******
峨眉山月半輪秋,
影入平羌江水流。
夜發清溪向三峽,
思君不見下渝州。
峨眉山月の歌
峨眉 山月 半輪の秋,
影は 平羌江水に 入りて 流る。
夜 清溪を 發して 三峽に向ひ,
君を思へども 見ず 渝州に 下る。
*****************
◎ 私感註釈
※李白:盛唐の詩人。701〜762年。字は太白。自ら青蓮居士と号する。世に詩仙と称される。西域・隴西の成紀の人で、四川で育つ。若くして諸国を漫遊し、後に出仕して翰林供奉となるが、高力士の讒言に遭い、退けられる。安史の乱では辛酸をなめた。後、永王の謀亂に際し、その幕僚となったため夜郎にながされたが、やがて赦された。
※峨眉山月歌:この作品は、次の語句から女性を暗示していることが分かる。「峨眉」=蛾眉:女性の美しい眉。「月半輪」:半月、一片月、片破れの月で、親族や夫婦などの関係で、別れて片側だけになっていること。「思君」:異性を思う。 *この作品に出てくる地名などを出発点から順に並べてゆくと、@平羌江⇒(峨眉山)⇒A清渓⇒B渝州⇒C三峽(瞿唐峽→巫峽→西陵峽(後註参照))。 ・峨眉山:〔がびさん;E2mei2shan1○○○〕現・四川省の四川盆地の西南部の峨眉山市の西南7キロメートルにある3099メートルの山。“峨眉天下秀”と呼ばれる。四大仏教名山の一でもある。その北を青衣江(後出・現・平羌江)が流れ、南側を大渡河が包むように流れる。蛾眉、娥媚、蛾媚は、女性の美しく化粧した眉でもある。
※峨眉山月半輪秋:峨眉山には半月が出ている秋(の宵)。 ・半輪:半月、一片月、片破れの月。親族間で、別れて片側だけになっている表現。『子夜呉歌』「長安一片月,萬戸擣衣聲。秋風吹不盡,總是玉關情。何日平胡虜,良人罷遠征。」に同じ。
※影入平羌江水流:月影は、平羌江に沈んで、江水は流れる。 ・影:ここでは、月影のことになる。 ・入:ここでは、沈むことになる。 ・平羌江:〔へいきゃうかう;Ping1qiang1jiang1○○○〕青衣江のこと。現・四川省源蘆山県に源があり、中部の雅安市、峨眉山市の西北を通って楽山市から岷江(長江上流)に注ぎ込む。青衣江からみれば、峨眉山は南西に当たり、月が懸かって見え得る。
※夜發清溪向三峽:夜に清渓の駅を発って、三峽に向かう。 *地理的な展開で@平羌江⇒(峨眉山)⇒A清渓⇒B渝州(目的地)⇒C三峽(瞿唐峽→巫峽→西陵峽)と見ると、「三峡」の位置づけに無理がある。その場合、「三峽」を四川省の楽山の黎頭峽、背峨峽、平羌峽の三峽とする。その場合、三峡は、清溪と渝州との間の長江(岷江)になる。そうすると@平羌江⇒(峨眉山)⇒A清渓⇒B三峽(黎頭峽→背峨峽→平羌峽)⇒C渝州(目的地)、と綺麗に並ぶ。 ・夜發:夜に船が発つ。『早發白帝城』は「朝辭白帝彩雲間,千里江陵一日還。兩岸猿聲啼不住,輕舟已過萬重山。」は、朝発ちの情景。 ・清溪:宿駅の名。現・四川の為県。前出・楽山市の南になる。 ・向:向かう。 ・三峽:瞿唐峽、巫峽、西陵峽のこと。四川省の東の境界で、長江が巫山を通り抜けて湖北省に入るところ。 ・三峽:三つの谷。普通は瞿唐峽、巫峽、西陵峽。を指す。ここでは、岷江の黎頭峽、背峨峽、平羌峽の三峽のことになり、恐らく李白と関係がある女性が居たところになるのか。
※思君不見下渝州:あなたを思うが、会わないで渝州へ下っていく。 ・思君:あなたを思う。ここでの「君」は、深く心に思っている人のことになる。 ・不見:見ない。会わない。 ・下:下る。下流の方へ行く。 ・渝州:〔ゆしう;Yu2zhou1○○〕現・重慶。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「秋流州」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は次の通り。
○○○●●○○(韻),
●●○○○●○。(韻)
●●○○●○●,
○○●●●○○。(韻)
2005. 7.3完 2020.10.7補 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 陶淵明集 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |
メール |
トップ |