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謀殺の翼747/山田正紀

1989年発表 C★NOVELS(中央公論社)

 まず、ハイジャック計画の方ですが、被害者となるはずの葉山プロジェクトと実行犯グループの間に密約があったというのは、やや反則のようにも感じられますが、面白いと思います。特に、ハイジャックを利用してゲリラに活動資金と武器を提供するという動機は斬新なものといえるのではないでしょうか。また、墜落を装って802便を建設中のゴルフ場に着陸させるというアイデアもよくできていると思います。

 ところが、その裏にあるE-4B奪取計画の方はさらに巧妙です。802便とE-4Bを空中ですりかえ、802便の方をE-4Bの身代わりとして撃墜させるという途方もないアイデアで、乗客の命を度外視し、すべてを実行犯グループに押しつける悪魔のような計画です。

 自分たちが騙されていたことを知り、水上と対決しようとする島村。その胸中には、水上に対する自分の信頼を裏切られた怒り、チャイヤイたちに対する仲間意識から生まれた復讐心、そして玲子に対する愛情など、様々な感情が渦巻いています。この複雑な心理が印象に残ります。

2000.11.14読了