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試行錯誤/A.バークリーTrial and Error/A.Berkeley |
1937年発表 鮎川信夫訳 創元推理文庫123-04(東京創元社) |
ラストでは真犯人が明かされていますが、これはどんでん返しというよりはおまけのようなものでしょう。もちろん、この真相によってトッドハンター氏のキャラクターが一層際立っているのは間違いないところですが、例えばC.ディクスン『ユダの窓』とはやや違った意味で、“真犯人は誰か?”という謎がどうでもよくなってしまう稀有なミステリといえるのかもしれません。 ネタバレなしの感想に書いたように、この作品で探偵役のチタウィック氏は、トッドハンター氏の犯行を裏付ける手がかりや証拠を探す役割を請け負います。これがもしロジャー・シェリンガムであったならば……『第二の銃声』や『地下室の殺人』をお読みになった方は納得いただけるかと思いますが、シェリンガムはその性格上、(以下伏せ字)説得力のある偽の手がかりをあっさりとでっち上げてしまう(ここまで)ことでしょう。そうなると以後の展開に支障を来すことは目に見えています(もちろん、最終的には(以下伏せ字)チタウィック氏も偽の証拠を作っている(ここまで)わけですが)。したがって、この作品にシェリンガムが登場しなかったのは必然といえるのではないでしょうか。 2002.01.02読了 |
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