一櫂春風一葉舟, 一綸繭縷一輕鉤。 花滿渚, 酒滿甌, 萬頃波中得自由。 ![]() |
一櫂(たう)の春風 一葉の舟,
一綸の繭縷(けんる) 一輕の鉤。
花は 渚に 滿ち,
酒は 甌に 滿つ,
萬頃の波中に 自由を 得(う)。
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私感注釈
※漁父:詞牌の一。詳しくは下記「構成について」を参照。声に出して歌われていたことがよく分かるリズミカルな作品である。
※一櫂春風一葉舟:櫂や舟に春風が吹いてくる。後世、陸游は『鵲橋仙』で「一竿風月,一蓑煙雨,家在釣臺西住。賣魚生怕近城門,況肯到、紅塵深處。 潮生理櫂,潮平繋纜,潮落浩歌歸去。時人錯把比嚴光,我自是、無名漁父。」 と詠う。 *舟遊びを「櫂」と「舟」の二語に分けて、「一…」でリズムを取っている。 ・一:ささやかな。たった…だけ。身軽で伸び伸びとしたさまを表し、後半の「滿」「萬頃波中」「得自由」と好対照をなしている。形としては「一……,一……。」でリズムを取っている。 ・櫂:棹。かい。舟をこぐかい。・春風:・一葉舟:一艘の舟。 ・葉:ここでは「…艘の」。助数詞(量詞)小舟などの軽くて小さいものや時期等を数えるのに用いる。
※一綸繭縷一輕鉤:一本の絹の釣り糸に小さな釣り針。 *「繭縷」と「鉤」の二語に分けて、「一…」でリズムを取っている。 ・一綸:一本の糸。 ・綸:〔りん;lun2〕糸。釣り糸。ここでは、量詞「(一)本の(糸)」「(一)筋の(糸)」として使われている。 ・繭縷:〔けんる;jian3lyu3〕絹糸。生糸。ここでは、釣り糸を指す。 ・輕鉤:小さな鈎。小さなかぎ。ここでは、釣り針をいう。 ・輕:かろやかな。小さなさまをいう。
※花滿渚:花はなぎさにいっぱいに咲き。 ・花:春の花。 ・滿:いっぱいに咲いている。 ・渚:なぎさ。みぎわ。
※酒滿甌:酒は深い杯に満ちている。 ・滿:いっぱいになっている。 ・甌:酒器。深い杯。湯呑み状の深い酒杯。「花滿渚,酒滿甌」この世での至高の情景。
※萬頃波中得自由:(この)広々とした川面の上で(宮廷とは異なって、やっと)自由を手に入れられた。唐・張志和の『浣溪沙』「釣臺漁父褐爲裘,兩兩三三舟。能縱棹,慣乘流,長江白浪不曾憂。」 や、柳宗元の『江雪』「千山鳥飛絶,萬徑人蹤滅。孤舟簑笠翁,獨釣寒江雪。」
の趣がある。 ・萬頃:一頃=百畝≒6.667ヘクタール。広い面積をいう。 ・波中:江中の水面に。 ・得:獲得した。 ・自由:ここでは、前半で詠った舟遊びや釣りなどのリラックスできたことをいう。
◎ 構成について
単調。二十七字。平韻字一韻到底。韻式は「AAA」。韻脚は「舟鉤渚甌由」で、第十二部平声十一尤。
●○○●●○,(韻)
○
●●○○。(韻)
○●●,
●○○,(韻)
○
●●○○。(韻)
2004.4.19 4.20完 |
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