支那逐魔歌

四鄰環繞欲逐逐,
失權割地無時止,
這等人兒還昏昏,
如夢如醉如半死。
吁嗟乎!
我國精華漸枯竭,
奈何尚不振衣起?
無心無肝無腦筋,
支那大魔首推此。


******


支那    魔を逐ふ歌
四鄰 環繞  逐(ひとつ)また逐( ひとつ)ならんと欲(し),
權を失ひ 地を割くこと  止
(とど)まる時無し,
(これ)等 人兒  還(な)ほ 昏昏として,
夢みるが如く 醉へるが如く  半ば死せるが如し。
吁嗟乎
(ああ)
我が國の 精華  漸く 枯竭せんとして,
奈何
(いかん)ぞ 尚ほ 衣を振ひて  起たん?
無心 無肝  無腦筋,
支那の 大魔  首
(はじ)めに 此れを推す。

                 

           **********
◎ 私感注釈

※支那逐魔歌:中華の地より「魔」(無自覚でやる気のない無能な中国人=自覚しない中国人)を追い払う歌。 ・支那:中国。中華。ここでは漢民族の国家の意。清末、中国が大清と号していた満洲民族王朝の時に、「漢民族の国家」ということを表す語として孫文(孫文については未確認)、魯迅、秋瑾、柳亜子等の漢民族主義者が使っている。現在(96年)もわたしが北京で買った雑誌でも使われていた。この語は、漢訳仏典からのもので、秦が語根で転訛したという。欧州の言語のSino,Sina,China等とも同根とみられる。蛇足だが、ロシア語で中国(人)という意味はキタイスキーと云うらしい。これは契丹から来たのか。同義では、大漢とも云う。 ・逐:追い払う。駆逐する。 ・魔:悪魔。ここでは、中国にとって害になるものを指し、無自覚な中国人のことになる。

※四鄰環繞欲逐逐:(中国は)周りからだんだんと取り囲まれてきた。 ・四鄰:四隣。四囲の国。周り。周囲。 ・環繞:(現代語)取り囲む。 ・欲:…(んと)す。…になろうとしている。客観的に見て、そのような状態になろうとしている。主体的に欲して、…ほっす、…したい、の意味はここではない。 ・逐逐:だんだんと。次第に。一つまた一つと。逐一、逐次の逐の意で、ここは、駆逐、放逐の逐の意味ではない。

※失權割地無時止:権利を失い、国土を割譲することは、止まるところを知らない。 ・失權:権利を失う。列強に対する国権の譲歩を指す。 ・割地:列強に対しての国土の割譲、租界地の承認などを指す。 ・無時止:止まるその時がない。際限がない。

※這等人兒還昏昏:これらの人は、なおまた、ぼんやりとしている。 ・這:(現代語)これ。この。文言文の「此」とほぼ同じ働きをする。
※等:ら。 ・人兒:(現代語)ひと、人間らしさ。「兒」は接尾辞。「人」と「人兒」の違いはあるが、子供の意はない。 ・這等人兒:これらの人。無自覚な中国人らをいう。 ・還:(現代語)なお。まだ。 ・昏昏:(古・現代語)頭がぼんやりしているさま。また、眠りが深いさま。

※如夢如醉如半死:夢のようで、酔っぱらっているかのようで、半ば死にかかっているようである。 *自覚、覚醒のない様を云う。読み下し文では夢、醉、半死を動詞として表現したが、原文はそれぞれ名詞として使われている。後半の無心無肝無腦筋と 対になっている。

※吁嗟乎:ああ。〔xu1jue1hu1〕。ため息をついて嘆く声。歎声。

※我國精華漸枯竭:我が国の優れて麗しいことがらも、だんだんと涸渇してきた。 ・我國:ここでは漢民族の中華をいう。 ・精華:(民族、国体の)すぐれてうるわしいこと。 ・漸:だんだんと、次第に。上の読み下し文では、ようやく(やうやく)と読んでいるが必ずしも適切でない。 ・枯竭:(古・現代語)〔こけつ:ku1jue2○●〕枯渇すること。

※奈何尚不振衣起:どうして、衣を振り払って、しがらみを絶ち、起ち上がらないのか。 ・奈何:いかんぞ。どうして。 ・尚:なお。まだ。その上。 ・振衣:衣を振るう。俗塵を振り払う。晋・左思の詩句に「振衣千人仭崗,濯足萬里流」がある。俗世間のしがらみをうち捨てて立ち上がることをいう。 と、ここまで書いた後、日曜日の午後とて、少し休憩を兼ねて徐自華の《鑑湖女侠秋君墓表》を見るともなく見た。すると、そこに「…亦導同志拂衣歸。」の句があった。ここの「拂衣」とは、心中の怒りを表す動作である。もし、振衣が拂衣と同じ意味にとってよければ、秋瑾の詩句の意味は、「どうして憤りを以て立ち上がらないのか」となって、とてもよく意味が通る。如何。 ・起:たちあがる。

※無心無肝無腦筋:何の考えもなく恥を知らなくて、根性がなく、脳味噌がない。 *無気力な様を云う。無自覚な漢民族の中国人らを指す。 ・無心:(現代語)恥を知らない。何の考えもない。する気がない。 ・無肝:心がない。 ・無腦筋:(現代語)頭脳がない。脳味噌がない。

※支那大魔首推此: 清末中国の最大の問題点としては、第一に、この「無心無肝無腦筋の無自覚な人々」を挙げる。 ・大魔:ここでは最大の欠点の義。 ・首:第一に。トップに。首座、首席、首位の首の用法と同じ。 ・推:おす。挙げる。数え上げる。 ・此:これ。ここでは「無心無肝無腦筋の無自覚な人々」を指すことになる。





◎ 構成について
   現代詩。現代語を多用しており、平仄についても特に顧慮していない。韻脚は「止死起此」 上声韻の-i韻といえ、詞韻でいえば第三部上声になる。

●○○●●●●,
●○●●○○●。(韻)
●●○○○○○,
○●○●○●●。(韻)
○○○,
●●○○●○●,
●○●●●○●。(韻)
○○○●○●○,
○●●○●○●。(韻)

蛇足になるが、これは二段構成で、二分するとすれば
●○○●●●●,
●○●●○○●。(韻)
●●○○○○○,
○●○●○●●。(韻)

○○○,
●●○○●○●,
●○●●●○●。(韻)
○○○●○●○,
○●●○●○●。(韻)

となる。中間の「吁嗟乎」は、填詞の伝統形式からいえば過片となり、後半部分に属する。
                    
2000. 9. 2
      9. 3完
2001. 2.25
2003. 3. 8BM
2007.10.6   

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