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Sopravvissuto - The Martian

Ridley Scott

USA/UK 2015 144 Min. 劇映画

出演者

Matt Damon
(Mark Watney - アレス 3 ミッションのクルー、植物学者)

Jessica Chastain
(Melissa Lewis - アレス 3 ミッションのクルー、船長、地質学者)

Michael Peña
(Rick Martinez - アレス 3 ミッションのクルー、パイロット)

Kate Mara
(Beth Johanssen - アレス 3 ミッションのクルー、システム・オペレーター、原子炉専門、クリスの恋人)

Aksel Hennie
(Alex Vogel - アレス 3 ミッションのクルー、化学者、天文物理学者、ドイツ人)

Sebastian Stan
(Chris Beck - アレス 3 ミッションのクルー、医師、生物学者、ベスの恋人)

Charlie Gardner
(Robert Lewis - メリッサの夫)

Nóra Lili Hörich
(フォーゲルの妻)

Kamilla Fátyol
(Marissa Martinez - リックの妻)

Sean Bean
(Mitch Henderson - アレス 3 ミッションの責任者)

Chiwetel Ejiofor
(Vincent Kapoor - NASA の火星探索責任者、ワトニーの即時救出派)

Waleska Latorre
(ヴィンセントの秘書)

Kristen Wiig
(Annie Montrose - NASA 広報担当者)

Jeff Daniels
(Theodore Sanders - NASA 長官、ワトニー即時救出に反対)

Mackenzie Davis
(Mindy Park - サットコン・エンジニア、サテライトの設計者、ワトニーの生存を最初に確認)

Benedict Wong
(Bruce Ng - JPL の主任、ワトニー救出のためのロケットの設計担当)

Donald Glover
(Rich Purnell - JPL の宇宙力学者)

Nick Mohammed
(Tim Grimes)

Shu Chen
(Zhu Tao - CNSA の主任科学者)

Eddy Ko
(Guo Ming - CNSA の主任科学者の代理)

Geoffrey Thomas
(米国大統領)

見た時期:2016年1月

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

このページの記事は書き終えた後、なぜか消滅してしまいました。作品を見た直後に書いていたので、その時の気持ちが伝わるような書き方になっていました。残念ながらほとんどの内容が消えてしまったので、やや距離を置いた書き方になってしまいました。なぜこの記事だけが消滅したのかは謎のまま。

★ 火星人

邦題は(明日は帰ろう)オデッセイとなっていますが、元のタイトルは火星人。

火星人と言うと、人類でない、もしかしたら蛸に似た形の生物のはずですが、ここでは火星にいる人類という意味で、人類が火星に降り立った状況です。原作は火星の人という小説で、作者はアンディー・ウィアー。

火星になぜ人がいるのかと言うと、NASA が6人の人間を火星探索に送り込んだからです。それも今回が初めてではなく、アレス 3 と名づけられているので、過去に 1 と 2 があったものと思われます。話の途中に前の隊が残した機械を掘り出して使うシーンがあります。

火星の人たちは南極の越冬隊のような生活をしています。

★ ウィアーやスコットが描く火星の様子

地面はさらさらした赤い砂に覆われています。時たま砂嵐が来ます。水は仮にあったとしても地下。地表は完全に乾いています。そのため植物や動物の姿はゼロ。赤い砂と大きな岩しかありません。

上空にはロケットのステーションが浮かんでおり、地上に着陸したロケットは、任務が終わったらまた上空に向かいます。地上にはコンテーナー風の建物があり、生活空間と研究用のラボがあります。地上の移動にはローバー風の車が使われます。

発電には太陽光パネルが使われています。

★ まずは事故発生

話の発端は予想外の砂嵐。遭遇した探索ティームは隊員の1人を失いながら、残りの5人は上空のロケットに到達。地球に帰還を始める、ところが死んだはずの隊員が生きていたというもの。

もしかして割合で言うと地球より重力が低いかも知れない火星で大嵐に遭っても、作品で描写されているより被害が少ないのではないかという話があります。重力が少ないので、何か大きな物にぶつかっても衝撃が柔らかで、隊員が死なずに助かったという話も成り立ちます。冒頭にちょっとした矛盾をはらんだまま出発。

ま、ここでは大きな被害を出す嵐が来た、1人死んだように見えた、でも助かっていたという前提を受け入れましょう。

★ 自力でとりあえず

火星の地上で意識を失っていた主人公のマークは何時間か経って意識を回復します。空気が切れそうな上、怪我をしていたのですが、どうにか地上ステーションにたどり着き、体に刺さった金属片のような物を取り出し、傷口をホッチキスで留めるのに成功。

以前に触れたことがあったかも知れませんが、このホッチキスで外傷の傷口を留めるというのは聞いたこともない人にはびっくりですが、経験したことのある人には実に納得の行く方法です。

マークの傷口は小さく、小さな口径の銃の弾を取り出すのに似た規模なので、手縫いしてもいいかも知れませんが、広範囲な皮膚移植などですと、傷の手術より、縫合の方が時間がかかるなどという事態になることも多いです。また、ホッチキスの針は金属なので、簡単に熱で消毒ができます。そしてそんな傷を負っている場合はどちらにしても麻酔をしているので(マークも事前に麻酔の注射をします)、ホッチキスの針が刺さっても蚊が止まった程度にしか感じません。なので数秒で終わってしまうホッチキス縫合は非常に理にかなっています。初めて経験する時はびっくりしますけれどね。

火星には恐らく南極と同じで、地球人が地球から持ち込んだビールスやバクテリア以外はいないでしょうから、マークの傷が膿んだり、感染症になる可能性は低く、とりあえず傷の問題はこれで解決です。

健康問題を一応片付けた後マークは倉庫や棚を調べ、何がどのぐらい貯蔵されているかをチェックします。次の隊が来るのは、マークの生存が分かって救援隊が組織されても4年後。まあ、ステーションのインフラが整っていれば4年待つのもいいでしょう。しかしステーションには十分な物資がありませんでした。食料も厳しい状態。大節約をしても持つのは1年ほど。それに4年も待つのなら空気も何とかしなければなりません。

★ 知恵を絞って

マークは植物が専門の学者。どんな難しい理論を持ち出して工夫するんだろうと思ったら、私が公立の小学校で習った事をやり始めます。残っていたジャガイモを半分に切って、切り口を下にして植え始めました。私も小学校の頃ほとんど同じ事を習い、収穫したジャガイモから片栗粉を作るところまでやりました。

肥料は昔の農業の手法を思い出し、クルーの排泄物を使用。よく考えてみると以前は田舎でやっていましたよね。

水の作り方も意外と簡単な理論を使って成功。こんな状況の中、マークは落ち込まず、救出の可能性のある時期を4年と定め、ひとつずつステップを踏んで行きます。

★ 地球への連絡

取り敢えずインフラの展望ができたので、次に取り掛かったのは地球への連絡。自分のティームの持って来た機器だけでなく、前のクルーが使った機器などについても考え、探索車を充電し、活動開始。

どうにか生存の知らせは地球に届きます。また、NASA のカメラは探索車が動く様子を捉えていました。幸いそれに気づいた女性が NASA にいました。

生きているという知らせが一方的に届いただけでなく、マークと NASA はマークが示した YES と NO という文字にカメラを向けるという形で事情を知らせるための 交信を始めました。YES と NO だけでは話の内容が単純になってしまうのですが、その時マークはこれまた非常に単純な事を思いつきます。16のパネルを用意し、カメラが ASCII の16進法で文字を示します。方法は単純ですが、これで内容が曖昧でない文章で交信できるようになります。

ロケットのシーンや、探索のシーンは他の SF とあまり変わりありません。と言うか、もっと凝った作品は色々あります。この作品の特徴はこういった一般人でもついて行ける簡単な方法を駆使する点です。物事はややこしくしなくてもいいんだということをこの作品から学びました。

★ 生きているなら助けなければ行けないか

これまでの映画ですと、生存者発見、救援活動、助かった、ハッピーエンドというのが主流。時には悲劇が起きたり、自己犠牲の聞くも涙の物語もありました。しかし現代は NASA の機能も多くが民営がされており、1つの国で背負い切れないプロジェクトは海外からの投資を頼んだり、国際協力という名の下に経費節約をする時代です。マークが生きて取り残されたのは演じているのがマット・デイモンなので当然と言えば当然ですが(取り残される役は幾つ目か、デイモン君)、やはりクルーやこのプロジェクトの現場スタッフは救出したいところ。

まずはマークが死んだと思って地球へ向かっている5人にこの話を伝えるかが問題。

次にマーク救出を今行うかが問題。このプロジェクトを直接仕切っているヴィンセントは第4次探索隊をキャンセルするか遅らせるとしてもマークを助けに行くべきだという意見。しかし国から予算をぶん取って来、経営の責任者でもある NASA 長官のシオドアは首を横に振ります。

じゃ、せめて食べ物ぐらいは送ろうという話になり、生存に必要な物資や、通信機器などを積んだロケットを火星に向かわせることが考慮されます。それで生き延びてくれれば NASA は非難されないし、次のプロジェクトの際に彼を帰還させればいい・・・などと NASA のお偉方は考えます。

ところが民営化でちょくちょく失敗をしている現実を映画にも反映したのか、物資を積んだロケットが発射直後に爆発してしまいます。似たような本当の事件の報道ビデオを見たことがあります。そこでこの作品では、現実をやや先に進めた近未来の話として、中国が協力を申し出るなどというエピソードも挟まれます。中国は打ち上げ失敗のニュースは普通流さないので、これまで全部成功したことになっています。

★ そこへ現われる救世主

地球ではマーク救出作戦と並行して NASA のお偉方の優柔不断ぶりや、PR 作戦、部署や任務によって噛み合わない考え方が列挙され、あたふたぶりがややコメディーの乗りで描かれます。ゴールデン・グローブでこの作品がミュージカル&コメディー部門に入っていたのも納得。

暫くはマークに生存に必要な物資を送りつけ、マークはあと3年強ジャガイモを作って生き延び、後で別のクルーがマークを拾いに行くということで話がまとまっていました。しかしマークの作った室内の畑が爆発で吹っ飛び、作物はふいになってしまいます。やはり間もなく誰かが救出しないとマークはそれほど長く生き延びられません。とは言うものの、ここでめげずにまた壊れた室内を修理し、救えるものは救おうと努力。この作品ではインターステラーと違い、デイモンはあくまでも前向き。

食料が減ってしまったので、改めて計算し直してみると、1年弱は持ちますが、その先は真っ暗闇。

突如現われてユニークな提案をしたのは黒人でヒップホップの歌手に見える科学者。れっきとした研究所所属の宇宙力学の専門家です。この作品の弱い点は、出演者の多くがその役に適した知性を漂わせる演技をせず、軽い乗りで演じている点。俳優が悪いのではなく、俳優にそういうそぶりをさせている演出家の責任でしょう。ということはリドリー・スコットのせい。スコット作品でこういう軽い乗りの作品を見たのは私は初めてです。彼自身が1度そういう作品を作ってみたかったのならそれはそれでいいですが。

さて、そのリッチ君、今地球に向かっているロケットの軌道をこういう風に乗り換え、火星のマーク君を打ち上げて、拾ってから、改めて地球へ向かえばいいという話になります。しかしロケットは1度火星に引き返すので、新たな食料が必要になります。それを中国のロケットから受け取ればいいだろうという話になって行きます。それも NASA 長官が却下しているので、プロジェクトのチーフは責任を取る覚悟で秘密裏に行います。チーフ以下のメンバーは皆賛成。

マーク君の話を聞いたベトナム人のエンジニアは、周囲から無理無理と言われる中、燃料、揚力などを考慮して不要な物は全部捨て、屋根も重いから屋根無し、代わりにビニール・シートをかけて打ち上げるという事を提案。ドタバタ喜劇になります。このシーンを見ていてどうしても思い出さざるを得ないのはウォレスとグロミットの月旅行。スコットは英国人なので、少しウォレスとグロミットに敬意を示したのかも知れません。

このドタバタのシーンは理論的には可能。火星に地球のような大気圏が無ければ、こういう無茶をやっても助かるかも知れません。ただ、そこへさらに自分の宇宙服に穴を開けてドッキングを早めるとか、荒唐無稽な事が実行されるので、やはりこれはコメディーだと改めて納得。

NASA では指示を受けた技術者などが「どのぐらいの時間でできるか」と上から聞かれ、「7日間」とか答えると、「じゃ、2日でやってくれ」などといともあっさり言われてしまいます。それをまたその範囲内で仕上げてしまうところが笑いの種。私も仕事で似たような体験をしたことがあるので、笑わざるを得ませんでした。

マーク生存のニュースを大分後になって聞かされた5人はやや御冠ですが、生きていれば救出無しには帰らないぞとの勢いでがんばり、最後はクルーの1人が命の危険を冒して、マークをキャッチ。無事ハッピーエンドにこぎつけます。

★ ご都合主義オンパレード

使われている科学知識はおおむね可能、あり得るという範囲なのですが、現実にこういう風に使えるかどうかとなるとやはりそこは映画の世界。メルヘンです。ただ欧州には「内容正しさなんかどうでもいい。ただ、おもしろおかしく語られることが大切だ」と考える人も多いので、そういう意味では成功作です。

この軽い乗りはゴールデン・グローブのミュージカル&コメディー部門には適していますが、オスカーとなるとちょっと首を捻りたくなります。

★ インターステラーとの関係

マット・デイモンはインターステラーでそっくりの役を暗い脚本で演じていましたが、もう1人インターステラーで練習した人がいます。ジェシカ・チャステイン。彼女はインターステラーの方がほぼ主役で、パイロットのクーパーの娘役です。あちらで神経を使う役を演じたので、オデッセイではちょっと休憩です。

前に書いていた事を再現することができず、私の記事も軽い乗りになってしまいました。悪しからず。

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