back to top page/back to ホンの感想
*ちょこっとした感想を「日記のフリ」のほうに書くこともあるので、そちらもどうぞ。*
山田風太郎『誰にもできる殺人』廣済堂文庫 1996(1967)
*内容紹介(裏表紙より)
アパート「人間荘」16号室の押入れから一冊のノートが発見された。そこには、その部屋に住んだ代々の住人が書きついだ人間観察、人間荘で起きた6件の犯罪--錯覚による殺人、出来心による殺人、善意による殺人、怠慢による殺人、正当防衛による殺人、口ふうじのための殺人--の記録が綴られていた。何故に、ひとつのアパートを舞台に住人たちの間で連鎖犯罪が起きたのか?
その背後には恐るべき真実が・・・・・・。
*感想
さながら「殺人見本デパート」という感じの連作。ある一つのアパートでこんなにたくさん犯罪が起きてしまうのなら、たしかに殺人は「誰にもできる」のかもしれない。
最後の最後まで、なにかあるな、と匂わせて、引っ張って、まさにそのとおりではあるんだけど、予想より高かった。いきなりスリラーって感じ。やるなあ。
99/1/13
*内容紹介
恋愛沙汰で転職、新しい職場でひたすら頑張る僕。そこの職場に謎めいた女性、水無月がいる。年齢不祥、ただのおばさん?
でも、社長と仲が良さそうで、派手なスポーツカーに乗ってたという人もいる。ちょっと見、怖さを感じる人。昔の彼女に押しかけられた僕は、水無月に救われるが、「彼女の気持ちもちょっとわかるのよね」という言葉のまま、彼女の過去が語られることになる。
*感想
水無月が恋に落ちつづけてくのと同じくらいのスピードで、読み終えた気がする。
恋愛の達人を相手にどこまで渡り合えるのか? くらいに、水無月の気持ちに同調して読んでしまう。うお、はまってるなー、もう抜けられないぞ、でもそこまでやるの? そこで気持ちをセーブしたほうがいいのに、ってハラハラするけれど、結局は、うーむ唸るしかない。
終盤に、それまで知らなかった事実が出てきて、構成に感心してる間に、恋愛のほうは「やっぱりそうだよね」と思ってることが、最後の最後でどんでん返しされる。
水無月さんを見てみたい。
99/1/28
北村薫編『謎のギャラリー 特別室U』マガジンハウス 1998
『謎のギャラリー』が好評だったのか、北村薫によるアンソロジーがもうひとつ編まれた。
*収録作品
「私のノアの箱船」。一番好き。ゴフスタインという作家は初めて聞いたけれど、他の作品も読んでみたい。いい贈物になりそうな物語。「舟の長さは300キュービットにするのだ」。カタチのある思い出も、悪くないなあ。
「光と影」。なにか夢中になって、勉強や仕事が手につかないってことは、誰にでも経験はあるはず。でも、対象が影であって、実態と対をなすものだとしたら、ちょっと不吉なものを感じない? 『ドラえもん』の中にあった、自分の影に乗っとられそうになる話を思い出す。
「死者のポケットの中には」。こういうあぶなっかしい話は、いかに読者をハラハラさせるかにかかってる。場の状況と心理状態、その描写で、どれだけ読者に想像力を働かせられるのか。そして、それは充分伝わってきた。フィニイには、「スタイル」がある。最後のあっけないほどのオチも、きっとそうなんだろう。
「二十六階の恐怖」。北村薫によれば、前作と対として読んで欲しかったらしい。そうそう、同じ場の状況にある二人。でも、心理状態は全く正反対なんだね。オチ的には、こっちのが少し驚いたのに、好きなのは、「死者のポケットの中には」のほう。
「親指魚」。どう表現していいのか。とっても日常的で、生活プンプンの描写から1ミリズレていきなりシュールレアリズム、って感じだったなぁ。
「お父ちゃん似」。9歳の男の子が書いたという。そう、小さい子ならではの、残酷さが漂う。
「狐になった夫人」。珍しく、物語全体の雰囲気というより、細かいところに惹かれた。なんて淡々とした。彼がちゃんと生きているのがいいんだ。それが人生だもん。
99/1/29
新藤悦子『エツコとハリメ 二人で織ったトルコ絨毯の話』情報センター 1988
*内容紹介
トルコの女性はいったいどんなことを考えているのか知りたくて、じゅうたん織をしたいというカムフラージュの動機を持って村に入り込んだ著者の体験記。期待していたより、アッサリしていた。随分込み入った話もあるのだけど、絨毯の話もなかなか詳しいので、印象として両方同じ、というか、印象に残らないような感じもした。
99/1/29