白居易　憶江南　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩

　　憶江南
二 BaiJuyi BaiLetian　Bai Juyi Bai Letian　baijuyi bailetian　bai juyi bai letian 唐・白居易

江南憶，
最憶是杭州。
山寺月中尋桂子，
郡亭枕上看潮頭。
何日更重游。

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憶江南

江南の憶ひ，
最も憶ふは　　是れ杭州。
山寺の　月中に　　桂子を尋ね，
郡亭の　枕上に　　潮頭を看る。
何れの日か　　更に　重ねて游ばん。

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２００６．１０．９　下沙大橋附近（下図参照）にて

私感註釈

※白居易：中唐の詩人。７７２年（大暦七年）～８４６年（會昌六年）。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。

※憶江南：詞牌の一。詳しくは下記の「構成について」を参照。劉禹錫と唱和したときの一連の作其二。　其一

、其三

※江南憶：江南を回想する。白居易は杭州の刺史に任命されていたことがある。その時を回想している。蛇足になるが、現在杭州には「憶江南」牌のお茶がある。

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杭州。河は銭塘江。

※最憶是杭州：一番印象に残って思い出深いのは、杭州である。　・是：…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B：AはBである〕。　・杭州：浙江省の省都。銭塘江の河口北岸に位置する。銭塘、餘杭。後世、南宋時には臨安とも呼び、陥落した汴京に替わつて、首都となつた。『中国歴史地図集』第五冊隋唐五代十国時期（中国地図出版社）５５－５６ページ「江南東道」にある。

※山寺月中尋桂子：山寺では、月下に月に生えていると言い伝えられている桂の実を探し。　・山寺：ここでは、杭州の天竺寺を指していよう。白居易の「東城」詩に自註して「舊説杭州天竺寺毎歳秋中有月桂子墮」。或いは霊隠山の寺か。　・尋：〔じん；xun2○〕探し求める。　・桂子：桂の実。　・桂：桂花。月に生えるとされており、仲秋の満月の夜、しばしば月より桂子が墜ちて来るという。

モクセイ。蛇足になるが、現在も杭州市の花は桂花。

※郡亭枕上看潮頭：役所のあずまやでは、横になりながら、逆流の波濤を眺めた（ものだ）。　・郡亭：杭州の役所にある亭。役所のあずまや。　・枕上：枕辺。寝ながら。　・潮頭：（白話）波頭。潮の峰。杭州湾に注ぐ錢塘江の逆流現象（写真：上）。「浙江の潮」のこと。銭塘江は、杭州湾→銭塘江→富春江と、その海岸と河口の形がラッパ状のため、激しく起こる逆流現象。一種の津波（？）とも謂えるもので、仲秋の頃が一番激しく観潮で有名。柳永が「東南形勝，三呉都會，錢塘自古繁華。煙柳畫橋，風簾翠幕，參差十萬人家。雲樹繞堤沙。怒濤卷霜雪，天塹無涯。」

と歌っているのは、この作品の影響もあろう。秋瑾の詩句

にも出てくる。

※何日更重游：いつ、もう一度訪れることができようか。　・何日：いつか。　・更：さらに。その上。　・重游：もう一度訪れる。

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◎　構成について

　単調。二十七字（これは単調。別体三種あり）（望江南、謝秋娘、夢江南ともいう）　平韻　一韻到底。韻式は「ＡＡＡ」。韻脚は「州頭游」で、第十二部平声。

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