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13人目の探偵士/山口雅也

1993年発表 講談社ノベルス(講談社)

 三人の探偵士による多重解決という趣向は面白いと思いますし、それぞれが他の探偵士を犯人と指摘するところも楽しいのですが、いずれも部分的な捜査にとどまり、あまりにも杜撰なものになっているところが気になります。分量の問題もあるかとは思いますが、物足りなく感じられるところです。

 この事件は結局のところ、ノベルス版290頁のキッドの台詞につきると思います。探偵を標的とした連続殺人事件を計画した犯人が、途中で死んでしまったにもかかわらず、その犯人自身も探偵であったために被害者だと誤認されてしまうという巧妙なトリック。しかも、実際には先に死んだシャーロック・ホームズ・ジュニアが最後の犠牲者だと考えられたことで、ますますそのトリックが補強されているのです。この、犯行順序が前後した経緯についての説明も十分納得できるもので、全体として非常によくできていると思います。

 細かいところでは、現れたり消えたりするユニークなダイイングメッセージが秀逸です。しかも、ダイイングメッセージを残した“猫”が、無理な姿勢で文字を書かなければならなかったことが手がかりとなっているところもよくできています。

 もう一つ、記憶を失った近松林太郎の正体については、キッドが指摘したエレベーターの手がかりもさることながら、本文途中に挿入されている新聞記事の伏線がよくできています。ロンドンを訪れた探偵たちを紹介する写真付きの記事ですが、これをじっくりと読んでみると、近松林太郎が(おそらく)左端の、西洋人的な顔立ちの人物であることがわかります。これは作中で言及されている“私”の外見に合致するもので、遊び心に満ちた面白い伏線だと思います。

2003.06.27再読了

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