四月十七, 正是去年今日。 別君時。 忍涙佯低面, 含羞半斂眉。 不知魂已斷, 空有夢相隨。 除卻天邊月, 沒人知。 |
女冠子
四月 十七,
正に是れ 去年の 今日。
君と 別れし 時。
涙を忍びて 佯(いつは)りて 面を低げ,
羞(はぢら)ひを含みて 眉を斂む。
知らず 魂ひ 已に斷たれ,
空しく 夢に 相ひ隨ふ 有り。
天邊の月を 除卻せば,
人の知る 沒(な)し。
****************** 私感訳注: ※女冠子:詞牌の一。双調(単調、異体もある) 四十一字。換韻。この作品は、もう一つの女冠子と聯章詞(聯章体=同一の事柄を複数の詞で詠み、セットで一纏まりとなっているもの)になっている。この詞は、女性の側に立って描かれている。 ※四月十七:(初夏の)四月十七日。一年前のこの日に、恋人と別れて、ちょうど再びその日が巡ってきた。 ※正是去年今日:ちょうど、去年の今日だった。 ・正是:ちょうど。是だけの意味は特にない。 ※別君時:あなたと別れた時(は)。 *ここでは、女の立場で詠っているので、「君」とは男を指す。「あの方と別れたとき」。 ※忍涙佯低面:涙をこらえて、(見られないように)偽ってうつむいて。 *涙をこらえても流れるのを見られるのが嫌で、偽ってうつむくこと。 ・忍涙:涙を流すのをこらえる。 ・佯:いつわる。ふりをする。まねをする。ここは前二者。涙を見られるのが嫌で、偽ってうつむくこと。 ・低面:顔を伏せる。 ※含羞半斂眉:恥じらいの表情を見せて、少し眉根を寄せて、つらそうな表情をした。 ・含羞:恥じらいの表情を見せて。 ・半斂眉:少し眉根を寄せて、つらそうな表情をする。 ※不知魂已斷:いつの間にか、魂はとっくに断たれてしまい。 ・不知:知らない。気づかない。わからない。…かもしれない。ここでは前者。 ・魂已斷:こころは、既に(冷え、愛しい人を慕う思いは)断ち切られてしまった。魂:こころ。たましい。肉体に対して使う。肉体に宿る精気。 ※空有夢相隨:むなしく夢で追いかけている。 ・空有:むなしく…だけがある。 ・夢相隨:夢の世界では逢っている。 ・相:逢う対象となるものがある(いる)ことを表す。また、言葉のリズムを取るために使う。ここでは「相互に」の意味はない。 ・随:(人に)ついていく。付き従う。転じて逢う。ここでは女性が男性に逢い、逢って随うこと。 ※除卻天邊月:空にある月を除いては。 ・除卻:除く。 ・卻=却:…し去る。…し捨てる。動詞の後ろに付き、強調する。滅却、破却、忘却などの却と同様の用法。 ・天邊月:空にある月。 ※沒人知:(俗・現代語)誰も(わたしの心を)知らない。 ・沒人知=沒有人知。「無人知」に近い。没有:…ない=無。 ・沒:(白話)打ち消し。文章語の「無」にほぼ同じ。 ◎ 構成について
双調(単調・異体あり) 四十一字。換韻。韻式は「aaBB AA」。但しこの作品は「aaBB BB」となっている。韻脚:「七日 時眉 隨知」になる。 「七日」:第十八部入声。「時眉隨知」:第三部平声。 ○●,(仄韻) ●○●。(仄韻) ●○○,(平韻) ●○○●, ○○●●○。(平韻) ○○●●, ●●○○。(平韻) ●○○●, ●○○。(平韻) 以上のようになる。 |
2001.4.11 4.13完 8.27補 2002.3.21 |
次の詩へ 前の詩へ 花間集メニューへ ******** 碧血の詩編 辛棄疾詞 李U詞 李清照詞 秋瑾詩詞 歴代抒情詩選 天安門革命詩抄 毛主席詩詞 碇豊長自作詩詞 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 詩詞用語解説 詩韻 《天安門詩抄》写真集 参考文献(宋詞・詞譜) 参考文献(詩詞格律) 参考文献(唐詩・宋詞) |
メール |
トップ |