愛しても、獣/山田正紀
1993年発表 (双葉社)
この作品でミステリ的に面白いのは、やはり“第一の被害者の爪が剥がされていたのはなぜか?”でしょう。通常の精神状態であればこんなことはしないとは思いますが、被害者(綾子)と芳雄との関係を考えるとこの行為にも説得力があると思います(泡坂妻夫の某短篇(以下伏せ字)「ジグザグ」(『花火と銃声』・『奇術探偵 曾我佳城全集』に収録)(ここまで)にも似ているのではないでしょうか)。謎としてはさりげなく扱われていますが、芳雄の受けた衝撃の大きさがうかがえる真相で、物語が深みを増していると思います。
2000.10.22読了