弔鐘の荒野/山田正紀
1986年発表 (双葉社)
というわけで、“国際サスペンス・ミステリー”(帯のコピー)が一瞬にして時間テーマのSFへと変化しています。やや唐突ではありますが、ネタも一応理論的には実現可能とされているものですし、さほど無茶なものには感じられません。しかも、タイムトラベル自体ではなく、そこから派生した“よみがえった死者”の謎を物語の中心に据えてあることで、何ともいえない不思議な味が出ています。
いずれにしてもこの作品は、ストレートなSFを出版することが難しくなっていた時代における、山田正紀なりの抵抗なのでしょう。
2000.12.06読了