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1993年6-12月の感想

1993010519940106


法月綸太郎の冒険(法月綸太郎)
探偵映画(我孫子武丸)
ウィチャリー家の女(R・マクドナルド)
13人目の探偵士(山口雅也)
メビウスの殺人(我孫子武丸)
行きずりの街(志水辰夫)
水の戒律(F・ケラーマン)
世界短編傑作集1(江戸川乱歩編)
殺戮にいたる病(我孫子武丸)
リング(鈴木光司)
遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる(麻耶雄嵩)
女には向かない職業(P・D・ジェイムズ)
女の顔を覆え(P・D・ジェイムズ)
ウロボロスの偽書(竹本健治)
歯と爪(B・S・バリンジャー)
消失!(中西智明)
トレント最後の事件(E・C・ベントリー)
皮膚の下の頭蓋骨(P・D・ジェイムズ)
記念樹(依井貴裕)
夏と冬の奏鳴曲(麻耶雄嵩)
謎>夏と冬の奏鳴曲(麻耶雄嵩) ***!ネタバレ含!***
あくむ(井上夢人)
竹馬男の犯罪(井上雅彦)
ホッグ連続殺人(W・L・デアンドリア)
孤島の鬼(江戸川乱歩)
妖霧の舌(竹本健治)
眠れる森の惨劇(竹本健治)
魔法飛行(加納朋子)
崖の館/水に描かれた館/夢館(佐々木丸美)
闇に蠢く(江戸川乱歩)
四○九号室の患者(綾辻行人)
殺人鬼(綾辻行人)
閉じ箱(竹本健治)


法月綸太郎『法月綸太郎の冒険』講談社ノベルス 1992

収録作品
「死刑囚パズル」「黒衣の家」「カニバリズム小論」「切り裂き魔」「緑の扉は危険」「土曜日の本」「過ぎにし薔薇は」。

*内容紹介/感想
初の短編集。
「死刑囚パズル」死刑執行直前に「殺されてしまった」死刑囚の謎。
「黒衣の家」クイーンの『Y』をふと思い出させる。
「カニバリズム小論」私にとっての読後感は、クリスチアナ・ブランドの「ジェミニー・クリケット事件」。
軽妙な仕上がりで、長編とは受ける印象が違う。

93/6/5


我孫子武丸『探偵映画』講談社ノベルス 1990

*内容紹介
「探偵映画」という映画の撮影中に、監督が失踪。映画の結末は監督しか知らないというのに。出演者、スタッフたちは、それまでのストーリーから「犯人は誰なのか」を推理し、彼らなりの結末を作り上げようとするが。

*感想
『8の殺人』 『0の殺人』 で見られた、わけのわからない”ユーモア”がなりをひそめ、好感の持てる作品になっていた。「犯人」=「主役」の図式の中での、犯人がわからない状態。出演者がそれぞれ「主役」を演じたいがために「自分が犯人だ」と推理を組み立てるさまは、なかなかおもしろい。

93/6/5


ロス・マクドナルド 小笠原豊樹訳『ウィチャリー家の女』ハヤカワ文庫HM 1976
Ross Macdonald, THE WYCHERLY WOMAN, 1961

*内容紹介
富豪の娘、フィービ・ウィチャリーが失踪した。依頼を受けて行方を追う私立探偵リュウ・アーチャー。手がかりを追ううちに明らかになってゆく、ウィチャリー家の事情。

*感想
法月綸太郎が『ウィチャリー家の女』に影響を受けているらしかったので読んでみたのですが。なるほどね。よくわかる。『頼子のために』 『一の悲劇』 『ふたたび赤い悪夢』 の三部作を読んだ後にこれを読むと感慨深いものがある。かなり影響を受けたようだ。逆に言えば、似たような話を読んでしまったなあ、という感じ。だから新鮮さはない。『ウィチャリー〜』から読んでいれば、かなり印象的だったろう。

霧の中にうかびあがるような、ぼんやりとしたけだるいような文章。ちょっと疲れているような。出だしの文章、かなり気に入っている。

93/6/5


山口雅也『13人目の探偵士』東京創元社 1993

*内容紹介
パラレル・ワールド英国で、殺人鬼”猫”による、名探偵の連続殺人が発生している。----目覚めると、探偵皇「ブラウニング卿」の死体と共にいた”私”、記憶が全くない。殺人の容疑をかけられ、探偵士に捜査を依頼することにするが。

*感想
もともと1987年に発行され、ゲームブック形式だったものを手直ししたものだそうで、その特色がしっかり残っている。つまり、読者は、依頼する探偵を3名のうちから”選べる”のである。また、捜査途中にもいくつかの分岐がある。しかし、今回は探偵3名につき合うことになるし、捜査途中の分岐も結局全て経験することになる。逆にそれぞれにつき合わないと、この全体の話の面白さは味わえなくなってしまうだろう。

全体の流れは、「解決」 「探偵士3名の捜査状況」 「共通に起きた事件」 「探偵士3名による、それぞれの解決」 「発端」となっている。

パラレル・ワールドという設定、パンク刑事、軽い衒学趣味、名作・名探偵をほうふつとさせるもの。遊び心に満ちていて、読んでいて楽しかった。3人の探偵士につき合うことになるわけだが、思ったより混乱はない。私たちが望んでいる「あちら側から見られたら」という希望が叶う小説。

最後に少しだけ扱われる「仮想現実(バーチャルリアリティ)」問題は、全体の雰囲気のためか岡嶋二人『クラインの壷』のラストで受ける印象と違うのがまた興味深かった。

ゲームブックと言えばそれこそ岡嶋二人が『ツァラトゥストラの翼』というのを出していますが、なかなか良く出来ていて面白かった記憶があります。

93/6/13


我孫子武丸『メビウスの殺人』講談社文庫 1993(1990)

*内容紹介
全く共通項のない老若男女が次々に殺されていく。殺害方法は絞殺と、金槌による撲殺が交互。また、現場に残っている数字「3−3」、「3−1」などはいったい何なのか。

*感想
ユーモアのセンスや文体も、私が慣れたのか、少しは良くなったのか、鼻に付くほどではなくなった。最初に出された解答に対してちゃんとひとひねり加えてあるところは買えると思う。実際にありえるのかどうかは別として、結構楽しめたことは確か。

93/6/13


志水辰夫『行きずりの街』新潮社 1990

*内容紹介
行方不明になった教え子を捜しに、約10年ぶりに東京を訪れた塾講師。彼にとって捜索することとは、学校教師をしていた頃の忌まわしい思い出と直面せざるを得ないことでもあった。そしてかつての妻との再会。

*感想
派手さはないし、時間にすれば4日間の出来事。しかし何と中身の濃い。普通の教師が悪と戦う。現実にはありえない話だろうが、それでも彼が戦う姿は超人でないが故にリアル。かつての妻との再会にしても、うますぎるきらいはあるが、それでも読者が望んでいるのはこの通りのなのだろう。私も含めて。同じ人捜しでも『ウィチャリー家の女』(ロス・マクドナルド)と全然違う。当たり前か。時代も国も違うわけだし。やはり私にとっては『行きずりの街』の世界は身近であるわけだ。人質を逃がしてやった老人が何故か印象に残る。多くを語らなくても、読んだ人ならばこの良さをわかってもらえるはず。

93/6/19


フェイ・ケラーマン 高橋恭美子訳『水の戒律』創元推理文庫 1993
Faye Kellerman, THE RITUAL BATH, 1986

*内容紹介
ユダヤ人コミュニティで、連続レイプ事件が発生する。解決にあたるのは、ロス市警のピーター・デッカー。

*感想
舞台がユダヤ人コミュニティという風変わりな設定だが、事件や動機に対しては特別変わったところはない。ユダヤ人の生活がかいまみられて、大変興味深いものがある。この本で気になるのは推理ではなく恋愛ではないだろうか。”異教徒”であるピーターと、コミュニティの女性リナとの恋愛は前途多難であるように見える。物語の最後になって意外な事実がわかっても、ピーターはアイデンティティの問題を解決しない限りリナとの恋愛を受け入れられないようだ。これはピーター&リナ第1作目。読んだ人ならば2作目以降を追わずにはいられなくなるだろう。彼らの行方が気になって。

93/6/19


江戸川乱歩編『世界短編傑作集1』創元推理文庫 1960
収録作品
ウィルキー・コリンズ「人を呪わば」、アントン・チエホフ「安全マッチ」、アーサー・モリスン「レントン館盗難事件」、アンナ・カサリン・グリーン「医者とその妻と時計」、バロネス・オルツィ「ダブリン事件」、ジャック・フットレル「13号独房の問題」、ロバート・バー「放心家組合」。
*内容紹介/感想
印象的なのは以下の3つ。
「医師とその妻と時計」、盲目の医師が隣家で起きた殺人は自分がやったものだと言うのだが、妻はもちろん信じない。警官立ち会いのもと、時計を的に実際に実験を試みるのだが。古めかしい雰囲気はあるし、ラストも想像がついてしまうのだが、古き良き古典という感じが私は好きだ。物悲しい話である。逸品。
「13号独房の問題」、”思考機械”ドゥーゼン博士が、独房から1週間以内で脱出できると宣言。持ち物は、歯磨き粉、5ドル紙幣1枚、10ドル紙幣2枚、そしていつも靴をピカピカに磨いていて欲しいという願い。ユーモアもきいている。思わず声を出して笑ってしまった箇所もあった。しかし、極限状態に置かれれば、実は誰でもこの程度は思いつくか?
「放心家組合」、完全犯罪の話。犯罪といっても人殺しではないが。主人公と一緒に地団太踏みましょう。あー、くやしい!
93/6/19


我孫子武丸『殺戮にいたる病』講談社 1992

*内容紹介/感想
犯人の名前は初めから明らかにされてますが、ネタバレにはなりえません。ご安心下さい。

性的異常者によると思われる事件が多発。犯人の逮捕から時は遡り、犯人=蒲生稔、蒲生雅子、元刑事=樋口のそれぞれの日常が並行する形で物語は進む。そして、最後の逮捕の時へ向かって並行していた3人の時間が焦点を結んでいく。いやー、あの我孫子武丸が書いたとは思えない。『0の殺人』など一連の”ユーモア物”と全くタイプの違う作品。本の帯に「犯人の名前は、蒲生稔!」とある。それに間違いはないし、そもそもそれが発端。次々と殺人を犯す彼の行動が描写されていくが、はっきり言ってかなり気持ち悪い。猟奇もの、血液のダメな人は飛ばしながら読むことになるだろう(私もそうだった)。しかし、自分の息子が犯人なのではないかと疑う雅子、犯人を追おうとする樋口の行動とともに、全く目の離せない物語。ラスト6行の衝撃。もちろん、読み進めていくうちに想像がついた人はいるかもしれない。しかし、衝撃に変わりはない。思わず読み返してしまった。今まで馬鹿にしててごめんなさい。頭下げちゃいます。

93/6/19


鈴木光司 『リング』 角川書店 1991

*内容紹介/感想
女子高校生が2人、男子予備校生が2人、4人とも別の場所で原因不明の突然の心臓発作で急死する。4人はどうやら面識があり、一緒に旅行に行ったようだ。彼らの足どりを追ううちに内容不明のビデオテープが発見される。その中身を再生してみると。夏の夜に良いかもしれない、ぞっとする話。ビデオテープの内容の真実がわかった時はぎょっとしましたが。ま、それほどの恐怖はありません。しかし、例えば、見たら絶対に死ぬ、あるいは気が狂うぞといわくつきのものを入手したら、見る勇気ってありますか?

93/7/11


麻耶雄嵩「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」『奇想の復活』ミステリーの愉しみ5 立風書房 1992

*感想
『奇想の復活』には、他にも有栖川有栖、竹本健治、法月綸太郎、綾辻行人など全部で19名の作品が入っています。"あの"『翼ある闇』に対してフェアじゃないとさんざん文句を言った私ですが、『翼〜』はともかく麻耶雄嵩は確かにすごい、とこの作品を読んで思った次第。探偵、メルカトル鮎が登場しますが、この中の彼ほど非道徳的な探偵はいないでしょう。あのように考えることが人間臭いことだとしても、彼の作品というのは、あまりにも醒めていて、冷たい、不条理な印象を受けてしまうので、どこに救いを求めていいのかとまどってしまうのです。こんなに宙ぶらりん。しかし、何度も読み返してしまうほど、たまらなく惹かれた作品でした。

93/7/11


P・D・ジェイムズ 小泉喜美子訳『女には向かない職業』ハヤカワ文庫HM 1987
P.D.James, AN UNSUITABLE JOB FOR A WOMAN, 1972

*内容紹介/感想
病気を苦に自殺した共同経営者のあとを引き継いで、一人で探偵稼業を始めたコーデリア・グレイ。自殺した男子大学生の死の理由を調べるのが最初の仕事だった。語れば語るほど離れていきそうなので、何も言えない。ただただずーんとした。ちょっと遅くなったけど、めぐりあえて良かった。大好き!

93/7/11


P・D・ジェイムズ 山室まりや訳『女の顔を覆え』ハヤカワ文庫HM 1993
P.D.James, COVER HER FACE, 1962

*内容紹介/感想
評判の悪かったメイドが殺された。その家の息子にプロポーズされたことをほのめかした夜に。彼女をよく思っていた人は、殆ど皆無のようで。著者のデビュー作。オーソドックスな構成に感じる。天才型の名探偵が登場するわけでもなく、たんたんと物語は進む。各自のアリバイがどうのこうのというよりは、殺された彼女に対する感情、各々の人間関係が描かれていて、あまり推理小説めいていない気もする。人間ドラマという感じか。そして、どこか乾いた空気を感じる。あるいは醒めたというべきか。シンプルな話ながら、不思議と犯人を当てることができず、そのわりに動機がわかると、妙に納得してしまった。

93/7/17


竹本健治『ウロボロスの偽書』講談社 1991

*内容紹介
竹本健治が連載を始めた本格推理にいつの間にか殺人鬼の手記がまぎれこみ始めた!奇々怪々な超ミステリー。

*感想
というわけで、あらすじを書こうと思っても説明のしようがないのであった。竹本健治の小説、殺人鬼の手記、そして芸者ミステリも紛れ込み、何がどこでどう区別がついているのか、どことどこがつながっていて、現実と虚構はどこで分けられているのか、全くもって?? になってしまう物語だった。それとも、ただ単に私の飲み込みが悪いだけなのか。しかし、こんなに枚数をさいて意味はあったのだろうか。読んだには読んだけれど、残るものがなぜかない。「小説」 と 「現実」 の交錯に関しては『匣の中の失楽』のほうが断然完成されているだろう。古本で700円で購入したんだけど、2500円出してたら、「損した」と思ったかも。綾辻行人、島田荘司などが実名で登場したりすることや、芸者ミステリについてはそこそこ楽しめたけれど。芸者ミステリの中で「そこはそれ」というのが流行語となったそうですが、酉つ九という芸者が使っていたセリフだったのね。彼女はなかなか魅力的ではある。

93/7/17


ビル・S・バリンジャー 大久保康雄訳『歯と爪』創元推理文庫 1977
Bill S. Ballinger, THE TOOTH AND THE NAIL, 1955

*内容紹介/感想
奇数章では、殺人に対する裁判の様子、検察側と弁護側との攻防が描かれており、偶数章では、奇術師がある女性と出会って、恋愛におちる過程が描かれている。全く関係のないように見えるこの二つの話が、それぞれ独立して進んでいくのだが、ご想像通り実は関係があるのだ。途中から、袋とじになっています。ここから先、読むのをやめられたら現金をお返しします、という。しかし、やっぱりやめられませんでした。いいところなんだもの。ある意味で、完全犯罪の話、かな。少し古くささは感じるけれど、まあそれなりに面白かった、かな。

93/7/17


中西智明『消失!』講談社文庫 1993(1990)

*内容紹介/感想
あるバンドのアイドルのマリ、未亡人が溺愛していた裕二が殺された。そしてブティックによく顔を見せていた純が行方不明。三者に共通なのは、赤毛であること。マリ、裕二の場合、被害者も犯人も忽然と姿を消している。意外な犯人にびっくり。また、被害者の"正体"にも。うまくだまされてみたい人に。

93/8/


E・C・ベントリー 大久保康雄訳『トレント最後の事件』創元推理文庫 1972
Edmund Clerihew Bentley, TRENT'S LAST CASE, 1913

*内容紹介/感想
財界の有名人が殺された。容疑は美貌の夫人にかかるが。これが発表された1913 年頃は、探偵と恋愛を結び付けるのはタブーだったようで、そういう点から見ると新鮮だったのでしょう。今となっては珍しくもない話ですが。その方面での期待は、あまり期待しないほうがよいようです。思ったよりあっさりしていて、悪く言えばなくてもよい。付け足し程度のものです。とはいえ、事件の真相そのものは、なかなか。こういうのをどんでんがえしというのでしょう。あまり読まれていないようですが、もっと読まれてよいような気がします。読みにくさや古くささを感じることはありませんし。しかし、自分が悪くない場合でも容疑がかかりそうな場合はつい嘘をついてしまうものなのでしょうが、逆にますます疑われる場合もあるでしょうし、そこは難しいところ。本当のことを話して信じてもらえれば一番いいのでしょうけれど、偶然が重なった結果のあまりにも信じ難い事実の場合、信じてもらえる可能性というのは低いものだろうし。ただ、逆に嘘をつきたい場合に、それだけを隠し他は全部真実を述べるというやり方は、有効なのかもしれません。

93/8/5


P・D・ジェイムズ 小泉喜美子訳『皮膚の下の頭蓋骨』ハヤカワ文庫HM 1987
P.D.James, THE SKULL BENEATH THE SKIN, 1982

*内容紹介/感想
ある孤島で舞台がひらかれることになったのだが、演じる女優の元へは前から脅迫状が届いている。何かが起きるのでは、と案じ、女私立探偵、コーデリア・グレイに護衛として同行してもらうことにするのだが、まさかの殺人が起きてしまう。重厚な読みごたえのある作品。あまりに圧倒的な悪。ラストの必死の脱出には、こちらの息が詰まる思い。あんなふうに悪と対峙する場面は、普通では考えられないこと。いかにも物語。しかし、「もっと有能な私立探偵なら被害者と容疑者の顔写真を持ってきていて見分けてもらっているだろうに」などと思うところは、いかにも現実的。そしてまた、とある場面では、お茶をごちそうになっている時に「何もかも打ち明けてしまいたいという突然の、あらがいがたい衝動にかられ」てしまう彼女が、ごく自然。そんなバランスが結構好きです。解説でも述べられていますが、”本書の結末は、ミステリ史上類がないものと言えるだろう。”物語の終わりは、この本の最終ページではなく、ずっと彼方にあるよう。私たちが追うことができたのは通過点まで? 最近読んだ他のミステリが、うすっぺらく思えてしまった。

93/8/7


依井貴裕『記念樹 −Memorial Tree−』東京創元社 1990

*内容紹介/感想
大学のゼミの中で起きた殺人事件。密室がらみの。「青春ミステリ!」という感じ。良くも悪くも。最後の4,5ページで明らかにされる動機ですが、附に落ちないなー。こんなんで人殺しちゃっていいの? 「そうか、う〜む」とうなってしまうような動機が好きなので厳しくなってしまう。本の中で密室講義が展開されますが、密室ってそんなにこだわりたいものなのでしょうか。

93/8/15


麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』講談社ノベルス 1993

*内容紹介/感想
「真宮和音」という"アイドル"とともに共同生活に入った人々がいた。そのメンバーたちが、20年ぶりに、かつて生活した島に集まることになった。烏有という青年、桐璃という少女も、雑誌の取材目的の為に同行する。「和音」を巡っての謎。「和音」と似すぎている桐璃。そして起きた連続殺人。

ああ、いったいどこから書けばいいのだろう。頭の中をいろいろな考えが渦巻いてしまってます。出発から戻ってくるまでの1週間の話。第一日目がこの本の発行日と一緒というのがなんとも。あるページにきたときに、ドッキリしてしまいました。本文の記述の仕方による面が大きいのでしょうが。孤島、不可思議な建築方法の屋敷、何年ぶりかの再会、連続殺人、いかにもの道具立てが全て出そろっている感じですが、何とも重い内容でした。キリスト教、黙示録、原罪、キュビスムなどがキーワードとしてあげられるでしょう。また、同じ人物が二人いたらどちらを選択するのか、という問題が最後に絡んできます。一同を集めての、犯人対探偵による対決は見られません。"一応の終結" をした後の最後の2ページで探偵、メルカトル鮎が一言残すのみです。いわゆる一般の "解決" というものはなされていない、と言って良いような気がします。またもや宙ぶらりんの感じ。伏線がバシバシという感じで、続編が書かれるのではないかと期待してたりするのですが。やたらと漢字をつかう書き方や、衒学めいた話、できすぎた設定に「なんだこれは」と思う人もいるでしょうが、好みの問題。私自身は久々にしっかりはまってしまいました。今年印象に残った本の上位にあげてしまうだろうな。『翼ある闇』で頭に来た人も、麻耶雄嵩なんか知らないという人も、とりあえず読んでみてほしいです。う〜ん、確かに万人向けじゃないことは認めます。でも、読んだ後に、結末について読んだ人と話がしたくなる本だ〜。

93/8/15


謎>夏と冬の奏鳴曲
***以下、ネタバレ注意***

同じくこの本を読んだ友達と、いろいろ意見を交わしてみました。(Mは友達、Nは私)読めば読むほど隠し扉があるようで、際限ないのですが。(Specialthanks to MRSa.)

・武藤は編集長と面識がある、というか「逢ったことがある」って言っている(最初の取材のとき)。二十年はずうっと島で暮らしてたはずだ。(M)

・多分、島に集まった人々は自らの手で「黙示録」を演じに来たのではないんだろうか。それを知ってたかどうかは謎だけど。(M)

・「春と秋の奏鳴曲」という映画は、「黙示録」の前のもの。その映画の中で、彼は自分の過去がそのまま映し出されていると感じた。和音は桐璃、ヌルは烏有、20年も前の映画だというのに。編集長にしてみれば未来が見えていたわけか? 「黙示録」自体が、20年後の和音島で起きることだったのか。水鏡は、実は武藤だったわけで、武藤が「黙示録」を書いていたんでしたね。20年後に再び来ようというのは、やっぱり「黙示録」を演じになのだろうか。でも、意識的に? 「黙示録」 って預言書でしたっけ? だとしたら、書かれていたことは、演じられるんじゃなくて、20年後に起きることになるわけ? 決められていた未来?(N)

・烏有が子供の頃、犠牲になってくれた大学生の妹は、結局桐璃だった・・・んですよね? 黄色がかった目。年齢差も一致する。(N)

・トリカブトの花言葉は「復讐」ってのにも意味があるんだろうか。(M)

・桐璃自身も文中で謎めいた言葉を残してたりっていうのが多い。(N)

・「うゆー」と「うゆう」、密かに表記が違うことに読んでる途中で気づいた。(M)

・桐璃が「うゆう」さんと呼びかけている時の会話は、不可思議なものが多い。「私の名前を知ってるか」「忘れないでねと言いつつ鈴を渡す」「二重人格について」「どちらを選ぶか」、、そして最後に「傷を負ってない桐璃」に出会うのは、「うゆう」のほうである。というか、その桐璃は「うゆう」と呼びかけている。(N)

・結末は、多分家屋倒壊で思わず手を放してしまったか、運良く自分だけツブれずに助かったか、でしょう。(M)

・烏有は自分から(桐璃を)選択したんではないと思う。だから、ラストの烏有は落ちついてる、というかほっとしてるのではないのだろうか。でないともっと悩んでるはずではないのか。あれだけ一人の青年に対して呪縛されてたし。(M)

・桐璃は、烏有に対して必ずどちらかの呼び方(表記)をしているが、島が海に沈んで最後に呼びかける時は初めて「烏有さん」となっている。つまり、「うゆうさん」と呼ぶ桐璃なのか、「うゆーさん」と呼ぶ桐璃なのか、読者にもわからないまま。(N)

・題名の「ソナタ」に意味はないのか?(M)

[ソナタ]普通、ソナタ形式に始まり、四楽章から成る、器楽の独奏曲。[ソナタ形式]ソナタ・交響曲などの第一楽章の形式。主題の提示・展開・再現の三部形式をとる。 

新明解国語辞典・第四版

・やっぱり和音は和音島に存在していたんだと思う。和音は「本質」だから、ありのままの姿を残すわけにはいかなかったのではないのか。だから神父の肖像画を廃棄したというのがあるのでは。(M)

・映画の場面と実際の場面の違いも、密かに文末の表現を変えてる。(M)

・深読みして真鍋夫妻が鍵をにぎってるのか、というのはどうだろう。実はあの記事は烏有のことを書いてて…、とか。(M)

・烏有は桐璃のことを「両親とも健在」といってるけど、桐璃の黒服は「母親の形見」といってる。この矛盾はなんだろうか。結城にそう説明してる記述がある。桐璃の両親に隠されたひみつでもあるのか。(M)

・桐璃が父親のことを話す時、何かあるようなそぶりを見せる。 ただしこれは 「うゆうさん」 と呼びかけている時。「私のお父さんをどう思う?」などと聞いている。(N)

93/8/24


井上夢人『あくむ』集英社 1993

収録作品
「ホワイトノイズ」「ブラックライト」「ブルーブラッド」「コールデンケージ」「インビジブルドリーム」

*感想
「悪夢」というよりは、「あくむ」という表現の方が、確かにしっくりきてます。なぜだろう。彼の書く文章は、分かりやすく、頭にすんなり入ります。その分、ダイレクトに理解できすぎてしまい、怖くなってしまいます。難しい言葉や、詳しすぎる状況説明なしの簡単な日本語で、ここまで怖くなることができるのだな。怖いし気持ち悪いしで、つまり私の嗜好にはあまり合っていなかったのですが、そこはそれ、怖いものみたさと引きずり込まれる文章のなせる技。夜眠る前に、一人で静かに読んでみては。さて。近ごろ夢をみてない人は、ご用心。

93/8/19


井上雅彦『竹馬男の犯罪』講談社ノベルス 1993

*内容紹介(裏表紙より)
サーカス芸人専門の養老院「天幕荘」。事件の幕は、密室内の奇妙な殺人に始まる。犯人の足跡は壁の中に消えていたのだ。住人はかつて超人的な芸を誇ったスター達である。彼らの前に密室は果たして存在しうるのか!? アクロバティックな一世一代の離れ技、見事に決まった着地にブラボーを。魔術的新本各の傑作。

*感想
「元サーカス団員を集めた養老院」などという特異な設定。そういう点では、雰囲気も良く伝わってくるし興味深かったと思います。ただ、あの探偵にもっと活躍してほしかった。どちらかというと、読者に謎が提示されるのと同時に物語が進むのではなく後から真相がわかるタイプなので、気に入らない人もいるでしょう。殺人事件の謎よりも、とある人物の正体が気になっていた私です。まさかねー、そういうことだったとは。ちょっと物悲しい話ですね。

93/8/22


ウィリアム・L・デアンドリア 真崎義博訳『ホッグ連続殺人』ハヤカワ庫HM 1981
William L.DaAndrea, THE HOG MURDERS, 1979

*内容紹介/感想
3週間のうちに6人もの殺人が発生。犯人だと名乗る人物は、"HOG"という署名でしめくくった犯行声明を残してゆく。殺された人々の間に共通項もなく、人々は恐怖におびえるばかり。いったい、"HOG"とはなにものなのか。最後の数行を読むと、え、そうなの、そうなのー? となる。うなってしまう〜。言葉遊びが結構出てくる。読み易いようでいて頭を使う内容の本だった。解説にも書いてあるが、"HOG"が何を指すのかと考えていって"***"に到達するくだりは面白い。小さな玉手箱を開けてゆくような終盤の展開が楽しかった。うまく言えないけれど、さかさまをいく! という感じ(ほんとにうまく言えてない)。

93/9/6


江戸川乱歩『孤島の鬼』創元推理文庫 1987(1930)

*内容紹介(とびらより)
私(蓑浦金之助)は会社の同僚木崎初代と熱烈な恋に陥った。彼女は捨てられた子で、先祖の系図帳を持っていたが、先祖がどこの誰ともわからない。ある夜、初代は完全に戸締まりをした自室で、何者かに心臓を刺されて殺された。その時、犯人は彼女の手提げ袋とチョコレートの罐を持ち去った。恋人を奪われた私は、探偵趣味の友人、深山木幸吉に調査を依頼するが、何かをつかみかけたところで、深山木は衆人環境の中で刺し殺されてしまう!

*感想
途中ではやめられないほど面白かった。胸がドキドキ、ハラハラ、ぞくぞく。あらすじに書かれているその後から、物語はぐぐっと展開し、謎が明らかになっていく中盤では、久しぶりにめくるめくような陶酔感を得られた気がします。原点にかえった面白さ。同性愛、双子、奇形、離れ島、宝探し、洞窟、頭に浮かんだキーワードを並べてみるとこんなです。すすめてくれた友人曰く、「夜11時過ぎに、読むように。できれば土曜日が良い」とのこと。やはり、そのほうが良いでしょう。一人でぞくぞくしながら読んで、夜も更けたというのにやめられなくなります。外出時にももちろん持参したはいいものの、ばかなことにに置いてきてしまったりします。で、読めない夜を悶々として過ごすのです。そういう本でした。

93/9/10


竹本健治『妖霧の舌』光文社カッパ・ノベルス 1992

*内容紹介/感想
類子&智久シリーズの第二弾。少女誘拐事件が多発。店のパソコン画面に突然怪文書が出現。天才棋士の対戦相手がいきなり失踪。そして、パソコン売り場での怪文書に騒いでいた少女が、殺される。これらの事件に関連はあるのだろうか。類子&智久シリーズの第三弾、『眠れる森の惨劇』を読む前に積ん読だったのを引っ張り出してみました。第一作目の『凶区の爪』はすっかり忘れており「たいしたことなかった」という印象しか残っていないのですが、それよりかはマシだと感じました。軽く読みたい時にどうぞという感じでしょうか。犯人は確かに意外なのですが。『眠れる森の惨劇』を読まれる予定の方は駆け足でも読んでおいたほうが『眠れる〜』を楽しめるかもしれません。ただ単に、類子&智久を追うという観点からの理由ですが。

93/9/14


竹本健治『眠れる森の惨劇』光文社カッパ・ノベルス 1993

*内容紹介/感想
北海道のミッションスクールで生徒の死体が発見される。彼女はいわゆる"問題児"だった。殺人ではないかとの思惑や、彼女をめぐるさまざまな思いが寮の中で交錯する中、もう一人が犠牲になって。類子&智久シリーズ、第三弾。なかなか面白かったです。ただ、もっと深められるのではないかとも思ったのですが。この辺でいいか〜、とやめてしまってる印象がなきにしもあらず。でも、こういう題材は嫌いじゃありません。結末も。好き嫌いはわかれそうですが。途中でいきなり智久が思い悩むし。事件と関係あることで悩むようなのですが、いやはやどうも。あの「感情」は必要だったのかしらん。私は類子嬢がかわいそうだったぞ。類子&智久の歴史(おおげさ)を追ってきた私としては。何だかわからない人は、とりあえず『凶区の爪』からはじめてみてください。類子&智久の物語として読んだほうがいいのかもね、このシリーズは。純粋推理を求めるよりも。

93/9/14


加納朋子『魔法飛行』東京創元社 1993

*内容紹介/感想
大学生の駒子が物語を書いてみようと思い立ち、それを瀬尾さんという人に宛てている形をとった連作です。4編収められていて、それぞれの物語の最初と最後が駒子と瀬尾さんの手紙になっています。瀬尾さんの手紙は、物語に対する解決編といった感じになっています。そしてまた、その4編のまとまりの間に挿入される、見知らぬ人からの駒子へ宛てた手紙の存在があります。なんともまあ、穏やかで優しい気持ちになれる物語たち。いいですね、こういうの。ほんわりとして、毒気が全くない。いい意味で純粋培養といった風で、こういう話は大好きです。やわらかな、ロマンチックといった感じ。最後の物語が最初の話にもつながっていくようで、それによって最初の物語から最後の物語への流れは、直線ではなく大きな輪を描く感じです。彼女の最初の作品、『ななつのこ』も絶対読みたくなりました。

93/9/23


佐々木丸美『崖の館』講談社文庫 1988(1977)

佐々木丸美『水に描かれた館』講談社文庫 1988(1978)

佐々木丸美『夢館』講談社 1980

*内容紹介/感想
『崖の館』は、人里離れて北海道に住む、姪と伯母の館に集まったいとこ一同が、2年前の千波といういとこの事故死に疑問を持ち、殺人だったのではないかと再調査を始める、という内容。心理に重きがおかれており犯人の動機は哲学的と言えるかもしれない。『水に描かれた館』は、『崖の館』以降の話。館の財産の鑑定の為に招いた客人の中に、どうやら招かれざる客がいる模様。何の意図があるのだろうか。そして、やはり殺人事件が発生する。謎めいた雰囲気の中で。『夢館』は、『水に描かれた館』の解決編というか、番外編というといいかもしれません。『水に〜』で出会えなかった男女の、その後。三部作になっていますが、それぞれを独立した話とも読めなくはないと思います。ただ『崖の館』はいいとしても、あと2作に不明な点が出てきてしまうかもしれませんが。もし全部読むのだったら、"絶対"この順番に読んでいかないとダメです。キーワードとしては前世、輪廻転生、精神医学、超常現象、心理学、といったところでしょうか。いわゆる物質的トリックを使って解明されるようなミステリではありません。人間の心理って不思議だなと思えた内容。読み終えて、何だか 夢の中を歩いてきたようです。ロマンチックでもあり、人によって好き嫌いはあるかもしれませんが、不思議な気分になれると思います。まあ、信じる信じないは別にして、そういうこともあるかもしれないという気持ちで読んでみると、興味深く読めるのでは。私はこういうのが好きなので。

93/10/21


江戸川乱歩「闇に蠢く」『暗黒星 他一編』春陽堂(江戸川乱歩文庫) 1988

*感想
まさか、こんな話になるとは思わなかったよう。失踪の謎ときかとたかをくくってたら、後半に入って一気にあんなにおぞましくなって。ねっとりとした文章が内容と一致してる。すごいものを読んでしまった。これもやはり、深夜、一人で読むのがよいのだろうな。気持ち悪くなってもしらないけど。

93/10/3


綾辻行人『四〇九号室の患者』森田塾出版 1993

*内容紹介/感想
装丁に凝りたかったようですね。作品としては短編集の中に入れたほうが良かったように思います。そのほうが逆に評価できたような気がするのですが。これでは装丁負けといった感じがなきにしもあらず。ところで、最初のほうで私は正解がわかってしまいました。こんな予想が当たってしまうなんて、こわいな。でも、当たってしまう人は多いと思います。これは、ジャプリゾの『シンデレラの罠』へのオマージュだそうですので、知っているとふむふむと納得できて面白いと思います。

93/11/28


綾辻行人『殺人鬼』双葉社 1990

*内容紹介/感想
サマーキャンプで起きた、大量殺人。見境なく人が殺される。それも、残忍な方法で。さて。実は、あとがきを読んで激しく後悔。ホラー、スプラッターだから、そういうのがダメな人は読まないようにとのこと。でも、最後に仕掛があるから、ダメな人も読めとなってており、泣く泣く読了しました。なるほどねの仕掛はあるものの、私にとっては気持ち悪いのを我慢してまでのものだったのだろうか? と思ってもみたり。スプラッターがお好きな人はどうぞ。私はやっぱりダメだ。お金もらってもホラー関係の映画はみたくないし。

93/12/13


竹本健治『閉じ箱』角川書店 1993

収録作品
<クラブ>「氷雨降る林には」「陥穽」「けむりは血の色」「美樹、自らを捜したまえ」「緑の誘い」
<ダイヤ>「夜は訪れぬうちに闇」「月の下の鏡のような犯罪」「閉じ箱」
<ハート>「恐怖」「七色の恐怖のための絵本」
<スペード>「実験」「闇に用いる力学」「跫音」「仮面たち、踊れ」

*内容紹介/感想
帯に「ホラーミステリーの傑作」とあったので、血みどろだったらどうしようと一瞬考えたのですが、その心配はありませんでした。身体的ではなく、精神的に恐怖を抱かせる、幻想的な物語たちでした。彼らしい(?)、「だから、結局はどーなの?」と言いたくなるような不可解な終わり方のものもありますが、その宙ぶらりんが実は心地よかったりするのです。

4つのパートに分かれていますが、1番目<クラブ>はどちらかというといかにも「ミステリ」といった感じのオーソドックスなもの。2番目<ダイヤ>は、ちょっとSF的な感じもする幻想的な物語たち。宙ぶらりん感は、ここから強くなってゆきます。3番目<ハート>には、解説の山口雅也氏も絶賛の「恐怖」。わずか数ページの作品ながら、「恐怖」以外のなにものでもない作品。そして、少年が主人公の連作が収められていますが、これがまた幻想的で不安な気持ちになるような話ばかり。最後の4番目<スペード>のパートに収められているのは、千尋という女性を中心に据えた話ながら、お互いの物語の間には多分何の共通点もないのだろうという物語たち。こういうのを読むと、麻耶雄嵩の「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」をつい思い出してしまい、もっと読みたくなってしまう! 私は宙ぶらりんが好きなのでしょうねえ、きっと。

93/12/30


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