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經年不到龍門寺,
今夜何人知我情。
還向暢師房裏宿,
新秋月色舊灘聲。
五年の秋 病後に獨り香山寺に宿す 三絶句
其一
經年 到らず 龍門寺,
今夜 何人(なんぴと)か 我が情を 知らん。
還(ま)た 暢師(ちゃうし)の房裏に 向(お)いて 宿すれば,
新秋の月色 舊灘(きうたん)の聲。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。
※五年秋病後獨宿香山寺三絶句:開成五年の病後に、思うことがあって、独りで香山寺に宿泊した時の絶句。 ・五年秋:開成五年は、840年で、作者が六十九歳の時になる。 ・病後:作者は、前年の開成四年に風疾を得た。 ・獨宿:ひとりだけで泊まる。 ・香山寺:洛陽にある寺院の名。なお、この香山寺の北側の琵琶峰上に作者の墓園があり、白園と呼ばれている。龍門の東にあり、後出・龍門寺ともいう。作者が住んでいた近くになるか。白居易の隠棲後は、主にこの寺に依り、号の香山居士ここからきている。白居易は香山寺での交際も深く、「香山九老」として、香山寺を詠んだ詩作は極めて多い。三絶句中、これは其の一になる。
※經年不到龍門寺:長い年月、龍門寺に行かなかった(が)。 ・經年:長い年月。年数を過ごす。 ・不到:行かない。行こうとしなかった。意志の否定。 ・龍門寺:前出、香山寺のこと。
※今夜何人知我情:今夜の私の思いを誰が分かろうか。 *「生」、「老」、「病」の苦を味わい、やがて来る「死」を見つめるために香山寺にやって来たのだろう。 ・何人:なんぴと。誰。 ・知:分かる。知る。 ・我情:わたしの思い。わたしの感情。
※還向暢師房裏宿:また、文暢老師の宿坊に泊まることとなったが。 ・還:なお。なおまた。また。 ・向:於いて。介詞。 ・暢師:〔ちゃうし;chang4shi1●○〕香山寺の長老。文暢老師。 ・房裏:部屋の中。寺の宿坊の中。また、庫裏。僧房。 ・宿:泊まる。宿泊する。
※新秋月色舊灘聲:新たな秋(とはいっても)月の色や形(は、昔と変わることなくさわやかであり、)昔ながらの川のせせらぎの音(が聞こえてくる)。句中の対。 *不易の自然を詠うことで、移り変わる自分の姿を照らし出している。 ・新秋:初秋。陰暦七月のこと。 ・月色:月の色や形。この時期は、さわやかな感じをいう。 ・舊:昔ながらの。 ・灘:〔たん(だん);tan1○〕川の早瀬。川の流れの速いところ。 ・聲:音。
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◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「情聲」で、平水韻下平八庚。次の平仄はこの作品のもの。
○○●●○○●,
○●○○○●○。(韻)
○●●○○●●,
○○●●●○○。(韻)
2005.3.6 3.7 |
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