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十里黄雲白日曛,
北風吹雁雪紛紛。
莫愁前路無知己,
天下誰人不識君。
董大に 別る
十里 黄雲 白日 曛(くん)じ,
北風 雁を 吹きて 雪 紛紛たり。
愁ふる 莫(なか)れ 前路 知己(ちき) 無きと,
天下 誰人(たれひと)か 君を 識(し)らざらん。
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◎ 私感註釈
※高適:盛唐の詩人。702年頃〜765年(廣コ二年)。字は達夫。辺塞の離情を多くよむ。
※別董大:董大と別れる。董(とう;Dong3)は姓。大は排行。長男。琴工の董庭蘭といわれるが、未確認。
※十里黄雲白日曛:数キロに亘って、黄塵が舞い上がり、照り輝く日の光もくすんでしまって。 ・十里:数キロに亘る。唐代では、1里=559.8メートル。 ・黄雲:黄土の砂煙。黄塵、黄埃の意で使われている。同時代の李白の『烏夜啼』に「黄雲城邊烏欲棲,歸飛啞啞枝上啼。機中織錦奏川女,碧紗如烟隔牕語。停梭悵然憶遠人,獨宿空房涙如雨。」とある。 ・白日:照り輝く太陽。 ・曛:〔くん;xun1○〕薄暗い。夕陽のくすんだ日射し。赤黄色。黄昏(たそがれ)。夕方。
※北風吹雁雪紛紛:北風が(空飛ぶ)カリに吹きつけて、雪は盛んに乱れ降る。 *全くの余談になるが、この聯の詠む風光は、文字の上では理解できる。ただ、日本に住む者としては、イメージが湧かない。大陸の天候の凄さだけはよく伝わってくるが。 ・吹雁:(空飛ぶ)カリに吹きつける。 ・紛紛:〔ふんぷん;fen1fen1○○〕乱れ散るさま。多く盛んなさま。入り混じって乱れるさま。
※莫愁前路無知己:前途には、理解者である親友がいないと、愁いてはいけない。 ・莫:なかれ。禁止を表す。 ・愁:愁う。 ・前路:行くさき。ゆくて。これから先の行程。将来。前途。前程。 ・無:いない。 ・知己:〔ちき;zhiji3○●〕親友。理解者。自分の心や値打ちをよく知ってくれる人。
※天下誰人不識君:世の中のだれであっても、あなたのことを理解しない人はいない。世間の誰もが、あなたをよく理解している。 ・天下:国中。世間。世の中。 ・誰人:何人(なんぴと)。何人たりとも。だれであっても。 *「誰人+不…」として使い、「だれであっても…でない者はいない」=「だれもが皆…だ」の意。 ・識:見知る。合点して知識としてしっている。 ・君:ここでは、董大のことになる。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「紛君」で、平水韻上平十二文。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
●○○●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2005.1.4 1.5完 2009.8.4補 |
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