組みにならなかったという実話の映画化。
オデッセイは火星に取り残された宇宙飛行士の話。小説「火星の人」が原作。地球へ戻る希望を失わないという良い役をマット・デイモンが演じる。インターステラーでデイモンはそっくりの役を演じているが、こちらは根暗の悪役。オデッセイは明るいキャラのようです。
事故が起きて死んだと思われたため火星に1人取り残されてしまう宇宙飛行士。インフラが限られているのでまずは酸素の調達が必要。次に気温がやたら低い。水は地下にあるので取り出せない。彼の生存が知られていない上に、万一救援隊をよこすにも4年ほどの時間が必要。なぜかこの間死んだウィットニー・ヒューストンのお母さんの曲が流れる。さすが歌は上手い(彼女の名前が娘やディオンヌ・ワーウィックほど知られていないのが残念)。折れそうになる気持ちはこの曲で支え、義務教育で習う科学の知恵を駆使して何とか細々食べていけるようになります。グロリア・ゲイナーの《俺は助かるぞ》、失礼《あたしは助かるのよ》もかけて自分を励まします。1人忘れられてしまったり、取り残される役の得意なデイモンでした。
後記: オデッセイは確かにミュージカル・コメディーと言えない事もありません。音楽はやや少なめでしたが、コメディー要素はちゃんと入っています。私にはウォレスとグロミットが月世界旅行をしたアニメの実写版に見えました。音楽は本編の内容に合わせて選んであります。あらかじめ歌詞を勉強してから見ると笑えます。内容は作っている人たちの思想を考えるとやや矛盾が見られますが、深く考えないで見て、アハハと笑うこともできます。
主演女優・ミュージカル&コメディー
マギー・スミスは81歳。
後記: ローレンスは現在25歳。オスカーは20歳で初ノミネート、22歳で受賞、合わせて4回ノミネートですでに受賞。グローブは同じく20歳で初ノミネート、22歳からの3回のノミネートでは全部取っています。どうやったらこういうツキがくっついて来るんだろう。20歳から25歳の間に両賞合わせて8回ノミネートされ、4つ取っています。ありえねえ。
主演男優賞・ミュージカル&コメディー
最盛期を過ぎた役者ばかり集まった印象。デイモンはよく似た作品に脇役で出演して、練習してからこの作品を撮ったのでしょうか。
カレルは2006年から出演しているテレビ・シリーズで毎年ノミネートされています。受賞は第1回ノミネートの時。
後記: デイモンはオデッセイでは大した演技はしていません。地のままといった感じです。常に陽気で前向き。そのままハッピーエンドに突入。
助演女優賞・ドラマ
賞味期限切れの女優が多い中、エクス・マキナの高性能ロボットがノミネートされています。女優としての彼女の評価はまだ未知数ですが、彼女が貰った役はおもしろかったです。
ウィンスレットとカプリオはタイタニックで世界中に知れ渡りましたが、賞にはなかなか結びつかないようです。
後記: 色々うるさいおばさんたちがノミネートされ、比較的若手のウィンスレットに賞が行きました。カプリオと2人、タイタニック・コンビの受賞と相成りました。
助演男優賞・ドラマ
マイケル・シャノンは力のある俳優で、人に嫌われるような役が得意です。
スタローンは元々監督業と脚本で始めた人。資金不足のため自分の作品に出たことで俳優業へ。俳優としても微妙な表情の出せ、ユーモラスな役も行ける能力のある人ですが、アメリカではもっぱら馬鹿にされるようです。
後記: やったーっ。彼はオスカー、グローブ共1977年のロッキーで各2部門にノミネートはされたものの肩すかし。その後ずっと業界から無視され続けていました。今年は両賞の助演賞でノミネートされ、グローブはようやく受賞。映画界への貢献度を考えると映画祭は恩知らずとしか言いようがありません。長い長いノミネート、受賞リストがあるのはラジー賞だけ。31戦10勝。どの賞にも「最悪」とついています。今年はなぜかまだラジーのノミネートのリストに載っていません。発表がまだなので。
監督賞
脚本
ヘイトフル・エイトは古典派密室殺人推理小説的な設定。密室の代わりに悪天候で雪に閉ざされた山小屋が舞台。出演者が豪華。
後記: 裏方の人は監督以外はほとんど名前を覚えてもらえませんが、ソーキンはいくつかの話題作を書いています。
音楽(オリジナル)
モリコーネは現在87歳。イーストウッドは85歳。まだがんばっています。
坂本は外国の思想に深く傾倒しているようですが、受賞率は高いです。
後記: モリコーネの名前を挙げておいて賞をあげないというわけには行かないでしょう。タランティーノの粋な計らいだったのかも知れません。坂本龍一でなくて良かった。
音楽(オリジナル・ソング)
ワイルド・スピード Sky Mission はポール・ウォーカー亡き後の作品。撮影中に死んだため、ボディー・ダブルなどを使ってウォーカーの役の辻褄を合わせたとのこと。
後記: サム・スミスはかなり高音まで出せる歌手ですが、声のコントロールがあまり上手くありません。最近の007の曲では Skyfall が良かったです。一見つまらない始まり方をしますが聞いていくとだんだん盛り上がる作りでした。ただ彼女もライブより、映画に使われた録音版の方が謎めいていて良かったです。
長編アニメ
アードマンの最初の3作は大好きだったのですが、多角経営に乗り出してからの作品はあまり面白くありません。
後記: アードマンは十分貰ったという判断だったようです。スヌーピーはやはりアニメよりあの簡素な絵の方がいいです。
外国語映画
今年は日本は入っていません。
テレビを持っていないので、あまりコメントできませんが、ごく一部はインターネットの放映で見ました。
TVシリーズ・ドラマ
Empire 成功の代償はチラッと見たことがありますが、元イラク兵、その後刑事の役をやっていた女優が毛皮のコートを着て芸能界に現われる違和感が強くて、ついて行けませんでした。
TVシリーズ主演女優賞・ドラマ
長く続いているシリーズもあるので、今年逃しても来年があるさ・・・。
ライトはハウス・オブ・カード 野望の階段で3回ノミネート、受賞1回。
グリーンは名前から受ける印象と違い、フランス人。母親はアルジェリア系フランス人のジョベール。父親は北欧の歯科医で、グリーンという名前を受け継ぐ。雨の訪問者の主演だった人。
タラジ・P・ヘンソンは Person Of Interest 犯罪予知ユニットの方が合っていたように思います。
後記: なるほど、このためにカーター刑事を辞めたのか・・・野望成就。私はイラク帰りの帰還兵から刑事に転職という設定が好きだったのですが。なんとなくタフさに説得力がありますよね、それだと。毛皮のコートは似合わない。実務家に向いている。
TVシリーズ主演男優賞・ドラマ
女優もそうですが、最近映画で見なくなったなあと思ったらテレビに映っていた・・・なんて。かつてはそれは安売り、ランクが下がったと見られましたが、最近はテレビの方に人材を取られてしまい、映画の方が手薄になった印象です。
TVシリーズ・ミュージカル&コメディー
TVシリーズ主演女優賞・ミュージカル&コメディー
カーティスはスクリーム・クイーンと呼ばれた女優。
TVシリーズ主演男優賞・ミュージカル&コメディー
TVミニ・シリーズ&テレビ用に製作された映画
Fargo / ファーゴの元ネタは同名の劇場映画。ドジな人間と実直だけれど要領の良くない人間ばかりが出て来る犯罪映画でした。フィクションなのに、堂々と映画の中に「これは実話だ」と載っている作品です。今回主演を演じる英国人のフリーマンも劇映画と同じくもさっとした冴えないいでたちです。
主演女優賞・TVミニ・シリーズ&テレビ用に製作された映画
ラティファの本職はラッパー。
ガガの本職は作曲家。子供の頃から腕のあるピアノ教師から習ったため、早くから作曲をするようになる。後に歌手になる。歌はジュリー・アンドリューズより上手いが歌以外のことで話題になることが多いため、あまりよく知られていない。
ダンストは現在はドイツ人。
ハフマンの夫はウィリアム・H・メイシー。
後記: ガガはカプリオがお嫌い。
主演男優賞・TVミニ・シリーズ&テレビ用に製作された映画
助演女優賞・TVミニ・シリーズ&テレビ用に製作された映画
助演男優賞・TVミニ・シリーズ&テレビ用に製作された映画
スレイターは薔薇の名前でいいスタートを切ったのに賞には恵まれない人です。若くして成功したのが祟ったのか、スキャンダル続き。その反面1度中退した高校を認定試験で合格、卒業するといった努力もしている。キャリアが長いわりにまだ46歳。
後記: 時代が変わったようです。スレイターのデビューは1970年、御年1歳でテレビ・シリーズに登場。薔薇の名前は1986年、御年17歳。撮影時には1歳ぐらい若かったものと思われます。それまでに8つぐらいのテレビ・シリーズやテレビ映画に出演していました。しかしグローブからもオスカーからも完全に無視されていました。今年初めてグローブにノミネートされて見事受賞。
セシル B. デミル賞
去年のクルーにーに続き、今年はワシントンにもそろそろ 双六の上がりでしょうか。彼は黒人がいい役を貰えて、賞にもノミネートされる時代の先頭を切った人です。
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