撃壌歌
撃壤歌
日出而作,
日入而息。
鑿井而飮,
耕田而食。
帝力于我何有哉。
**********************
。
撃壤歌
日 出
(い)
で而
(て)
作り,
日 入り而
(て)
息
(いこ)
ふ。
井を鑿
(うが)
ち而
(て)
飮み,
田を耕し而
(て)
食
(くら)
ふ。
帝力 我に于
(お)
いて 何か有らん 哉
(や)
。
******************
◎ 私感訳註:
※撃壤歌:上代歌謡。晉の皇甫謐『帝王世記』による。『古詩源』巻一「古
逸」のトップを
飾る。上古、堯の世の歌という。この題意は、普通、堯帝の世に老翁が、撃壌の遊戯(クツ投げ)に興じながら歌ったことというが、ここではやはり、地面をたたいて拍子を取るという、太平無事の世の形容で、鼓腹撃壌の意。「わたしが生きていくのは、わたし自身の努力のおかげであって、誰の世話にもなっていない。」という、凄い歌。必ずしも労働讃歌といえるものではなく、大らかでアナーキーな歌である。 ・撃壤:地面を敲いて拍子を取ることで、太平無事の形容。また、古代の遊戯で、木製のクツに似たものを地面に立てて、他の一つを投げて中てるという、マトあてゲーム。
※日出而作:日が出て朝になると、耕作をし(始め)。 ・日出:日が出る。朝になると。 ・而:動詞等を繋ぐ働きをする。ここでは、下記「◎ 構成について」にもあるリズムをとる働きもしている。 ・作:仕事をする。耕作をする。つくる。なす。
※日入而息:日が沈んで夜になると休み憩う。 ・日入:日が沈む。夜になると。 ・息:いこう。休む。
※鑿井而飮:井戸を掘っては、飲み水を手に入れて飲む。 ・鑿井:井戸を掘る。井戸を穿つ。現代語でも使う息の長い言葉。 ・鑿:(さく;zao2)ほる。 ・飮:飲む。
※耕田而食: ・耕田:田を耕す。畑を耕す。農作業をする。ここでは、自分の力に頼って、自力で働くこと。現代語でも使う。 ・田:畑。田畑。 ・食:食べる。生きる。ここでは、自分の力に頼って、自力で糧を得ること。
※帝力于我何有哉:(堯)帝の権力は、わたしにとってはどのような(影響力が)あろうか。(別にない。) ・帝力:堯帝の権力。天帝(神)の威力。 ・于我:わたしにとっては。わたしには。「於我」ともする。 ・何有哉:どのような(影響力が)あろうか。この歌を歌った時、前半の「日出而作,日入而息。鑿井而飮,耕田而食。」と、最後の「帝力于我何有哉。」との間には、大きな段落を表す音楽的表現があったろう。
◎ 構成について
『詩經』よりもなお上代の歌謡で、『帝王世記』による。入声韻を使っている。韻式は「aaa」韻脚は「作息食」。第五句の「哉」は虚字脚
としても、押韻がよく分からない。『詩經』と同様の韻の踏み方をしていよう。「而」字の重複からくるリズムで、調子をとっているのがわかる。『詩經』や『楚辭』の「兮」字と同じ働きをしている。これは中世の唐詩の韻律では、次のように
○○●●○○
…
●●○○●●
…
平仄の互換からくる美しさをねらっているのに対し、この上代の『撃壤歌』や『詩經』『楚辭』は、それとは大きく異なったものであり、全くの別の規律があるといえる(下図参照)。次のように「而…」を繰り返すことで、合唱の歌声を整え、一層リズミカルにしているのが分かる。声に出して「歌う」という要請からできた規律なのだろう。
「
日出
而
作
,
日入
而
息
。
鑿井
而
飮
,
耕田
而
食
。
〜〜〜〜
帝力於我何有哉
。」
次の平仄はこの作品のもの。
●●○●,(韻)
●●○
●,(韻)
●●○●。
○○○●,
(韻)
●●○●○●○。
何となく、次のような感じもするが、前例がないので、どうか分からない…。
●●(韻)而●,(韻)
●●(韻)而
●,(韻)
●●(-ng)而●。(-n)
○○而●,
(韻)
●●○●○●哉。
2003.1. 7
1. 8
1.13完
2004.3. 7補
3.19
2007.4.25
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