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1998年12月の感想

ちょこっとした感想を「日記のフリ」のほうに書くこともあるので、そちらもどうぞ

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第二の銃声(A・バークリー) (12/7)
夜よ鼠たちのために(連城三紀彦) (12/22)
不安な童話(恩田陸) (12/28)
死の匂い(K・アルレー) (12/30)

アントニイ・バークリー 西崎憲訳『第二の銃声』国書刊行会 1994
Anthony Berkeley, THE SECOND SHOT, 1930

*内容紹介(表紙折り返しより)
探偵作家ジョン・ヒルヤードの邸で作家たちを集めて行われた殺人劇の最中、被害者役の人物が本物の死体となって発見された。殺されたのは放蕩な生活で知られる名うてのプレイボーイ、パーティには彼の死を願う人物がそろっていた。事件の状況から窮地に立たされたピンカートン氏は、その嫌疑をはらすため友人の探偵シェリンガムに助けを求めた。錯綜する証言と二発の銃声の謎、二転三転する論証の末にシェリンガムがたどりついた驚くべき真相とは? 緻密な論理性、巧みな人物描写とプロットの妙。本格ミステリの可能性を追求しつづけたバークリーの黄金時代を代表する傑作。

*感想
ほんとうにすごいと思う、バークリーは。何冊か読んでいると、どうしても「今度はなにをするんだろう」と期待してしまうし、その期待の方向っていうのも決まっていて、「だいたいこんなところへ着地するだろう」って予想してしまっている。そんなふうな期待があるのに面白かったと言えるのは、それだけ読ませるってことだと思う。

某作品のことは不思議と思い出さなかった。解説を読んで、は、なるほど、という程度。私がバークリーに読むものは、犯人がどうの、動機がどうの、人物描写がどうの、そういうところももちろん楽しむんだけど、「真相っていうのはね・・・」「謎というのはね・・・」、というそこの「・・・」に当たる部分を楽しんでいるのだと思う。全体をくるんでいる、その考え方が気に入っているんだろうなあ。

『毒入りチョコレート事件』(短も長も)は読んでない、っていうの、おかしいんかな? それ以外では、『試行錯誤』(『トライアル&エラー』)が、すごい! 最高傑作だ! と思ってます。

98/12/7


連城三紀彦『夜よ鼠たちのために』ハルキ文庫 1998

*内容紹介(裏表紙より)
世田谷の某総合病院にかかってきた脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が相次いで殺害された--白衣を着せられ、首には針金が二重に巻きつけられているという奇妙な姿で・・・・・・。妻の復習のために次々と殺人を犯していく一人の男の執念を描いた表題作をはじめ、意外な結末の余韻が心を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作全九篇を収録した短編集。

*収録作品
「二つの顔」「過去からの声」「化石の鍵」「奇妙な依頼」「夜よ鼠たちのために」「二重生活」「代役」「ベイ・シティに死す」「ひらかれた闇」

*感想
緻密で、あっと驚く結末ぞろい。連城三紀彦を読んだ中(『愛情の限界』『戻り川心中』『どこまでも殺されて』『運命の八分休符』では一番楽しめました。

ただ、これは私の気分の問題なのですが、無理矢理でも本を読む、ような姿勢で読んでしまったため、矛盾するようですが、楽しんで読めなかった。もっと読みたい気分の時に勢いをつけて読みたかったと思う。ブツブツと中途半端に中断しながら読んでしまって、著者に対して悪いなあ、という気分。

9つの中から3つ選ぶとしたら、「夜よ鼠たちのために」「二重生活」「奇妙な依頼」を、この順位で。あまり意味ないけど。

98/12/22


恩田陸『不安な童話』祥伝社ノンノベル 1994

*内容紹介(裏表紙より)
「あなたは母の生まれ変わりです」大学教授秘書の古橋万由子は、二五年前に変死した画家高槻倫子の息子秒に告げられる。遺作展で、万由子は強烈な既視感(デジャ・ヴ)に襲われ、「鋏が・・・・・・」と叫んで失神したのだ。倫子もまた避暑地で、何者かに鋏で首を刺されて殺されたのだと言う。なぜ万由子は、自分が生まれる前に死んだ倫子の記憶を持つのか? 真相を追い始めた矢先、放火、脅迫、襲撃と奇妙な事件が続発した!

*感想
恩田陸の物語は、読み始めるとやめられなくなる。「他人の生まれ変わりかもしれない」私、これだけでもう充分魅力的な謎。でも、まさか、このまま「生まれ変わりでした」で終わらせる著者でもあるまいし・・・、と読み進めていくのがまた楽しい。手の内は、ちゃんと明らかにされている。だんだんと予想がつき始めた時には、もう別の謎が目の前に展開している。

やっぱりキチンと合理的に終わらせるんだな、とページを閉じかけた時に、目の端に何か妙なものが見えたような感じがする・・・。え、もしかして? そんな読後感。最後まで面白い。

98/12/28


カトリーヌ・アルレー 望月芳郎訳『死の匂い』創元推理文庫 1963
Catherine M. Arley, TU VAS MOURIR!, 1953

*内容紹介(とびらより)
アメリカの大富豪の一人娘ステラは美貌と金に恵まれ、奔放な生活を送っていた。ところがある日、父親が卒中で倒れ、世界中の名医が見放したその病症を奇跡的に治療した青年医師が彼女の人生に登場することになった。ステラは彼にひかれ二人は結婚する。しかし真面目な医学者と虚飾に満ちたステラとの夫婦生活には初めから不気味な死の匂いがただよっていた。

*感想
価値観の違いがもたらす悲劇と言ってしまえばそれまで。しかし、登場人物3人(前半は2人と言ってもいい)で繰り広げられる駆け引きだけで、読まされてしまう。行く末の方向は予想がつくけれど、サディスティックな気持ちでそれを見てしまう私。後味の悪さに精神的な吐き気をおぼえるような感じなのに、ときどきアルレーを手にとってしまう。シンプルさと、すっきりとした残酷さが刺激なんだろうな、と思う。アルレーはこれがデビュー作。今から40年以上も前に書かれたとは思えない。

98/12/30


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