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      贈汪倫
              
                  李白 
李白乘舟將欲行,
忽聞岸上踏歌聲。
桃花潭水深千尺,
不及汪倫送我情。


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汪倫に贈る       
                       
李白 舟に 乘りて  將
(まさ)に行かんと欲(ほっ)し,
(たちま)ち 聞く  岸上 踏歌の聲。
桃花潭水  深さ 千尺
及ばず  汪倫が 我を送る情に。

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◎ 私感註釈

『聯珠詩格』巻十二より
※李白:盛唐の詩人。字は太白。自ら青蓮居士と号する。世に詩仙と称される。701年(嗣聖十八年)〜762年(寶應元年)。西域・隴西の成紀の人で、四川で育つ。若くして諸国を漫遊し、後に出仕して、翰林供奉となるが高力士の讒言に遭い、退けられる安史の乱では苦労をし、後、永王が謀亂を起こしたのに際し、幕僚となっていたため、罪を得て夜郎にながされたが、やがて赦された

※贈汪倫:汪倫に(詩を)贈る。 *想像だが、この詩は李白が当地でお酒をご馳走になり、この日の餞(はなむけ)の酒や歌に対する返礼としてのものになろう。ために汪倫は千載に名を遺した。 ・汪倫:〔わうりん;Wang1Lun2○○〕人名。県にある桃花潭の村人の名。常に美酒を醸造していて、李白を接待したという。(『李太白全集』宋・楊齊賢の註記に依る)。土地の長者、酒造家か。この『贈汪倫』と似た題名に、南朝・梁の庾信の『寄王琳』がある。ただ、現代の日本語漢音や現代北京語音の音では同じであったり似たものであっても、「(汪)倫」(wang1)lun2と「(王)琳」(Wang2)lin2とでは、異なった系統の語。前者は−nで、後者は−m。

※李白乗舟将欲行:李白が舟に乗ってちょうど出発しようとしていたとき。 ・乘舟:舟に乗る。舒渓、青戈江の流れに乗って帰って行くことをいう。 ・將:まさに…んとす。 ・欲行:ちょうど出発しようとしていたとき。

※忽聞岸上踏歌聲:急に踏歌の歌声が聞こえてきた。 *汪倫が李白を送別するために歌わせたものになろう。 ・忽聞:急に聞こえてきた。 ・岸上:岸辺で。 ・踏歌:手を繋ぎ、両足で足踏みをしてリズムを取りながら歌う民間歌謡の一形式。

※桃花潭水深千尺:桃花潭の水深は、深さが千尺(にもなるというが)。 ・桃花潭:〔たうくゎたん;tao2hua1tan2○○○〕県(現・安徽省東南の県)西南にある桃花潭。 ・水:ここでは、水深のことになる。 ・深千尺:深さは数百メートルにもなる。とても深いことをいう。

※不及汪倫送我情:汪倫がわたしを見送ってくれた情誼(の深さ)には及ぶべくもない。 *現代文革期の『親娘親不如毛主席的親』「天大地大不如黨的温情大,親娘親不如毛主席的親,千好萬好社會主義好,
河深海深不如階級友愛」を思い起こした。 ・不及:およばない。≒不如。 ・送我情:わたしを見送りに来てくれた思い。

               ***********




◎ 構成について

 韻式は、「AAA」。韻脚は「行聲情」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。

●●○○○●●,(韻)
○○●●●○○。(韻)
○○○●○○●,
●●○○●●○。(韻)


2005.4.30

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