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獨上江樓思渺然,
月光如水水連天。
同來翫月人何處,
風景依稀似去年。
江樓にて 感を書す
獨(ひと)り 江樓に 上れば 思ひ 渺然(べうぜん)たり,
月光 水の如く 水 天に連なる。
同(とも)に 來(きた)りて 月を翫(もてあそ)びし 人は 何(いづ)れの處(ところ)ぞ,
風景 依稀(いき)として 去年に 似たり。
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◎ 私感註釈
※趙嘏:晩唐の詩人。元和元年(806年)頃〜大中六、七年(852年、853年)頃。字は承佑。楚州の山陽(現・江蘇省の淮安市楚州区)の人。若くして全国を遊歴した。大和七年の科挙試験に落第し、多年に亘って長安に留寓する。後、会昌四年(844年)に進士に合格する。渭南尉となる。
※江樓書感:川沿いの高殿で、去年のことを思い起こし、その時に偕に月を愛でた女性が、今はいなくなってしまった。その寂寥感をあらわした。
※獨上江樓思渺然:ひとりで川沿いの高殿(の上の方)にのぼれば、(今はいない女性への)思いは、遙かに果てしない。 ・獨上:ひとりで(建物の上の方に)のぼる。 ・獨:〔どく;du2●〕ひとりで。単独で。数の上で複数でないこと。。なお、「孤」〔こ;gu1○〕はひとりぼっちで、寂しさを漂わせた雰囲気の場合に使われる。独立⇔孤立。 ・江樓:川沿いの高殿(たかどの)。 ・思:ここでは、今はいない女性を思うことになる。 ・渺然:〔べうぜん;miao3ran2●○〕広々として果てしないさま。遙かに遠いさま。
※月光如水水連天:月の光は、空一面を覆う長江の水であるかのようで、天の(水平線の彼方で)長江の水と連なっている。 ・月光:月の光。中国では、月光は親人を偲ぶよすがでもある。宋・蘇軾『水調歌頭』「轉朱閣,低綺戸,照無眠。不應有恨,何事長向別時圓?人有悲歡離合,月有陰晴圓缺,此事古難全。但願人長久,千里共嬋娟。」 とある。 ・如水:空一面を覆う長江の水であるかのように。 ・水:江の水面。 ・連天:(水平線の彼方で)空に連なっている。李C照『點絳唇』「寂寞深閨,柔腸一寸愁千縷。惜春春去,幾點催花雨。倚遍欄干,只是無情緒。人何處,連天衰草,望斷歸來路。」とある。
※同來翫月人何處:(去年)一緒にやって来て偕に月をめでた(あのときの)女性は、(今)いづこにいるのだろうか。 ・同來:(去年)一緒にやって来た。 ・翫月:〔ぐゎんげつ;wan4yue4●●〕月を賞翫する。月をめでる。 ・翫:〔ぐゎん;wan4●〕めでて喜ぶ。手にとって遊び楽しむ。もてあそぶ。 ・人:ここでは、今はいない女性のことになる。 ・何處:どこ。いづこ。いづれのところ。
※風景依稀似去年:(変化を遂げる人間世界に対して)自然の風光は、ぼんやりと似かよったままで、去年の(女性と偕に観月した)時のようである。 ・風景:(変化を遂げる人間世界に対して)自然の風光。 ・依稀:〔いき;yi1xi1○○〕ぼんやりとして明らかでない。似ている。現代では、毛澤東の七律『到韶山』「別夢依稀咒逝川,故園三十二年前。紅旗捲起農奴戟,K手高懸覇主鞭。爲有犧牲多壯志,敢ヘ日月換新天。喜看稻菽千重浪,遍地英雄下夕煙。 」がある。 ・似:…のようである。…に似ている。…の如くである。 ・去年:去年の女性と偕に観月した時。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「然天年」で、平水韻下平一先。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○○●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2005.3.5 3.6 |
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