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サル知恵の輪/霞 流一 |
2005年発表 (アクセス・パブリッシング) |
作中でも指摘されているように、第二の事件までの猿の見立てはかなり弱いのですが、第三・第四の事件での見立てによって補強されるという、“見立てのフィードバック・ループ”の構図がよくできています。また、猿の見立ての裏側に隠された秀吉の見立てという二重の見立ても面白いと思います。マンションの屋上の鯉の死骸から金のシャチホコまでは思い浮かんだのですが、一夜城とは気づきませんでした。ただ、二重の見立てそのものの出来については、作者の他の作品((以下伏せ字)『首断ち六地蔵』(ここまで))に一歩譲るところがあるのが残念。 前世への執着という見立ての動機はなかなか無茶なものですが、あくまでも殺人の動機は別にあって見立てはそのおまけと考えれば、それほどあり得ないことではないように思います。 犯人を特定するロジック(ハンカチ)は他の作品に比べると少々物足りませんが、まずまずといっていいでしょう。しかし、犯人が罠にかかってしまったのは納得のいかないところです。「宇宙猿人ゴリのテーマ」がCD化されているのかどうかがそもそも疑問ですが、少なくともそこらのCDショップで簡単に手に入るとは考えにくいでしょう。とはいえ、犯人の心理としてはやはり無理からぬところでしょうか。 前作『おさかな棺』で重要な役割を果たした精神科医・宇大公彦の再登場には何事かと思いましたが、まさかこうくるとは思いもしませんでした。織田信一が叙述の中で自分の名前を使わなかった理由(というよりも心情)は納得できるものですし、作者としても“織田信一”という名前から読者の注意をそらす必要があったでしょうから、単なるサプライズではない、ある程度必然性のあるトリックといえるでしょう。 2005.12.08読了 |
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