詩詞世界　碇豊長の漢詩　天安門革命詩抄　元宵高遠致意

高遠致意
　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　元宵

　　　　　　　　　　　　　在米留学生　朱海洪

東風拂面催桃李，
鷂鷹舒翅展鵬程。
玉盤照海下熱涙，
遊子登臺思故國。
休負平生報國志，
人民有我勝萬金。
憤起直追振華夏，
且待神洲遍地春。

　

******

東風　面を拂ひて　　桃李を催（うなが）し，
鷂鷹　翅を舒（ひろ）げて　　鵬程を展ず。
玉盤　海を照らせば　　熱涙　下り，
遊子　臺に登りて　　故國を　思ふ。
負（そむ）くを　休（や）めよ　　平生　報國の志，
人民　我　有りて　　萬金に勝（まさ）る。
憤起して　直ちに追へ　　　華夏を　振はすを，
且（しば）し　待て　　神洲　地に遍（あまね）き　春を。

　　　　　　**********

◎　私感注釈：

※元宵：「元旦」に対応する旧暦一月十五日の夜祭り。この作品は蔵頭詩であることを隠して、人民日報の海外版に載せられたもの。「高遠致意」ともして伝わる。遙か離れたところから気持ちを伝えるの意。　・致意：気持ちを伝える。挨拶をする。この作品は、第２次天安門事件（１９８９年）（六四天安門事件、六四民運）以降の、国外で発表されたものである。これも藏頭詩の一種で、「李鵬下臺平民憤」の語句が隠されている。李鵬は当時の総理。現・中国全人代常務委員長。「下臺」は、辞職する。野に下る。舞台から降りる。「李鵬下台平民憤」

東風拂面催桃李，
鷂鷹舒翅展鵬程。
玉盤照海下熱涙，
遊子登臺思故國。
休負平生報國志，
人民有我勝萬金。
憤起直追振華夏，
且待神洲遍地春。

※東風拂面催桃李：春風は、顔に吹きかかってきて、モモやスモモの花の咲くのを促している。　・東風：春風。　・拂面：顔に吹きかける。李煜『柳枝詞』「風情漸老見春羞，到處消魂感舊遊。多謝長條似相識，強垂煙穗拂人頭。」

がある。　・催桃李：モモやスモモの花の咲くのを促す。　・催：せきたてる。
※鷂鷹舒翅展鵬程：タカは翼を拡げて、鵬は洋々たる前途を見ている。　・鷂鷹：〔えうよう（現代かなづかいでは「ようよう」）；yao4ying1〕ハイタカ。トビ。　・舒翅：「舒展」広げる。・展：・鵬程：洋々たる前途。大志。
※玉盤照海下熱涙：（故郷を偲ばせる）月光が海を照らせば、熱い（愛国の）涙が流れてくる。　・玉盤：月影をいう。　・照海：海を照らす。　・下：ふらす。おろす。下す。　・熱涙：熱い（愛国の）涙。
※遊子登臺思故國：異郷の地にいる者がたかどのにのぼって、故国（の山河や身内）を思い偲ぶ。　・遊子：旅人。異郷の地にいる者。　・登臺：たかどのにのぼる。高いところにのぼって、故郷や身内を思い偲ぶ。≒登高。　・思故國：故国を思う。
※休負平生報國志：平素、国事に尽力することを、顧みないことは、やめよ。　・休：…するな。…やめよ。　・負：そむく。捨てて顧みない。ほったらかしにする。　・平生：平素、日常。生涯。　・報國志：国恩に報いようとする志。　・報國：国恩に報いる。国事に尽力する。
※人民有我勝萬金：わたしには、何者にもまさる人民がいる。　・人民：民衆。統治されている人々。　・有我：わたしには…がある。わたしがいる。　・勝萬金：多額の金にまさる。　・勝：まさる。　・萬金：多額の金。
※憤起直追振華夏：奮い立って、ひたすら中国の振興を追求し。　・憤起：奮い起こす。奮い立つ。　・直追：ひたすら追求する。　・振華夏：中国を興隆させる。　・振：振るい起こす。　・華夏：中国。中国の美称。

※且待神洲遍地春：中華の地一面に、春が訪れるのをしばらく待とう。
　・且：しばし。しばらく。　・待：待て。　・神洲：中華の地、中国の美称。

　・遍地：辺り一面みな。いたるところ。

◎　構成について：

　　七言詩だが全く押韻せず、韻脚がない。意味内容が優先している。定型詩の形をとっているが、平仄には全然配慮をしていない。この作品の平仄は次の通り。

○○●●○○●，
●○○●●○○。
●○●●●●●，
○●○○○●●。
○●○○●●●，
○○●●●●○。
●●●○●○●，
●●○○●●○。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

２００４．４．１１
　　　　　４．１２