李煜采桑子詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩　李いくliyu

liyu LiYu 漢詩
　

　采桑子

庭前春逐紅英盡，
舞態徘徊。
細雨霏微，
不放雙眉時暫開。

綠窗冷靜芳音斷，
香印成灰。
可奈情懷，
欲睡朦朧入夢來。

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采桑子
　　　　　　　　　　　　　

庭前に　春は紅英を逐ひて盡き，
舞態　　徘徊す。
細雨　　霏微として，
雙眉を　　時暫も　開か放（し）めず。

綠窗　冷靜にして　　芳音　斷たれ，
香印　　灰と成る。
情懷を　　奈（いか）んとす可（べ）き，
睡（ねむ）らんと欲せば　朦朧として　　夢に入り　來る。

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私感注釈

※采桑子：詞牌の一。詳しくは下記「構成について」を参照。

※庭前春逐紅英盡：庭先に、赤い花は春を追いかけて、春と共に終わろうとしている。　・庭前：庭先。母屋の前の庭。「亭前」ともする。　・春逐：春の季節は…を追いかけて。　・逐：追いかける。追い払う。　・紅英：（赤い）花びら。ここでは、赤い花。　・紅：あかい。ピンク色（の）。　*赤くなくとも広く花びらをいう。　・英：はなぶさ。花びら。　・盡：つきる。

※舞態徘徊：（花びらが）舞いながら散ってゆくさまは、ひらひらとあてどなくさまよっている。　・舞態：（花びらが）舞いながら散ってゆくさま。　・徘徊：うろつく。

※細雨霏微：小雨は、ふりしきっている。　*作者の心にも、細雨がふりしきっている。　・細雨：小雨。　・霏微：〔ひび；fei1wei1○○〕雨や雪などのこまやかに降るさま。小雨のふりしきるさま。

※不放雙眉時暫開：（降りしきる小雨は、わたしの心にも降り注ぎ、愁いのために）しばしの間も眉は開かれることはなかった。　・不放：（降りしきる小雨は、）…させない。≒不教。　・放：しむ。≒教。　・雙眉：二つのまゆ。　・時暫：しばし（も）…。　・開：ここでは、顰めた眉を開くこと。

※綠窗冷靜芳音斷：女性の方は、冷たくさびしくなり、すばらしい便りは、たたれてしまった。　・綠窗：女性の部屋（の窓）。　・冷靜：さびしい。落ち着いて静かなこと。　・芳音：（すばらしい）便り。お手紙。また、花だより。　・斷：たたれる。

※香印成灰：印香のしるしの部分も（全て）燃え尽きて灰となった。時間も過ぎてしまった。　*無為に過ごした、時間の経過をいう。　・香印：印香。香の上にしるしがついており、どこまで燃えたかで、時間を計る。漏刻（水時計）ならぬ、いわば線香時計。　・成灰：灰になる。

※可奈情懷：どうにもこうにもしようがないこの気持ち。　・可奈：どうにもこうにも（しようがない）。にくたらしい。がまんできない。　・情懷：気持ち。心持ち。

※欲睡朦朧入夢來：眠ろうとすると、ぼんやりと夢に出てくる。　・欲睡：眠ろうとする。　・朦朧：もうろうと。ぼんやりと。はっきりしない。　・入夢來：夢に出てくる。

◎　構成について

醜奴兒ともいう。四十四字　（双調）　平韻。韻式は「AAA　AAA」。韻脚は「徊微開　灰懷來」で、第三部平声五微（微）、八齊十灰（灰徊）、第五部平声十灰（灰開來）。

　　　○●○○●，
　　　●○○。（韻）
　　　●○○，（韻）
　　　●○○●●○。（韻）

　　　○●○○●，
　　　●○○。（韻）
　　　●○○，（韻）
　　　●○○●●○。（韻）