搴帷拜母河梁去, 白髮愁看涙眼枯。 慘慘柴門風雪夜, 此時有子不如無。 |
老母 に別る
帷 を搴 げ 母に拜して河梁 に去らんとし,
白髮愁 へて看れば涙眼 枯 る。
慘慘 たる柴門 風雪 の夜,
此 の時子 有 るは 無きに如 かず。
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◎ 私感訳註:
※黄景仁:清の詩人。乾隆十四年(1749年)〜乾隆四十八年(1783年)江蘇省武進県の人。字は仲則。号して鹿菲子。貧困と病弱に苦しんだ。その詩は、多愁多感で、叙情性に富む。
※別老母:老いた母に別れる。
※搴帷拝母河梁去:(家の入口の)とばりを巻き上げて、母にぬかずき、川にかけた橋を渡って(遠くに別れて)行こうとすれば。 ・搴:〔けん;qian1◎〕かかげる。巻く。取る。 ・帷:とばり。ここでは、入り口に掛けるカーテンのこと。=門簾。防寒のために家の入口に垂れ下げる、薄いふとん状の暖簾。・搴帷:とばりを巻き上げる。家を離れて遠くへ旅に出る意。 ・拝:ぬかずく。あいさつする。また、おがむ。 ・河梁:川にかけた橋。送別の地の趣がある語。『與蘇武詩三首』の其三には「攜手上河梁,遊子暮何之?…行人難久留,各言長相思。」とある。 ・去:行く。さる。
※白髪愁看涙眼枯:白髪(の母の)涙で潤んだ眼は、ひからびていた。 ・涙眼:涙で潤んだ眼。 ・枯:(井戸などの)水が無くなる。ひからびる。
※惨惨柴門風雪夜:心のいたむ暗い侘(わ)び住まいの風まじりの雪の夜。 ・惨惨:〔さんさん;can3can3●●〕心のいたむさま。暗いさま。つかれてげっそりするさま。 ・柴門:柴で作った粗末な門。侘び住まい。柴扉。隠者の住まいをいう。 ・風雪:吹雪(ふぶき)。風と雪。風まじりの雪。盛唐・劉長卿の『逢雪宿芙蓉山主人』に「日暮蒼山遠,天寒白屋貧。柴門聞犬吠,風雪夜歸人。」とある。
※此時有子不如無:この時、男の子がいるのよりも、いないことの方がよかった(と思ってしまう)。 *中唐・白居易の『琵琶行』に「轉軸撥絃三兩聲,未成曲調先有情。絃絃掩抑聲聲思,似訴平生不得志。低眉信手續續彈,説盡心中無限事。輕慢撚抹復挑,初爲霓裳後麹。大絃如急雨,小絃切切如私語,切切錯雜彈,大珠小珠落玉盤。間關鶯語花底滑,幽咽泉流氷下難。氷泉冷澀絃凝絶,凝絶不通聲暫歇。別有幽愁暗恨生,此時無聲勝有聲。銀瓶乍破水漿迸,鐵騎突出刀槍鳴。曲終收撥當心畫,四絃一聲如裂帛。東船西舫悄無言,唯見江心秋月白。」とある。 ・不如:…に及ばない。…にしかず。
◎ 構成について
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