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日暮蒼山遠,
天寒白屋貧。
柴門聞犬吠,
風雪夜歸人。
雪に逢ひ芙蓉 山の主人に 宿す
日 暮れて蒼山 遠く,
天 寒く白屋 貧し。
柴門 犬の吠 ゆるを 聞き,
風雪 夜に 人 歸る。
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◎ 私感註釈
※劉長卿:盛唐の詩人。709年?(景龍年間?)〜780年?(建中年間?)。字は文房。河間(現・河北省)の人。進士に合格して官吏となるも下獄、左遷された。ために、詩には失意の情感や離乱を詠うものが多い。五言詩に優れていることから「五言(の)長城」と称された。
※逢雪宿芙蓉山主人:たまたま雪にであって、芙蓉山の主人宅に泊まる。 ・逢雪:雪にであう。たまたま雪になる。 ・宿:泊まる。 ・芙蓉山:現・福建省侯県の北、福州の西にある。 ・主人:泊まった宿。主人宅。中唐・張志和『漁歌子』「西塞山前白鷺飛,桃花流水魚肥。笠,獄ェ衣,斜風細雨不須歸。」や中唐・柳宗元『江雪』「千山鳥飛絶,萬徑人蹤滅。孤舟簑笠翁,獨釣寒江雪。」に似たモチーフの作品である。ただ、引用二詩は、脱俗的で高踏な雰囲気があるのに対して、劉長卿のものは、作者の心情を反映して暗いものとなっている。
※日暮蒼山遠:日が暮れて、深いあおいろの山が遠くになって見え。 ・日暮:日が暮れる。後出の「天寒」と対になる。それ故、ひぐれ時、夕刻、日暮(にちぼ)といった名詞にはならない。この句は【〔主語・述語〕+〔主語・述語〕】という構成となっているため。なお、承句の「天寒白屋貧」も【〔主語・述語〕+〔主語・述語〕】という構成になっている。 ・蒼山:深いあおいろの山。 ・遠:遠く(にある)。
※天寒白屋貧:天候も寒く、茅屋も貧寒としている。 ・天寒:天の気候が寒く冷えている。 ・白屋:簡素な住み処(か)。白茅で屋根を葺いたもの。また、漆などの加工を施していない粗末な家屋。
※柴門聞犬吠:(粗末な)柴扉のところから犬の鳴き声が聞こえてくる(が)。 ・柴門:柴で作った門。柴戸。柴扉(さいひ)。柴折り戸。隠者の草庵の門などにいう。清・黄景仁の『別老母』に「搴帷拜母河梁去,白髮愁看涙眼枯。慘慘柴門風雪夜,此時有子不如無。」とある。 ・聞:聞こえる。聞こえて来る。 ・犬吠:〔けんは(ぱ)い;quan3fei4●●〕犬がほえる。
※風雪夜歸人:吹雪の中を夜に人が帰ってきた。 ・風雪:吹雪(ふぶき)。風と雪。風まじりの雪。 ・夜:夜に(なる)。 ・歸:(本来の居処である自宅に)帰る。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「貧人」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は次の通り。
●●○○●,
○○●●○。(韻)
○○○●●,
○●●○○。(韻)
2005. 5. 1完 2007. 4.27補 2018. 9.27 2020.10. 7 |
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