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ヘッドハンター/M.スレイド

Headhunter/M.Slade

1984年発表 大島 豊訳 創元ノヴェルズ ス3-3,4(東京創元社)

 犯人の名前まではともかく、その正体についてはだいぶわかりやすくなっているのではないでしょうか。例えば、〈ヘッドハンター〉の徘徊を恐れていたはずのジョアンナ・ポートマンが“ほっと安心のため息を”ついた(上巻80頁)のはなぜか。あるいは、客を取るつもりだったヘレン・グラボウスキィが、ドライヴァーの顔を見た途端に捨て台詞を残して立ち去ろうとした(上巻29頁)のはなぜか。このあたりを考えると、女性の警官という正体に思い至るのは難しくないでしょう。

 上巻357頁には、“スカーレットは、自分がほとんど真実に触れるところまで肉薄していたことにはついに気がつかないことだろう。そしていかに真実からかけ離れていたのかも。”と思わせぶりな記述がありますが、これはもちろんスカーレットの二番目の仮説、“ヘッドハンター特捜本部に属する(中略)一人が、特捜本部を挙げて捜し求めているその殺人犯である可能性もある”(上巻355頁)のことであり、また容疑者を“男”に限定してしまったことを指しているのでしょう。

 被害者たちが暴行されていることがミスディレクションとなっていますが、これはもちろんエピローグに登場する“悪魔の舌”を使ったものです。この“悪魔の舌”が、“スパーキィ”の(おそらく)最初の殺人を描いた場面(上巻313頁)で登場しているところを見逃すべきではないでしょう。アヴァコモヴィッチが遺体から発見した黒檀の欠片の意味も、最後にようやく明らかになっています。

 なお、生き残った者は再登場するというシリーズの基本原則のもと、〈ヘッドハンター〉も後の作品に登場します。とりあえず本書では罪を免れていますが、その後どうなるかは予断を許しません。

2004.10.11 / 10.12読了

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